それはいわゆるアリバイ
「つばちゃん…自転車のナンバーって、その人が自転車通学を許可された証であって、いわば学校内の身分証目書みたいなものなんだよ?それなのに持ち主が違うってことありえると思うかい?」
「だから、その時だけ、本人以外の誰かが自転車に乗ってたってことだ。要するに、もし否認している事実が本当なら、犯人は別にいるってことだ」
今職員室で怒られているやつを容疑者としておこう。実際間違ってはいないわけだし。容疑者の否認が正しかった場合、これは冤罪となり、犯人は別にいる。そうなれば梶原も真犯人を捜したいはずだ。顔を見ると、既にそういう顔をしていた。そして「俺、真犯人を見つけたい」と言った。
「ならまず、いま怒られている容疑者が無実だという証明をしないといけない」
「いわゆる、アリバイっちゅうやつやな」
無言で頷く。あいにく情報が少なすぎてどうしょうもできない。だが梶原は、それでも少しでも前に進ませようとした。
「とりあえず、今できることをしよう」
「なんか、刑事ドラマみたいだね」
千春は椅子に深く座り直して言った。今できること、梶原はそう言ったが実際今何ができるだろうか。
「今わかってるのは…事件があったのが先週の木曜16時半頃。自転車に2人乗りをしたうちの生徒に暴言を吐かれたってこと。これじゃあ、事件のおさらいみたいなものだね」
「他にはあらへんの?」
「自転車のナンバーが『1939』で同級生。、BからC組の中にいるってこと。そして自転車の持ち主は、『やってない』と言っている事」
やはり今集まっている情報だけでは何もできないのではないだろうか。
先週の木曜と言えば…財布を拾った日か…。だがそれは解決したことだ。
「今分かってることだけじゃ、どうも限界がありそうだね」
俺は乾いた喉を潤いさせようと水筒を持ったが、空だったので、小銭を握りしめ、自動販売機へと向かった。
梶原がどこに行くか聞いてきたので、正直に答えて、教室を後にした。
さっき怒られていた奴が、本当にやっていなかったとして、犯人が別に2人いることは間違いない。本当に冤罪なら気の毒だなと思う。もちろん、罪から逃れるための嘘だという可能性も無くはない…が、それは一旦捨ててもいい。そうだと決めつけるのは簡単だが、個人的に面白くない。
体育館の入り口では何らかの運動部が休憩をしている。外も暑いが、蒸し風呂状態になると言われている体育館にいるよりもマシなのだろう。くどれだけ暑いんだ。向かいの廊下から下駄箱に向かって歩いてくる1人の男子生徒とすれ違った。どこかで見たことあると思って足元に視線を落とすと、同級生だった。通りで見たことがあるわけだ。今この時間にでてきたということは……。
下駄箱を抜けるふりをして、そいつの名前を覚えるために彼が抜けた後、もう一度下駄箱に戻った。下駄箱の位置は覚えているので見つけるのは容易だった。
『木山昴生』。聞いたことのない名前だ。下駄箱の位置から見ても、ここはBかC組のようだ。実はこの学校の下駄箱、個人個人ほの名前は書いてあるものの、クラスとクラスの境目がないのだ。だからこの木山昴生のクラスを想像することしかできない。後で梶原にこの名前に覚えはないか聞いてみるとしよう。
自動販売機は、2つある一般棟同士を繋ぐ渡り廊下の1階にある。このまままっすぐ行けば、そこへとたどり着ける。
水かお茶、どちらにしようかと悩んだが、どうせ帰るまでだと思い立ち、より安かった水にした。
部室に帰るとすぐに、梶原に聞いてみた。




