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この庭の芝生は青い  作者: 心愛
無実行きの切符
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1939

の前には、すでに梶原ら3人がいて、鍵の到着を待っていた。


「ありがと燕くん」


 俺は千春に鍵を渡した。少し開きづらくなっているので、器用な千春に任せるのが最適なのだ。


「梶原、昨日の一件があっただろ」


「あぁ、自転車に乗ってたうちの高校生に暴言を吐かれたってやつね」


「あれ、同級生がだったみたいだぞ。さっき職員室で同じ色のスリッパを吐いたやつが畠山に、怒られるのをみたんだ」


「同級生?」


 梶原は、耳を疑ってもう一度聞いてきた。


「ほんとにうちらと同学年だったのかい?」


「間違いない」

 

「幻滅だよ。そんな人が同じ学年にいたなんてね」


 そこまで言うか。でもまぁ生徒会に入っている梶原だから、納得できなくはない。


「『1939』の自転車のナンバーは、何組のなんだ?」


 梶原は、困った顔をした。


「そんな事いくら生徒会の俺にだってわからないよ」


 喋りながら上り、もう部室の目の前にきていた。


「でも、俺が『1890』だから、俺のクラスではないんだ」


「俺は『1915』だからね。A組からD組の間だね」


 そこが分かったのは嬉しいが、あいにく千春はE組だし、伊沢と相川は梶原と同じクラスなので、B組とC組の知り合いがいない。


「ちょっと待ってよ。なんでつばちゃん自転車のナンバー知ってるの?」


「ああ、昼に自転車の鍵見に行ったとき、張り紙がついてある自転車があってな、たぶんそれが職員室にいた同級生なんだと思う。自転車のナンバーをみても、梶原よりも手前だからな」


「その張り紙、なんて書いてあったの?」


「『放課後職員室にきなさい 生徒指導部 畠山』」


「畠山先生言うたら、あの生徒指導の先生かいな」


 いつもの席に座った。4人で座るときもそうでない時も、だいたい自分の席というのが決まっている。


「そうそう。怒ると怖いんだよ」


 俺も2度起こる姿をみているから分かるが、あれは相当だ。この向ケ丘高校の先生の中でもトップクラスではないだろうか。


「昨日よりも怒ってたぞ」


 梶原が苦笑いを浮かべて言った。


「そりゃ大変だ。やっぱり昨日来なかったからかな」


 あれ、そう言えばあの時畠山先生は…


『やってないじゃないわ!あの自転車はおめえのやろが!』


 と言っていた。あの怒り具合は尋常ではなかった。


「それもあるだろうが、怒られてたやつは否定してたぞ」


「え?まさかね。あんな威圧を受けて否認するなんて」


 文字通り信じられないという顔をした。仕方のないことだと思うのは、俺がこの目で惨状を見てきたからだろう。


「俺も畠山のセリフを聞いただけだから確実じゃないんだが、『やってないじゃないわ!あの自転車はおめえのやろが!』って言ってたから、たぶんそうなんだろうと思う」


「そんなに…?うわぁ…怖いね」


 千春が、顔を引き攣らせる。そのくらい、あの先生は怖いのだ。そんな恐怖に晒されながらも否認したあいつは、いったいどういうつもりだったのだろう。


「どうして認めへんの?自転車の持ち主本人なんやろ?そんなんそいつが犯人に決まってるやんか」


 俺がいない間に千春か、梶原から話を聞いたのだろう。伊沢も事の概要を把握しているようだ。いちいち説明する手間が省けてこっちとしてもうれしい。


「最後の足掻きってやつじゃない?よく刑事ドラマとかで見るやつだよ。ただ何とか情状酌量の余地があるとでも思ってるんだよきっと」


「どうしてもやむを得ん理由があるなら、さっさと認めてから訳を説明すると思う。だからそうじゃないんだきっと」


 でもそうじゃないとなると、どうして否認する必要がある。既に自転車のナンバーは分かっている。女性が暴言を吐かれたのは16時30分頃で、ちょうど生徒が帰宅する時間と被るはず。女性が見間違えたという線はないか?憤慨してナンバーを間違えたとか…。だが不確実なら自転車のナンバーを伝える必要はなかった。間違えて冤罪となる方がよっぽど酷だし、『1939』なんて覚えやすい数字、覚え違えるとは思えない。


 俺が奴の立場に立たされたとして、否認する理由は…。


「《《本当にやってないんじゃないか?》》」

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