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第六十九話 オレはラグドール ~オレの娘は可愛い~

ラグドール視点です。

 

 オレは獣人族のラグドール。三剣のラグドールと呼ぶものもいる。


 二十年前のマクラムとの戦争の際、先陣での活躍により栄誉ある称号、『三剣』の名をオレは受け取った。


 そして、三剣の名とは別に、恩賞としてなにか希望はないかと聞かれたので、獣人の村に冒険ギルドの設立を願い出たところ、アルステム国王は快く受理してくれた。


 村に戻ってからすぐに可愛い娘が生まれた。小さな耳と尻尾と産毛は綺麗なオレンジ色だ。オレのオレンジ色の毛は茶色よりだが、娘は黄色に近い綺麗なオレンジ色だ。


 オレ達はこの小さな娘をソマリと名付けた。


 それからオレはがんばった。綺麗な妻と、可愛い娘のために、バリバリ働いた。

 剣を置き、羽ペンを手に取った。

 日夜書類仕事と職員育成と、また自分も不馴れなため、王都のギルドに行き、様々なことを教わってきた。

 最初はギルドの経営と王都のギルドとのやりとりに四苦八苦して目が回る勢いで、中々家族との触れ合いも取れなかったが、なんとか軌道に乗り、家族に目を向けられるようになった。


 しかし…………忙しさもようやく落ち着いた頃に、妻が病気で亡くなってしまった。

 ソマリは小さく、まだヨタヨタと歩きだしたくらいだった。



 男手一つで育てることになったオレは、ソマリをギルド内のギルド長室に連れてきて、書類仕事をしながらソマリの面倒を見た。

 幸いにも、従業員達もソマリの面倒を見ていてくれたので、仕事と育児を両立することができた。


 そのうちソマリはオレの真似をして短剣を二本持つようになった。オレの真似をしてくるソマリは可愛い。

 顔立ちも妻に似て、とても可愛くて将来モテモテだろう。

 相手が誰であろうとソマリをやるつもりはないがな!


 案の定ソマリの周りには男が近寄るようになった。これはまずい、ソマリは大きくなるにつれてどんどん可愛くなる。


 それと同時に娘は鍛えれば鍛えるほど強くなっていく。センスがよく、スピードもある。


 そして仕事を手伝うようになり、受付の仕事をやらせたら、毎日のようにソマリを見るためだけにギルドに集まる輩が増えた。

 しかも、ソマリのファンクラブまでできたらしい。

 一応酒を注文するから追い出すこともできやしない。しかし、もしもソマリに手を出そうものなら、そいつに明日がくることはない。


 オレが断言する。



 そんなある日、太陽も落ちてギルドの酒場には外から帰って来た冒険者達が、肉にかぶりつき、酒を喉に流し込み始めた頃だった。


 オレは、ギルドが見渡せる高い位置にある机で、書類に目を通していると、ギルドに人族の子供が一人で入ってきた。


 人族が来ること自体めずらしいのに、夜に子供が一人で来たのだから、注目の的だ。

 ソマリが対応しているようで、プレートを確認している。銅色が見えたので駆け出しの銅ランク冒険者のようだ。


 だとすると迷子の線が高いだろう。


 なにやらソマリがプルプル震えているようだ。顔を真っ赤にして……怒っているのか?


 勢いよく、こっちを振り向いたソマリから、とんでもない発言が飛び出した。


「ギルドマスター! しばらく私はこの子と旅に出ます!」


 …………は? なに? 旅に出る?

 思考が追い付かなくて、整理している間に、どうやら子供の方から断ったみたいだ。


 オレはソマリの意味不明な言葉に立ち上がってしまっていたようだ。安心したオレは、ドッシリと椅子に座り直すと、今度は子供が腕相撲を始めようとしている。


 相手は獣人の中でもベテラン冒険者に入るセイムだ。なにを大人げなくあんな子供と……。

 ソマリが二人の手を上に手を重ね、スタートの合図をするようだ。


 …………しかし中々始まらない。


 ソマリは頬を赤らめてなにしてるんだ……。


 まさか!? ゼムラの手に触れている事が嬉しいのか!?

 ゼムラめ! しばらくこの村から離れるような変な依頼を押し付けてやる!


 ドンッ! バキバキッ!


 木が砕ける音が鳴り響いた。


「「「「ええっ!?」」」」


 ――――――っは?


