はじめてのパーティーと、美味しいお肉
「……ぱーてぃー」
ギルド長室を出た雫は、受付で新しく発行された2枚の『組紐』の魔導具をじっと見つめていた。
「そう! これをお互いの手首に結ぶと、ギルドに正式な『パーティー』として登録されるの。これでダンジョンの中でお互いの位置がなんとなく分かったり、報酬を自動で山分けできたりするんだよ!」
澪が嬉しそうに自分の手首に紐を巻き、もう片方の端を雫の手首に優しく結びつける。
「……うん。なんか、繋がってる。……これでお姉さんと、一蓮托生」
「一蓮托生って、どこでそんな言葉覚えたの!? でも……うん、よろしくね、雫ちゃん!」
少し頬を染めて照れくさそうに笑う澪の手を、雫は無表情のまま、けれど落とさないように小さく握り返した。無自覚な距離の近さに澪の鼓動が少し跳ねるが、雫はそのままトコトコとC級用の依頼掲示板へと歩いていってしまう。
並ぶ依頼票を感情の読めない瞳で眺めていた雫だったが、ある一枚の紙の前でピタリと足が止まった。
『中層エリア:暴走猪の討伐』
「……お姉さん。これ、すごく良い」
「え? ワイルドボア? 突進力が強くて、C級でも結構油断できない相手だけど……」
「……これ、お肉が、もの凄く美味しい。脂が、甘くて、山の実の味がする。……じゅるり」
「雫ちゃん、今口でじゅるりって言った!? よだれ出そうになってるじゃん!」
どうやら野生児の雫にとって、ワイルドボアは格好の『ごちそう』らしい。現代の料理の美味しさを知ってしまった雫の胃袋は、今やダンジョンの高級食材(お肉)へと向いていた。
「よし、じゃあ記念すべき最初の依頼はこれに決まりだね! 美味しいお肉、いっぱい剥ぎ取って美月にお土産にしよう!」
「うん。……たくさん狩る。お腹、すいた」
新調した白パーカーのポケットに手を突っ込み、お肉のために静かに闘志を燃やす雫。
手を繋いだまま(澪が外すタイミングを失っただけである)、2人は新しい装備とたくさんの夢を抱えて、次なるダンジョンの深みへと足を踏み出すのだった。
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