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第九十四話 尋問

 

 自宅に戻ってきた僕達は、何も置いていない食卓を囲み椅子に腰を掛けた。人数分の椅子がなかったため、父と母と祖母は部屋の淵の方に立っていた。

 やはり国王オリバーを前に近寄りがたいようだ。

 僕は座らされて、正面にオリバーとリアム、左にヨハン、右にラグドールが座っている。


 なんというVIPな会談!


 と、いうか尋問されている気分だ……ぐぬぬ。


「まず父さん、母さんには今まで黙っていたことがありまして……もしかしたら……ものすごくショックを受けるかも……」


「どんなことでも受け止めてあげるから、全て話してみて」

 母はやさしく微笑んでくれた。

 そんな母を悲しませる事になるかもと思うと心が痛い。


 自分の胸にそっと手を当て

「僕は……今の僕になる前に、二度の人生を終えました」


「えっ?」と、驚きのあまり口を塞ぐ祖母と母は「どういうことかしら」とヒソヒソと話し合っている。


 僕はかまわず話を進めた。


「最初は柳原 (はるか)として、別の世界で十五歳で死にました。死因は酔った父に鈍器で殴られて……です」


「なんてかわいそうな……ひどい父親だったのね」


「いえ、少し乱暴なところはありましたが、母が生きていた頃はやさしかった記憶があります」


「殺された相手を庇う辺り、ハル君らしいな」


 オリバーはそう言うけど、ホントのことだからね! 別に庇ったわけではない。少なめだけど食費も貰っていたから節約して自分で作ればご飯はちゃんと食べれたし。

 殴る蹴るだって多分本気ではないだろうし、仕事のストレスとか母のいないストレスの矛先が僕に向いただけだろう。


 他人に迷惑はかけてないのだからひどい方ではないはず。

 いかん、話が脱線して柳原時代の父の話になってしまった。



「そして死んだ後、神様に会いました」


「神様……やはり……」


「僕はそのとき心残りがありました。亡くなった母に『みんなにやさしく、大切な人を守れるような強い子になってね』言われていたけど、守れなかったんです。死んだ後に、もっと母との約束と真剣に向き合えばよかった、と後悔しました。

 すると神様がその約束を果たすために、新しい体をくれたのです。

 僕はこの世界の一人の少年の体に入りました。それが僕の二度目の人生の始まりでした」


「うむ、それが私達が知るハルだ。ハル君はこの世界に来てからハルと名乗るようにした。私やラグドール、ヨハン、リアムと出会い――――」


「なんでオリバーが話始めてるんだよ。ちょっとハルから昔の話を聞いたことがあるからってドヤってんじゃねえぞ?」


「ラグドール黙ってろ、話が進まねぇだろおが」


「オレはハルの口から聞きたいんだ。ヨハンは引っ込んでな」


「あぁ?」


 カチャリと音をたて、刀に手をかけたヨハン。「この人達はくだらないことで……」と頭に手を当てるリアム。


 心中察します……。

 ここは僕が話した方が良さそうだ。


「まぁまぁ落ち着いてください、僕が続きを話しますので……」


「ちっ」と舌打ちをして不機嫌そうに腕を組むオリバー。


「それからこの世界で、友達もできて沢山の人にお世話になりました。しかし、この世界に来てから一年と経っていないある日、王都アルステムでデモン・スティーンというマクラム国のスパイが禁忌を侵しました。

 その騒動で僕は二度目の命を落としました」


「そうだったのね……」


 母が僕の肩にそっと手を置いた。


「ハルカは私が産んだ子よ。だからハルカの過去に何があっても私達の子に変わりはないわ」


「母さん……」


「ふむ……ハル君は大事なことを話していないようだ」


「え? そんなことないと思いますけど……」


「全部話してくれていいのよ?」


 説明はしたし……ソマリの事は別に話すことでもないだろうし……。


 ゴホンと軽く咳払いをして話し出したオリバー。

「十四年前の禁忌からアルステムを救ったのは他でもないハル君なんだ。ハル君は自分の命を削って禁忌の魔法に侵された人々を元に戻し、元凶であるデモン・スティーンを討ち倒した」


 わ、なんか改めて言われると恥ずかしい。あの時は無我夢中だったから……。


「じゃあ……ハルカが……あの?」


 父と母と祖母が僕を見て驚いている。アルステムを救っただなんて……オリバーったら僕を持ち上げすぎです。


「そうだ。アルステムの守護神として祀られている水の神ハルだ」


 ちょおおおおっ!? え? なに!? その水の神ハルって!?


「そ、そんな……あの英雄であり、神と崇められているあのハルがまさかハルカの事だったなんて!」


 父達は顔を真っ赤にして歓喜にうち震えている様子だ。祖母なんて力が抜けて床にぺたりと着き、ボロボロと涙を流し始めてしまった。


「今ではアルステムの一大行事となった厄除けの祭りもハル君がきっかけだ」


 なにそれ! そんな祭りまでできちゃったの!?


「くく……ハル君、驚いているようだな」

僕が驚く顔が見たかったオリバーはご機嫌な様子だ。


「そりゃ、驚きますよ……と、いうか恥ずかしい……」


「ハルカ、俺は父として誇りに思う。そんな偉大な人物、いや神の使徒とも言われている方が、まさかハルカの前世だったなんて……」


「誇り? 自分の息子が別人みたいで嫌じゃないの?」


「嫌なもんか! 私達は神に選ばれたのだ! この子を託されたのだ! 母さん、やはりお告げの通り、この子は神に愛されている子なんだ!」


「え、ちょ、お告げってなに? そんな話聞いてないけど……」


「実は内容が内容なだけに、うちの家族以外話してないことなんだが、ハルカが産まれる前日の夜に、神様からお告げがあったんだよ」


 はあああ!? 神様、僕が転生する前に手回ししてたの!? 何も聞かされてないんですけど……!


「そんな事が……興味深い……」

 オリバーは興味深々といった様子で机に肘をつき、前のめりになった。


「明日産まれる子は神に愛されているので、大事に育てれば明るい未来になるだろう。しかし不幸にするようなことをすれば未来はない、とお告げがあり、ハルカと名付けてほしいともお告げをいただいたのだ」


 か、神様……。事前準備整えすぎっ! それはもう、お告げじゃなく脅迫というのでは……。






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