表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/102

第六十八話 獣人族最強の男

 

「まさか、魔力障壁を破るとはっ!」

 自身が張った魔力障壁に、絶対の自信を持っていたデモンは慌てて飛び退いた。


 そして、数回に分けて宙を蹴りあげて飛び上がり、バルコニーよりも高くあがり、建物でいう四階くらいの高さまで逃げるように上がっていった。


 ドレイクが殴られるのを目の前で見ていたデモンは、「ドレイクはもうだめじゃの……」と呟き、自分の手駒が一つ減ったことに、小さなため息を吐いた。


 デモンにとってのドレイクは、特別な感情もなく、今まで禁忌についての研究人員というだけの存在だったようだ。


 そして、禁忌魔法を進化させる研究も遂げ、ドレイクの役目はほぼ終えていたため、今では規格外の力を持つハルを手駒にすることの方が大事であった。


 デモンは宙に浮いたまま、禁忌の魔力を解放した。


 杖からは人の顔の形をした魔力の塊が一つだけ、僕たちの方に向かって飛んできた。


 僕は慌ててソマリを片手で背負いこみ、デモンの放った禁忌魔法の呪縛(じゅばく)から逃げるため走り出す。


「ぬぅ!?」

 デモンが放った禁忌魔法の呪縛よりも速く走り、禁忌魔法の範囲外まで行くという作戦だ。


 …………作戦なんて格好いいものじゃないが、手を出してもすり抜けてしまうようなモノを防ぎようがない。


 そのため、こんな事しか思い浮かばなかったが、幸いにもドレイクが魔獣化させたガウルを、格好いい登場を演出するために、城門から僕の所まで禁忌魔兵を割いていた。


 そのお陰で僕は真っ直ぐ走り去ることができた。


 禁忌魔兵がはびこる状態であったら、縫って走らないといけないため、禁忌魔法の呪縛(じゅばく)から逃げのびることができなかったはずだ。



 遠ざかるハルを見てデモンは()に落ちない顔をしていた。

「…………しかしおかしいのぅ。なぜ呪縛が一つしか飛ばぬ? あの獣娘は禁忌の果実酒を飲んで酔っていたのではないのか?」


 ソマリが酔っていたのは、果実酒のせいだと思い込んでいたデモンだが、禁忌魔法を放った時に飛んでいく呪縛が一人分しかなかったことに、獣娘は飲んでいないのだろうと結論付けていた。


 ハルが飲むのを目の前で見ていたデモンだからこそ、その答えを出すのは仕方のないことだった。


 しかし、ハルには毒物などの危険物質は効かないため、実のところ呪縛はハルではなく、ソマリに向かって飛んでいたのだった。


 ハルがデモンの元に戻ってくるようなことがあれば、またその時に禁忌魔法を使えばいいと割りきり、国王の方に視線を向けた。


「なかなか面白い見世物であったのぉ。ガウルの魔獣化はすごいじゃろう? あれは大蜘蛛の体液の中でも魔素の濃い所を使っておるからの。

 効果は絶大じゃが、普通の人間では使えないのが残念じゃ……。

 だが少年はもっとすごかった! 元々は普通の子供だったはず……少年の身体をちょっといじってみたいのぉ。

 ラグドールの娘は愉快じゃったが、どうせならラグドールの前で痛め付けてやりたかったわ」


 命のやり取りを見世物といい放つデモンはイカれているとオリバー騎士団長や国王は思った。


 イカれているとのは、頭だけではなく顔にも出ていた。先程までソマリの耳を切り落とし、ハルとガウルを戦わせて、ドレイクが死んでしまったのにも関わらず、嬉々とした表情をしているのだから…………。


「ハルに逃げられ、ソマリにも逃げられ、終いにはお前の片腕であるドレイクまでやられて、そんなに簡単に、お前の思惑通りにいかないんだよ!」

 オリバー騎士団長はデモンの計画をなんとかして崩してやるつもりで、嫌みをいってデモンの思うように進んでないということを自分自身にも言い聞かせていた。


「まったくじゃ……あの少年を手駒にするチャンスを逃してしまうとは、わしもまだまだ甘いようじゃ。

 しかし、お主にそのように言われると少し腹が立つわい。お主らの絶望の顔も見れたし、そろそろ死なせてやるかのお?」


 デモン・スティーンが杖を光らせ、再び禁忌魔兵達が動き出した。


「ぬおっ!」

 一斉に襲いかかってくる禁忌魔兵達に死に物狂いで相手をする国王とオリバー騎士団長。


 そして二人の後ろにはカレン姫が頭を抱えて震えていた。


 社交マナー、食事作法、踊りや楽器を練習してはいたものの、剣技など練習するはずもなく、たとえ僅かばかり、剣の型を習っていたとしても、殺しに向かってくる相手と戦えるようなものではない。


 必死に(あらが)う、国王とオリバー騎士団長だが、数で押されては長くは持ちこたえることができず、遂に元民間人であろう禁忌魔兵が持っていたナイフに刺されてしまう。


「ぐうっ!」

「国王!?」

「お父様!?」


「大丈夫だ! うおおおおお!」

 刺した相手を掴みあげ、バルコニー下に投げ飛ばした。


「ヴおおオぉぉぉ……」

 叫び声と共にグシャッっと、地面に落ちる音がバルコニー上にまで届いた。


 バルコニー外に視線が向いた国王の目に、大きな巨体の人物が映った。


「ぐぅおらああああ! 死にたくなかったら道を開けろおおお!」



 右手には短剣より長いショートソードを持ち、左手には短剣を逆手で持っている。

 大きな体のわりに素早い動きで、縦横無尽に禁忌魔兵を切り刻んでいる。


 頭には獣耳があり、大きな体とムキムキの筋肉で服がきつそうである。


 その人物とは、獣人でありながら、アルステム国内で剣技において三強と認められ、過去のマクラムでの戦争では、オリバー、ヨハンと共に鬼神のごとく敵を倒していき、勝利に導いたことから、三剣を名乗ることを許された人物。


 そして、ソマリの父であり、ハルの潜在能力を見抜き、ヨハン刀術道場を紹介したラグドールが、この禁忌魔兵の群がる城内に姿を見せていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