古本屋店主と画家【短編】
古本屋で貴方と二人の続編の短編です。
初めてあの子に会った日。それは偶然の出会いだったけど、目の前で倒れたあの子からは――。
絵の具の匂いがした、僅かじゃない。
絵に囲まれて過ごしているのか、嗅覚があまり鋭くない俺でもわかるくらいに、――あの子の匂いとして違和感がないほどに絵の具の匂いがした。
画家なのか、美術科のコースに通う学生なのか。この若さから言うと、恐らく後者である可能性の方が高いだろうと思う。……絵の具に愛されているこの青年はどんな子で、どんな表情を浮かべる子なのだろうか? と俺はそればかりを考えていた。
その癖に――、俺はあの憎き編集者にこの子を任せてしまうのだから。
自分で言うのもなんだが、……相変わらず俺は素直じゃない。
でも、あの子から会いに来てくれた。名前は朱鷺と言うらしい。
朱鷺、君から近づいてきてくれたことを俺は、心より嬉しく思うよ。
だから、朱鷺。
「――逃げないで。俺は君が好きなんだ」
この店には良く来る癖に、触れさせてくれないのはずるいと思う。
人には無関心そうなのに、俺が近づけば可愛らしい反応を見せてくれる。
「……君も俺が好きでしょ、朱鷺」
と、あえて色気のある声でそう囁けば、朱鷺は頬を朱に染めたままこう言う。
「……俺も好き」
そんな朱鷺はとても愛らしかった。
そんな朱鷺を主人公にした小説なら、もう一度書きたいかもしれない。
この話で「きっと君を好きになる」は完結です。ありがとうございました。




