第二話 潜入
第2話「潜入」
静江から資料を受け取った聖は、まずしたのは学園側との接触だった。学園長にアポを取ると、
名乗っただけで許可が降りた。
どうやら静江が根回しをしていたらしい。祖母ながらやる時はやるようだった。
また入学時に沙織が「聖女」と呼ぶようにしたと聞いた時は驚いたが、大胆に公開することで
「あちら」側が出やすくすると言う狙いもあると後に静江から聞いた。
守らなければいけない対象でもあるが、逆に撒き餌としても使ったようだ。
それほど聖の腕を信頼しての事だろう。学園長には教師見習いとして入るという約束して
話を切る。女学園に男性の教師というのは異例中の異例だろう。そこは学園長と天海家で力で
何とかする。
次に聖は任務地に赴き、短期であるが簡易アパートと契約。1Kであるが短期なので聖は
問題にはしなかった。管理している不動産は昔からの天家と繋がりがあり話は通しやすかった。
必要最低限のものだけで揃えた後は、沙織の行確に当たった。
聖一人ではなく、天家が各地に配置した「エージェント」と呼ばれる黒服の男女。
天家の元で修行し格闘・監視などは折り紙付きの能力を有し、天家を影から支える者たちである。
沙織の登校、下校からの就寝まで。その間聖は沙織の身辺に複数の不審なものを見かけた。
全員黒の衣を被り性別はわからなかった。エージェントにはそちらの監視を任せた。
あれが聖血を狙う集団なのかと確認しながら、沙織と黒の衣の集団の二つを監視していた。
その間に一人の男がずっと沙織に側にいるようになったが、調べたら沙織の兄竜一とわかったので
無視した。どうやら妹を守るために学園長に許可を得たとか聞いている。
聖血を狙う者たちは資料では「聖血教会」と昔から呼ばれており、全世界に数多く存在していた。外国の一派はそれを取り仕切る者たちによって全滅したと聞いていたが、ここ日本では影で暗躍
していたとか。聖血をもつ聖女が生まれる確率は低いのだがアジア系列も多い。静江がそれである。
静江を狙って忍び込んだのも「聖血教会」だろう。聖の祖父光水によって当時は壊滅したと
聞いていたが、今回のはその生き残りか新たなる集団なのかはわからなかった。
沙織を行確して数週間後、聖血教会側が動いた。何かの用事ででかけた沙織と竜一が襲われた。
かろうじて最初の包囲を抜けた二人だが、数キロ走った所で囲まれた為、聖が出て二人を術で
眠らせた後、救出した。最初の包囲でも行けたのだが、まさか竜一が突破するは思ってもいな
かったので変更したのである。集団からは情報を聞き出そうとしたが、全員下っ端ぽかったので
容赦なく殲滅した。
今回の襲撃で聖血教会は沙織の命というより血を狙ったのがわかったので、今後は側にいれるよう
見習い教師として学園側に潜入することとなった。しかし沙織を狙われるってことは側には竜一が
いると言うことなので人質にされる可能性もあり、聖の負担はすこし大きくなっていた。
翌日、聖は事前に用意した「伊藤真司」という名の見習い教師として沙織、竜一に
接触したのである。
「今日から見習い教師ですか?聞いたことがないですよ。教育実習生とかなら分かるのですが……
その前にそもそも男性が……」
聖が挨拶を終えると、竜一が疑いの目を聖に対して向ける。聖には承知の上だった。急すぎる展開で、昨日の事。しかも女学園で男の教師なんてありえないだろう。
沙織なんかはそんな話を学園側から聞いていないだろう。
二人の疑問に答えるかのように、聖は教員免許状(1種免許状)を見せる。もちろん偽造だ。
そして学園長直筆で書いてもらった見習い教師としての許可証明書も見せた。
伊藤真司(聖)が採用試験で受かったのにも関わらず急に採用した学校から断りの電話があり、
困っていたところを椎堂学園で特例で1ヶ月預かるという内容だった。
伊藤との関係は学園長がお世話になった恩師と同じ生徒だからという設定にしてもらっている。
「ほんと特別に1ヶ月ですがお世話になります。、その間には学園長に採用してくれる学校を探して
もらってそちらに向かいます。」
笑顔で答える聖。詳細をみた竜一は元々自分には決定権は無いのだが、つい疑ってしまった自分を
反省し聖に謝る。
「伊藤さんでしたか?私がここの関係者でも無いのに疑って申し訳ない。」
「いえいえ、こちらこそ急にお二人に挨拶したのが悪かったです。えっとそちらは……?」
「私の妹の沙織です。私は兄の神埼竜一といいます。ちょっとした事情でこちらにお世話に
なっております。」
理由は分かっているので、敢えて聖は聞かなかった。
「そうでしたが、女学園に私と同じように男性がいらしゃったので疑問に思いましたが、
そういう事でしたか。はは、男性が一人でもいらっしゃると助かります。仕事は違うでしょうが、
よろしくお願い致します。」
もう一度、聖は頭を下げると二人の横を通って、学園の中に入っていった。入っていく聖の姿を
見る女学生たちは一瞬立ち止まって聖を見たままであった。
そんな事に気づかない聖であった。
「いい先生っぽいですね……竜一兄さん?」
沙織はすこし嬉しそうに言うと、そんな沙織の表情をみて複雑な心境な竜一であった。
学園内に入った聖は、学園長室に向かった。電話で話しただけで直接会うのは初めてであった。
「ようこそいらっしゃいました伊藤真司先生……いえ天海聖様」
まだ50代の学園長である椎堂瑞穂は聖の来訪に喜びの表情を浮かべた。
「様はよしてください、学園長、ここでは伊藤真司というただの見習い教師です。
今回の件、色々とありがとうございます。」
「あの静江様の依頼ですもの。断る事はできないですわ。」
「気になったのですが、祖母とここは何か関係あるのでしょうか?」
「あらご存じなかった?静江様は天海家に嫁ぐ前は椎堂家でしたのよ?私は静江様の育て親の
父方の弟の孫で椎堂家を継いだのよ。血の繋がりはないけど一応家の繋がりがあるのよ。
そしてここは静江様の提案で設立したのよ」
学園長の話を聞いて、妙に手回しが早かった静江の行動に納得した。
「成る程……ここまで根回しされていたとは……って事は聖血の事も……」
椎堂学園と静江の関係が分かると、聖はある疑問に当たった。今回の沙織は……
「えぇ知っているわ。ここの学園では義務教育中に採血とかするでしょ?そのサンプルを極秘に
一部頂いて聖女を探していたのよ。そして今回の神埼沙織さんの事を知って静江様に資料を
送ったのよ。無論自然のように神埼沙織さんにはここの入学させるように中学から導いたわ。」
つまり椎堂学園は聖女を守るための学園という事だった。いつ現れるか分からない聖女のために。
「そういう事でしたか……。祖母の聖女を守るという意思を改めて分かりました。
天海家の名にかけて聖女をお守りし、狙う者たちを倒します」
決意を新たに聖は学園長に向かって表した。学園長はにっこりと微笑んだ。




