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異世界令嬢は波乱の予感がするようです。

Pv8000越え記念投稿ーー。


近いうちに改更ーー。

ドアを開けて入ってきたのは、ポーだった。


「ご依頼のリスト集め、やってきたッス〜」


そういうとポーは、カルミアの座る机に二十枚程の紙を差し出した。

一枚につき一人、生徒の名前や近況、家族構成が事細かに書かれている。性別、学年は様々だが、どれも父親の爵位が上がる時に怪しげな噂のたった者達ばかり。

無論カルミアが落ちこぼれの数人に依頼した仕事だが、ポーは1人で全員分の仕事を終わらせてしまったようだ。

カルミアは、その紙束の一枚一枚に丁寧に目を通していくと、ポーに顔を向けて、驚きの声を上げる。


「……驚きました、どこからこんなに沢山の情報を?」

「えへへ、それは内緒ッス」


ポーはカルミアの言葉に、少年のような笑みで返す。


ポーは不思議な一年生だ、苗字は明かさないし、ポーという名前も本名では無いらしい。

カルミアは、頭の中のポーへの評価を書き換えながら、目の前で笑うこの不思議な一年生をどう扱ったものかと考えていた。


◇◇◇◇◇


その日の夜、日も暮れ朧月が辺りを照らすようになった頃、ポーはある屋敷の一室に置かれた、天蓋の付いたベッドの前に立っていた。


「そう、じゃあカルミアちゃんは私からのプレゼントを受け取ったのね?」


天蓋から垂れ下がるようにかかるレース。

その向こうから奏でられる、聞いただけで脳髄が溶けきりそうな甘い声に、ポーは頷いた。


「はいッス、少し怪しんでたみたいッスけど……アレで良かったんすか?」


しかしポーの質問に返ってくるのは、レースの衣擦れのみ。まぁ、ポーにとっては質問が返って来なくとも良いのだ。

『このお方』の役に立てた、それで充分、それが自分の生きる意味なのだ。


ポーは帰りの挨拶をすると、静かに部屋を出る。残された少女の部屋に、雲の呪縛から解かれた月明かりが痛いほどに差し込み、少女の美しい白髪を照らす。


くすくすと少女は笑うと、まるで恋する乙女のような口調で呟いた。


「愛してるわ……カルミアちゃん……誰よりも…誰よりも……」


◇◇◇◇◇


その日の朝、カルミアはいつに無く違和感に襲われながら登校していた。理由は簡単、今日はあの猫耳ヘアーにしている時間が無く、少し整える程度にしか髪をいじっていないから。

違和感の理由が分かっているのに解決出来ない……これ程モヤモヤする事があろうか。


(まぁ、自分で結って不格好になるのもそれはそれで嫌だし、ニアをこんな日の昇らないうちに叩き起すのも可哀想よね)


いくらカルミアでも、その程度には幼馴染を慮ってやれるらしい。


やっと顔を出し始めた朝日に横顔を照らされながら、カルミアは校門をくぐり、誰もいない中庭を通り、ツカツカとカルミアの城である旧サロンへと向かう。


旧サロンのカルミアの書斎では、ルーンが二杯目の紅茶を注いでいる所だった。


「あら、早いのね」

「主より先にいるのは部下として当然の事だ」


ルーンは注ぎ終わった紅茶に五つの角砂糖を入れようとし…ギリギリで手を止め、そのままストレートの紅茶をカルミアの執務机の上に置いた。


「ふふふ、君もなかなか分かってきたじゃない?」


その様子を見てカルミアは嬉しそうに笑った。

二重人格者であるカルミアには、裏と表がある、裏のカルミアは極度の甘党だが、表のカルミアは甘い物が得意では無い。

今ルーンに対峙している表のカルミアに角砂糖を五つも入れた紅茶を出したら、即刻淹れ直しだろう。


「まるで二人の主人に仕えてる気分だな…」

「実際二人よ?私と彼女は全く違う二つの人格だもの」


嘆息したルーンの言葉に、カルミアは悪戯っぽく笑う。

紅茶を一口飲んだカルミアは、その笑みを一転させ、真面目な表情になった。


「それで……昨日の首尾はどうだったの?」

「撒かれた」

「撒かれた?」


ルーンは昨日、落ちこぼれの一人にポーを尾行させていた。勿論カルミアの指示だ。


「気付かれたのか、ただ見失ったのか、こちらもプロではないから何とも言えんが、とりあえずポーがどこに行ったのかは突き止められなかった」


カルミアは顎に左手を添えると目を閉じて黙考している。ルーンは近くの棚に軽く腰掛けながら、主の言葉を待った。時計の秒針のみが、喋り続けている。


「……もし、ポーが別の勢力についていたとして……」


口を開いたカルミアにルーンの視線が向く。


「今ここでポーを追放する事は簡単よ、でもそれはこの旧サロンの不和に繋がってしまう……それは不本意だわ」

「ポーは今しばらく捨て置く……という事か?」


その言葉に頷いたカルミアはでも、と言葉をつづける。


「もし『それ』が私に牙を向くようならその牙を全力でへし折らさせてもらうわ」


カルミアは確固たる意思を瞳に宿しながら誰にとも知れずそう呟いた。

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