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第八十話 目覚めたハル

 

 ハルが意識を失った後、禁忌魔兵に捕まっているソマリは、ハルに駆け寄りたくて必死に抵抗する。


 しかし、捕まった際に痛い目にあわされているため、いつもの力がでない。

 それでも必死に抵抗をするが本来の力の半分も出ない力では、禁忌魔兵になっている冒険者を振り払うことはできなかった。


「うぅぅ……ハルさまぁ……」


 ハルの腹部からでる血が地面を赤く染める。

 駆け寄るオリバー騎士団長とジャック。ハルを仰向けにして応急手当をしようと傷口を見たオリバー騎士団長は顔をしかめた。


「酷い……」


 止血魔法が使える者がこの場にいないため血を止めることができない。刺さった矢を抜くことはできない。今抜いてしまえば血が溢れてくるであろう。



「どれ、あの獣娘になにができるか見てみるかの。報告では魔法は使えず、剣技の腕は騎士団やヨハン道場の上級者並とのことだが、この状況で何をやってくれるかのぉ?」


 覆せない絶望の中で、ソマリが何をするのか見てみたいというだけで、デモンはソマリを解放した。


 ソマリを掴んでいた禁忌魔兵の手が離れたことに困惑するソマリ。禁忌魔兵やデモンの方を見る。

 解放されたようだと気付いたソマリはハルの元へ向かった。



 ハルと一番関わっていた女性だ。


 もしかしたら禁忌魔兵にならないハルの秘密がわかるかもしれない……。そう考えたデモンは一つの過ちに気がついた。


「む、しまったのぉ……。まだ少年を殺すべきではなかったかもしれぬな。獣女を人質に色々聞き出せばよかったか……」


 髭を触りながら自分の考えの浅さを反省していた。



 ソマリは力の入らない身体にムチを打ってハルに向かって歩いていく。

 ようやくハルの元へたどり着いたソマリはハルの前でひざまついた。


 ボロボロのソマリにラグドールは声をかけようとしたが、ハルを見つめるソマリを見て言葉を飲み込んだ。


 ソマリが初めて一目惚れをした相手が目の前で死にそうになっているのだ。ラグドールは黙ってソマリとハルを見守ることにした。


「ハル様は……大丈夫……ですよね?」

 ソマリの問いにオリバー騎士団長は目線をソマリから外した。ソマリに言いたくはない事を伝えなければいけないからだ。

「なんとか脈はあるが…………止血魔法を使える者もいなく、傷は深い。このままでは……」


 ソマリはハルの頭を自分の膝の上に乗せた。

「ハル様は特別なんです。いつも信じられないような力をみせつけてくれました。だから……きっと今回も…………」


「しかしこの様子では――――」

「ラグドール」

 ラグドールが何かを言いかけたところを、オリバー騎士団長が遮った。

 黙って首を横に振り「そっとしといてあげてくれ」と無言で伝えた。

 それを察した周りは黙ってソマリとハルを見つめた。


 そんなゆっくりとした時間だが、デモンからすれば退屈そのものである。ソマリという獣人は特別な力などなく、ハルになにかする様子を見せない。

 ただハルを膝枕しただけだった。


 なにも起きない、なにも起こせないならこれ以上待っても仕方がないと、デモンは話を進めようとした。

 だがそのとき――――


「う……ぐぁ……痛い…………」

 ハルが目を覚ました。ソマリはハルの顔を覗き込むように顔を近づけた。

「ハル様!」





「あれ……ソマリさん?」

 目を覚ますとソマリが目の前にいた。まるでこれからキスをするかのような距離だ。

 たしかソマリは禁忌魔兵に捕まっていたはずだが……僕が意識を失っている間に何があったのだろうか……?


「はい……はい、ソマリです」


 僕の顔にポロポロと涙を溢すソマリ。

「ソマリさん無事でよかった……あ、無事ではないか……ぐっ!」

 痛みが激しくて、つい唸ってしまうほどだ。


 ソマリが涙を拭うのに顔を引くとソマリの傷ついた身体が嫌でも目に入る。


 ソマリの腫れた顔や身体、片方切り落とされた獣耳を見て胸が苦しくなる。


 涙を拭ったソマリはニヘラっと顔を崩した。精一杯の笑顔だろう。


 助けなきゃ。


 これ以上誰も傷つけさせない。


 僕は宙を見上げるとそこには夕日に照らされるデモンの姿が変わりなくあった。

「少年よ。お主にはなぜ毒物が効果ないのじゃ? 禁忌酒も飲んだはずじゃ。お主の返答次第ではそこの獣娘を逃がしてやるぞ?」


 ラグドールが禁忌魔兵になればソマリを逃がすと言っていたのに、今度は僕にも条件をつけてきた。

 たしかにソマリを逃がしてくれるのは悪くない話だ。


 だが、本当に逃がすという保証もない。僕らが苦しむ姿を見て喜ぶような頭のイカれた奴だ。


 僕は痛む身体を無理やり起こしかけた。

 ソマリが起きないように促すが、それでも立ち上がろうとする僕の身体を支えてくれた。


 僕の身体に刺さっている氷の矢は、体温と血の温かさで溶けてきていて傷口との隙間をつくっていた。そのため血は止めどなく身体から流れ出続ける。

 仮に止血魔法を使えてもこれ程深い傷では無理だろう。


 僕はゆっくりと立ち上がり、中指を立ててデモンへ向かって一言。


「くたばれクソじじい」



※※本編の続きではありません※※

■ハルとソマリのラジオトーク■


「ハル様が目を覚ました!すぐに飛び付きたい!すりすりしたい!チュッチュッしたい!」


「ソマリさん……煩悩漏れてますよ」


「デヘヘ~、だってハル様いつ死ぬかわからないからやれることしたいですよ!」


「ちょっと!まだ死にませんよ!?」


「え~、だって血だばだばじゃないですかあ?」


「気合でなんとかします!」


「気合って……ハル様は子供ですねえ。クスクス」


「あ、バカにしてます?バカにしてますよね?」


「私がハル様をバカにするはずないじゃないですか。可愛いなっておもっただけですよ」


「むう……」


「ハル様も死ぬ前に私にしたいことないですか?」


「いや、だから死ぬ前提で話さないで!?」


「でも、ベッドで一緒に寝たときに何もしてこないヘタレですからねえ」


「!!! まって!それ今言わないで!ラグドールさんが聴いてたら殺される!」


ピコーン


「あ、父からLIN●だ」


「ソマリさん、ラジオトーク中はスマホの電源切ってくださ……い……え?ラグドールさん?」


「えっと何々……『小僧、後で話がある家に来い』だ、そうです」


「ぎゃああああああ!」


「ハル様が我が家に来て、父に会うということはあれですね!?結婚の挨拶ですね!」


「ソマリさんは能天気でいいですね……」


■■■



毎日更新中!(ゝω・´★)キュピーン


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