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孤高の狩人はやがて皆の希望に   作者: 白狐 緋宵
山の野生児、一流探索者(C級)になる

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狩人の日常が動き出す日

不定期更新です

不可解な点があったらご指摘くださる嬉しいです

「……え? うそ、マジ!?」


 何が起こったのか、澪にはまったく理解できなかった。

 さっきまで自分を死の淵まで追い詰めていた獰猛な魔物が、突如現れたおとなしそうな少女の放った一撃によって、一瞬で物言わぬ肉塊へと変わっている。


 あまりに唐突すぎる救出劇に、澪はただ呆然と声を漏らすことしかできない。


 そんな澪の混乱を余所に、雫は彼女を背に庇うように素早く前に出た。


「……まだ、いる」


 感情の起伏がない、静かな声。

 雫はすぐさま次の矢を番え、流れるような動作で弦を引き絞る。


 ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ――!


 洞窟内に、鋭い風切り音が連続して響いた。

 放たれた矢はすべて吸い込まれるように狼たちの眉間へと突き刺さり、一歩も近づかせることなく、その巨体を容赦なく地面へと沈めていく。


 最後の1頭がどさりと倒れ、あたりに静寂が戻った。

 雫は弓を構えたまましばらく周囲を警戒していたが、完全に気配が消えたのを確認して、ようやく小さく息を吐いた。


「……だいじょうぶ? 怪我、ない?」


 振り返り、座り込んでいた澪に、雫はトコトコと近づいて手を差し伸べる。


「あ、うん……助かった、ありがと。っていうか、今の何!? 弓の腕前ヤバすぎじゃない!?」


 澪はまだ夢でも見ているかのような様子だったが、差し出された手を取って立ち上がった。そして、不思議そうに雫の素朴な服装や装備を眺める。



「ねえ、君……もしかしてソロで潜ってた感じ? 装備、めっちゃ軽装だけど……」


「……もぐる? 穴、掘ってた。熊の、お家にするために」


「熊のお家!?」


 雫がぽかんと首を傾げると、今度は澪が目を丸くした。


「えっ、何言って……ここ、ダンジョンだよ? 街の近くにある、未踏破区域のやつ!」


「……だんじょん。……響きが、かっこいい」


「そこ感心するとこじゃないから! っていうか冗談でしょ!? 知らずに入ったの!?」


 澪の話によると、ここは獰猛な魔物が巣食う危険な地下迷宮、通称『ダンジョン』と呼ばれる場所らしい。

 雫が熊の保存場所を作ろうと掘った場所は、どうやらその天井の薄い部分だったようだ。


「なるほどね……地上から落とし穴でここまでって、ガチで運が良すぎるっていうか……。よく無事だったね……」


 澪はため息をつきながら苦笑いした。


「私は朝霧澪。一応、これでも駆け出しの『探索者』やってるんだ。剣が折れてマジで死ぬかと思ったけど、雫ちゃんのおかげで助かったよ。ありがとね」


 澪は親切にも、地上へと続く安全なルートを案内してくれた。

 二人は魔物を警戒しながら洞窟を進み、やがて視界が開けると、懐かしい秋の太陽の光が差し込む斜面へと出た。


 数時間ぶりに踏む、見慣れた山の地面だった。


「ふぅ、ここまで来ればもう安心。魔物もさすがに上がってこないしね」


 澪は眩しそうに目を細め、それから少し真剣な表情になって雫に向き直った。その目は、先ほどの圧倒的すぎる弓の腕前を思い返しているようだった。


 澪は人懐っこい笑みを浮かべて、雫の手をぎゅっと握りしめた。


「ねえ、雫ちゃん。その弓の腕、山の中で腐らせとくのはマジでもったいないよ。――私と一緒に、探索者にならない?」


 差し込まれる木漏れ日の中で、赤髪の少女からの突然のスカウト。

 こうして、おとなしい熊狩りの少女・照道雫の日常は、予測不能な方向へと動き出すのだった。


最後まで見てくださりありがとうございます

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