 周りで見ていた冒険者達は驚きの声をあげた。テーブルに叩きつけられたのはゼラムの手だった。あまりにも力強い叩きつけによって、テーブルの木の破片が飛び散った。


 ――――何が起きた? 人族の子供は頭を下げてギルドから出ていった。


「ギルドマスター! 私もハル様の討伐に付き合ってきます!」


「えっ? お、おい!? ソマリ!」


 オレの制止もむなしく、ソマリは子供を追って走って出ていった。それに続いて二人の冒険者が追いかけるように出ていく。


「おい。あいつらどこいったんだ?」

 オレはソマリの隣にいた、従業員に事情を聞いたところ、小さな村の近くに熊が数頭目撃されているので、被害が出る前に討伐してほしいという内容の依頼だ。

 そして子供がその依頼が受けられなくても、そこにいけば熊がいる可能性が高いため、そこに行くと言って聞かなかったようだ。

 依頼がダメでも熊を倒し、素材として買い取ってもらえるなら倒してくる……ということらしい。


 なるほど、あんな男か女か、わからないような子供を一人で行かすわけにはいかず、心優しいオレの娘は子供に付いていったということか。


 うむ。ソマリは良い子に育った……。


 天国の妻も喜んでいることだろう。


 ソマリと二人の冒険者がいれば、なんとかなるだろう。オレが指導した娘は強いからな。



 ――――――それからしばらく待つこと数時間。

 夜も深くなり、宿や自分の家に帰っていく冒険者達。しかし、それでもまだ多くの冒険者達がギルドに残っていた。

 どうやら子供とソマリの帰りを待っているらしい。みんな、得たいの知れない子供が気になるようだ。



「戻ってきたぞ!」

 その声を聞きギルドにいる全員が入り口に注目した。


 ソマリについていった冒険者は、二人がかりで熊を運んできた。


 ソマリは二人の後ろに続き、手ぶらで上機嫌のようだ。


 最後尾は子供だ。…………一人で熊を担いでやがる。


 オレも一人で担ぐことはできるが、数時間の距離を子供一人で?


 ありえねえ。


 持ち込まれた熊を査定したところ、熊の状態は良い。最高だ。切り刻まれていないから、毛皮として使うには最高だろう。一頭は頭がおかしなことになっている。頭が砕け散ったような跡だ。


 二頭とも最高ランクの買い値だ。四人で均等に分けるということなので硬貨を渡してやった。

 子供は硬貨を受け取ったら、ソマリが薦めた宿へ向かったようだ。


 ソマリに話を聞いたら、ものすごく嬉しそうに話し始めた。


 ソマリよりも速く走り。オレよりも力が強く。謙虚で照れやで、そして最高に可愛いということらしい。

 こんな調子で子供を絶賛し続けた。

 …………だめだ。話にならない……全然、話の内容がわからない。


 明日、ソマリについていった冒険者二人に聞くことにしよう。



 次の日。ソマリが仕事に来ない。もしかして子供と旅に出たということは……ないよな?


 そんな事を一人で考えて、モヤモヤした気持ちでいたら、ソマリがギルドに入ってきた。


 ――――よかった! 


 旅立っていなかったようだ。嬉しさのあまり抱き締めたかったが、思い止まった。

 いかん。ソマリは仕事を遅刻している。身内だからといって甘やかしてしまっては、他の従業員に示しがつかない。


「ソマリ! どこに行っていた!? もうギルドは開いてるぞ!」


 オレが遅刻したことを怒るがキョトンとしていた。


「ギルドマスター、私はハル様としばらく旅に出ると昨日言いましたよ?」


 よく見ると後ろに昨日の子供が一緒にいるじゃないか。しかも、子供と旅に出るだと!?

「あああああ!? このバカ娘が! オレは旅に出ることは許可していない!」


「ギルドマスター、ハル様に武器をいくつか試させてあげたいので、ギルドに置いてある訓練用の武器をお借りします」


 オレの娘は神経が図太かった。オレが怒っているのに全然気にしていない様子だ。


「話を聞けよおおおお!」

 オレの話を聞くように促しても武器倉庫に、つかつかと子供をつれて歩いていってしまった。

 ハルと呼ばれている子供はオレが怒っていることにオロオロと困って顔をしている。


 娘よりよほど話が通じそうだ……。


書いていると止まらず、一話分では終わらなかった(>_<)

さくさく書いていきますよお!

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