リューは龍に悩む。
「ね〜、この山で1番強いモンスターって何〜?」
僕達が登山道を登っていると、肩車をされているラビがオーガロードの顔を上から覗き込みながら、そう聞いていた。
とは言うものの、ラビの言葉をオーガロードは理解出来ないので、それをハスキーが通訳してあげている。
「ガァ!…ガァ。」
「ガル。(そりゃ勿論俺だ!…と言いたいけど。だって。)」
「フムフム。で、なんなのさ〜!」
ラビはオーガロードの頭をペチペチ叩いて催促をすると、オーガロードは少し青褪めた顔をして小声で呟くのだった。
「…ガァ…。」
「!!」
それを聞いたハスキーの耳がピーン!と上に伸びて、険しい顔になる。
「ハスキー!なんだって〜!?」
神妙な顔をしているハスキーにラビが問うと、ハスキーもが小声で通訳するのだった。
「…ガル。(…ドラゴンヘッドの主は[セルディロリス]…ブルードラゴンだ。…そう言ってる。)」
「「ブルードラゴン!!?」」
ハスキーの通訳が分かる僕とラビが声を上げる。
「なんじゃ、ブルードラゴン…中級龍がおるのか。」
相も変わらず空間窓に片腕を掛け、優雅にお紅茶を飲んでおられるメメント様が、大して慌てた様子もなく呟く。
「その言い振りだと、メメントはブルードラゴンを知ってるの?」
僕がそう問うと、「まぁのぅ。」と、紅茶を受け皿に戻し、ドラゴン達の説明をしてくれたのだった。
「まずは下位龍、これは地龍族じゃな。ジアロが単機討伐したイエロードラゴンなんかもこの下位龍に含まれるのじゃ。」
その時、メメントの窓からニュッと顔を出したジアロさんが、自身の矜恃を守る為か、付け加える。
「下位龍っつってもよ、普通のヒューマンからしてみたら脅威以外の何物でもないからな?普通なら上位冒険者、もしくは洗練された軍人が500人…いや、1000人単位の軍勢を出して、やっと討伐出来るってモンスターだぞ?」
「ハァ…。」
僕にはもう何がなんだかよく分からなくなってしまう程の規模で、逆に冷静になってしまった。
メメントが続ける。
「中級龍に含まれるブルードラゴンは飛竜族でのぅ、更に厄介になるのじゃ。何せ飛んでおるしブレスが多彩での、炎は元より、猛毒とかかの?ん〜そりゃもういっぱい色んな物を吐いてくるのじゃ!」
「こいつは俺じゃ単機撃破は無理だな。…何せ攻撃が届かねーからよ。」
「近距離馬鹿のジアロじゃ、なす術もないじゃろうな。」
…此方を見ながら喋るメメントの背後には、作り笑顔でヒクヒクしながらメメントの後頭部を睨んでいるジアロさんがいたが、下を向き、口の中で頬を噛んで笑うのを耐えた僕だった。
「それで最後に上位龍なんじゃが。」
そう言うメメントは少し困った顔になった。
「ええと?メメントも知らないの?」
「亡き父上から、かつて存在していた…いや、今も存在しておるかもしれんが、上位龍を2体程聞かされてはおる。…真偽はわからんが。」
えらく真面目な顔でメメントは続けた。
「1体は8本の頭を持つ龍らしくての、名前が…確か[オロチ]…じゃったかの?」
「…!!オロチだって!?それってもしかして八岐大蛇!!?」
ガバッ!と、空間窓の縁に手を掛けながら聞くと、メメントは若干引きながら首を左右に振る。
「[ヤマタノ]とは聞いた事がないのじゃ、なんじゃ?リューシは知っておるのか?」
…僕は少し考える。
リバーウィンで見た[魔照]の文字、これは日本神話で言う天照大神に酷似している。
そしてここにきて[オロチ]と言う上位龍の話…これも日本神話に出てくる八岐大蛇に名前も風体とそっくりだ。
そしてリジュワルドを作ったとされる神…イザナエル…これも日本を作った伊邪那岐、もしくは伊邪那美の名をもじったとしか思えない。
何か関係があるのだろうか?
僕が顔に手を当てて考えていると、シルカが僕を心配したのか、肩にそっと手を置いた。
「リュー、大丈夫?」
「…ん?ああ、大丈夫、少し考え事をしてただけだよ。」
「コホン。」と、メメントが咳払いして続ける。
「その上位龍ともなると、魔王族をも凌駕する。…そう父上は言っておられたのじゃ。」
「!!」
僕達は唖然としていたが、シルカがメメントに疑問を聞いた。
「え、でも、ドラゴンの危険ランクはSSで、魔王族はSSSだよね?その魔王族よりも危険なの?」
「…まぁ、ドラゴンも下位から上位までおるからの?平均的に見たら…と言う話じゃないのかの?」
「ハァ…。」
また途方も無い存在が明らかになって来た所で、僕は溜息を吐く事しか出来なかったのであった。
「ねぇねぇ、リューちん!!」
そんな陰鬱な雰囲気を断つかの様に、ラビがオーガロードの頭上から僕を呼ぶ。
「な、何?」
「そのブルードラゴンに、このオーガロードは手下を皆殺しにされちゃったんだってさ〜!親分として…仇をとってやりたい〜!」
…こっちの龍の話は聞かずに、そっちはそっちで話をしてたんですね。
子分オーガロードに感情移入しているラビは、涙目で僕にそう訴えかける。
「あ、はい、ですよねー!」
…取り敢えず、問題無くドラゴンヘッドを越えられたら良いな…。
僕はそう考えていたんだけれど、それはやはりフラグの成立としか言えないのであった。




