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孤高の狩人はやがて皆の希望に   作者: 白狐 緋宵
山の野生児、一流探索者(C級)になる

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雫のステータス

見慣れた山の麓へと戻ってきた雫は、澪に案内されるがまま、ダンジョンの入り口に建てられたという『探索者ギルド』へと足を運んでいた。


 目の前に現れたのは、およそ街の役場とは思えないほど頑強な、まるで要塞のような石造りの建物だった。


「……すごく、強そうな家」


 雫は表情を変えず、ぽつりと淡々と言った。


「あー、やっぱりそう思う? 今はまだ、ただの『備え』って感じなんだけどね。いつか来るかも、みたいな。こればかりはさ、地震と一緒でいつ起きるかマジで分かんないから……」


 澪は少しだけ声を落としてギルドの先にあるダンジョンを見つめたが、すぐに「よし、行こ!」と明るく切り替えた。


 ギルドの中は、近代的な電子機器と、ファンタジー小説のような雰囲気が融合した不思議な空間だった。

 山で一人で暮らしてきた雫には、当然ながら身分を証明する戸籍がない。しかし、ギルド側はそうした「わけあり」の人間にも慣れているようで、見た目の年齢から「15歳」として新規に戸籍と探索者カードを発行してくれることになった。


「じゃあ雫、その水晶に手をかざしてみて。これでステータスが登録されるから。ちなみに私のやつ見せるね? 一応D級なんだけど……」


 澪が手本として自分のカードを端末にかざすと、空中にホログラムのウィンドウが浮かび上がった。


【名前】朝霧 澪

【年齢】15歳

【ランク】D級

【レベル】14

【職業】剣士

【ステータス】

・筋力:25

・耐久:22

・俊敏:28

・器用:20

・魔力:10

【スキル】

・『初級剣技 Lv.3』

・『迅速 Lv.2』


「F級とかG級はだいたいレベル10以下だから、私これでも結構頑張ってD級になったんだよねー。じゃ、次雫の番!」


 促されるまま、雫が恐る恐る水晶に手を触れる。

 次の瞬間、端末から「ピーッ!」と激しい警告音が鳴り響いた。表示された画面を見た受付嬢が、驚愕のあまり固まる。


【名前】照道 雫

【年齢】15歳

【ランク】G級(※初期登録のため)

【レベル】33

【職業】狩人

【ステータス】

・筋力:45

・耐久:40

・俊敏:125

・器用:138

・魔力:15

【ユニークスキル】

・『百射百中』

【コモンスキル】

・『気配察知 Lv.5』

・『隠密 Lv.5』

・『野性直感 Lv.4』

・『解体 Lv.4』


「……え? 待って、ヤバい、ヤバいって!! レベル33!? 俊敏と器用、桁が違くない!?」


 澪が文字通り顎が外れそうなほど驚いて叫んだ。

 一般の探索者が血の滲むような思いでレベル30を超える中、山での生存競争だけでその領域に達していた雫の数値は、まさに規格外だった。


 特にユニークスキル『百射百中』の文字と、長年の狩猟生活を物語る『気配察知』や『隠密』のレベルの高さに、ギルド内が一時騒然となる。


「……何か、悪い病気の数字?」


 周囲の視線が集まる中、雫だけが一人、首を小さく傾げて自分のカードを見つめていた。


 なんとか手続きを終え、G級のカード(実力はC級以上)を受け取ってギルドの外へ出た頃には、すっかり日が暮れていた。


「……あの板、光ってて、不思議」


「そこ!? っていうか雫、ガチで天才だし! あ、それはそうと……これからどうするの? 雫、今日泊まるとこある?」


 澪の言葉に、雫は足を止めた。


「……ない。あの木の上が、高くて、安全そう」


 雫は真面目な顔で、街路樹のてっぺんを指さした。


「野生児すぎるでしょ!? 絶対ダメ、女の子がそんなところで寝るとかありえないから!」


 澪は頭を抱えると、少し頬を赤くしながら、思いついたように雫の手を握った。


「ねえ、もし良かったらうち来なよ! 一緒に暮らそう!」


「……え」


 雫の無表情な顔が、初めてほんの少しだけポカンと抜けたものになった。

 いくら命の恩人とはいえ、今日出会ったばかりの自分を家に誘うなど、山での常識では考えられないことだった。


「……お断り、する。知らない人を、お家にいれるのは、危ない。私は、熊も、解体できるし」


「物騒な理由で心配しないで!? 大丈夫だって! うちは私と、9歳になる妹の美月の二人暮らしだし! 美月もきっと、雫みたいなカッコいいお姉ちゃんが来たらテンション爆上がりするって。ね? 決まり!」


「……待って。まだ、心の準備が、できていない」


 困惑し、小刻みに視線を泳がせる雫の手を引いて、澪は「うち、ここから秒だから!」と嬉しそうに歩き出すのだった。

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