第四話 兆候
第四話 「兆候」
聖が椎堂学園に潜入してから1週間が経った。途中大型連休があったが聖達に休みが無いように、
相変わらず聖血教会の沙織への監視は続いていた。
すこしずつ聖たちで数を減らしていったが、まったくあちら側の数は減ることは無かった。
さすがにこれには困った聖は逆に聖血教会の集団を行確してみたのだが手掛かりを掴むことは
出来なかった。彼らはとある所に集まっているのは分かったが、調べてみると彼らの
集合場所になっているだけで何も無かった。また情報を得るために集団を捕まえてみたのだが、
フードを取ると一般な人であり身元を調べてみると会社員だったりと職業は種々様々だった。
全員を調べた後共通点をさがしたが、何も繋がりは無かった。また気になる点はあった。
全員が精神を破壊されており、廃人と化していた。だが精神を壊された人間がどうやって
動いているのか聖は不思議に思った。
情報も得られずだったし救いようが無かったので冷徹に処分した。なかには家族ごとやられて
いた。
一週間前まで聖血教会は聖女の聖血を求めてずっと待っていたと考えていた事を聖は笑った。
違った。
ただ『何か』が聖血を求める為だけに、数多くの人間を壊していたのだ。聖は憤りを感じた。
聖は今回の犯人を聖と同じく力がある者と分かっていたが確信した。
精神破壊の力。かなり強制的に脳に刺激もしくは絶望的な事を刷り込ませ
精神を壊し、後は操作系の力を使い操り人形とする。
そこまでなら分かるのだが、心が死んでいたのになぜ彼ら彼女から殺気を感じたのか。
もしかして彼らの目と同調させ、今までの行為をモニター越しのように見ていたのかと
思い当たった。
それなら聖が椎堂学園に潜入した初日に集団が聖の前に現れたか分かった。あの夜の時、
「何か」が集団の目から聖の姿を見ていたのだ。だから消滅して誰も知らないはずの聖に
接触できた。周辺に見張りがいたという考えもあったが、沙織たちが追われている間に
周りにいたのは聖が片付けていたので可能性は低いと感じた。
「目」から見ていたのに「何か」の殺気を感じた程、「何か」は血を欲しているのか。
聖は沙織の監視よりも護衛のほうが良いのではと考え始めていた。またもう聖の面は「何か」には
割れている。エージェント達もそうだろう。
聖はともかくとして、エージェント達は今後逆に襲われる可能性が高い。
なので聖はエージェント達に自分自身にも気をつけるように通達した。そのメールを送った後、
エージェント達から『襲撃あり』と返信があった。返信があったと言うことは撃退済なので
聖は安心した。聖血教会の動きは早いことは分かった。
沙織と聖血教会の監視。そして聖血教会との戦いが始まった。
大型連休明け、部活動があった生徒以外はダルそうに通学をしていた。お嬢様学校とは言え
連休明けの学校は憂鬱のようだ。
そんな生徒を見ながら聖は生徒と同じく正門を通ると、そこには沙織がいた。竜一がいないことに
違和感を感じたが、
「おはようございます、伊藤先生。あ、兄はちょっと……お手洗いに……」
聖は納得した。女子校なので男子トイレは無い。急遽仮設で作ってもらったのだが部活棟方面
なので距離がある。沙織の護衛は必要だが、生理現象には勝てない。聖は大いに竜一の気持ちが
分かった。
「でも神埼さんはそのまま教室には行かなかったのですか?」
竜一がいなくても、学校内なら安全のはずなので沙織は教室に向かっても良いはずのだが、
聖がそんな事を思うと
「はい。伊藤先生を待っていたのです」
頬を紅潮させ身長差があるのえ上目遣いになる沙織。聖はすっかり忘れていいた事を思い出した。
一週間前に沙織から電話番号が書かれた紙片……手紙を受け取った。聖からしたら対象者の連絡先を
手に入れ本当に危ないときの連絡手段として使おうとしていたし、連休中は沙織と聖血教会の事で頭の中から抜けていた。
「待っていた……?」
「はい、伊藤先生は今まで私が会った男性……あ、中学校の同級生とかではなく、父や兄との会合で
会う方々とまったく違う感じで、なんと言いますかすごく素敵なんです。お顔もそうなんですが、授業中の先生や私達生徒に対して優しくして下さってますし、見てて……」
上目遣いから俯いてしまう沙織。そんな聖と沙織の後ろを通り過ぎる女性とが不思議そうに見ていく。
その視線が聖には痛かった。沙織は単なる、学生時の年上に憧れる系の娘かと思ったが、そういう
意味ではなく沙織の父や兄の仕事の関係上、聖より少し年上からそれ以上の人と接する事が
多いので、自然と年上に気持ちが動きやすいのだろう。
しかもまだ1ヶ月ぐらいしかいないが、女子校で寮生活だ。思春期に聖のような存在は沙織にとってはまるで奇跡の存在のようなものだろう。兄の竜一は聖より数歳差。一番年が近いのは聖だ。
より身近に感じたのだろう。
天家では普段はそういった人間関係をうまくいくよう色々と教え込まれる。
聖は一箇所に留まることはなく、常にどこかに行くことが多い。そのためいつも人間関係がゼロから
始まる。期間も短いのでその間でも人間関係は良好なものとして築き上げる必要があるため、
その処世術を聖は使っているだけである。
「神埼さん、ありがとうございます。全生徒のために頑張るのは難しいですが当たり前です」
沙織の気持ちを汲んで、当たり障りない回答。聖が一礼すると、竜一が戻ってきた。それを見て聖は
そのまま去っていった。
「先生……」
沙織はすこし悲しそうな表情で聖の背中をみていた。
「聖血……天家……」
とある場所、蝋燭のみで照らされ薄暗いが空間的は開けた場所、その中心に男はいた。
黒の衣を被り、声で男でかつまだ若いと分かるが容姿は見えなかった。室内をグルグルと
歩きながら、時折呻く。
「天家……天海家……」
男はそう呟くと今度は笑いだした。低い声の笑い方だった。
「聖血と共に復讐の時来たり……」
男の後ろに3つの影が現れる。男が振り返ると影は消えた。




