第十話。いざ、入試会場へ。
「おはよう、アオイにリィーノ。もう行くのかい?」
「おはようございます。はい、リィーノと一緒に」
旦那様が見送りに来てくれた。すっと何かを渡される。広げたそれは、黒地に紅の模様が入ったマントだった。
「着ていきなさい。これで、誰から見てもルノークだ。言葉づかいも、もうばっちりだな」
旦那様の言葉に強く頷く。この三週間言葉づかいを矯正した。一人称は俺。外では敬語。そして、このマントに描かれた模様はルノーク家の家紋だ。リィーノともおそろい。
着てみると、採寸もしていないのにピッタリで、着心地もいい。踵まである裾は、動きにくいといえば動きにくいが、ヒールで身長を盛っていることがバレにくくなった。なぜヒールなのかはよくわからない。リィーノいわく男子っぽいからだそうだが、この年なら男女の対格差なんてほぼ無いと思うのだが。
「良く似合ってるよ。アオイ、周りのやつらはみんな一つ年上で体格もいいものばかりだ。腕に自信のある者も多い。一人で怖いかもしれないが、大丈夫だ。アオイは顔を上げて、堂々としていなさい。ルノーク家の代表として胸を張っていなさい」
なんか、仰々しいというか。いや、それよりも今なんか引っかかる言葉があったような・・・・・いや、まって、
「一つ上!?」
「あれ?言ってなかったけ?学園に入学する適正年齢は10歳だよ。でも能力さえあれば別にいいんだ。アオイは珍しいけれど、おかしいってわけじゃない。数十年に一度あることだよ」
「そうそう、私も9歳で入学したから」
あー、そうなんだ。って言うとでも思ったか!?母さんが言っていたのは何だったのか。確かに9歳と教えられた。いや、あれだ。きっと、最近10歳に変わったんだ。うん。
「お嬢様にアオイも、そろそろ出なくてはいけないのではないですか?」
旦那様を呼びに来たメイド長にせかされ、お屋敷を出た。旦那様はお仕事へ。リィーノの案内で学校まで歩いた。お屋敷から二十分。大きな、建物が目の前に広がっている。玄関まで続く一本道には着飾った親子がたくさんいた。
「ここだよ。おっきいでしょ?」
リィーノの言葉にうなずく。全校生徒1800人の巨大な学園と聞いていたものの、ここまで大きいとは思っていなかった。目の前に見えるのは一つの建物だが、きっとこの奥にもいくつもの建物があるのだろう。
「集合場所はこっち」
リィーノに手をひかれ、中庭に到着。すでに多くの人でにぎわっていた。
「じゃ、私はここで。頑張ってね、アオイ!」
「はい、頑張ります。リィーノ様!」
受付より先に受験者以外は入れない。外での口調もだいぶ板に着いた。絶対合格したいな。そう思いつつ受験票を受付に出す。
「ルノーク・アオイ様ですね。はい、受理しました。しばらくすると、指示があります。それまではここでお待ちください。それから、受験者である証明の腕輪とネックレスになります。なくしたり、壊したりしないようお気を付けください」
「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」
俺はあまり人がいない一角へ行くき、そこに置いてある椅子に座った。
いましがた貰った、腕輪とネックレスを眺める。三つとも50-493と書かれている。周りを眺めるといくつかの塊ができていた。
中央。この中庭の真ん中を堂々と占拠する一団。どうやら、中心の煌びやかな衣装を着た人にたかっているようだ。あの顔は見覚えのある。付け焼き刃の記憶では、名前まで出てこないけれど、かなり良いところのおぼっちゃまだった気がする。
壁際。これまた派手なドレスを召した女性がいらっしゃる。恐らく上層階級のご子息だろう。その周りには顔覚えを良くしたい貴族の子息が群がっている。
関わりたくないなぁと思いつつも、ここにいる人の中で最も家が高貴なのは俺だ。その内誰かが構ってくるだろう。ほら、
「こんにちは。良いお天気ですね?さて、貴方はどなたでしょう?もし宜しければ、自己紹介をしてくださいません?ルノーク家にリィーノ様以下のご子息はおられないはずですが、これは一体どういうことなのでしょうか?」
ほら、真っ白なマントを着た人に絡まれた。




