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第四十四話 条件

 

 僕に性の欲求をぶつけてきた職員は、刑罰は無かったものの免職となった。

 国の財政でなりたっている鉱山奴隷の監視職は日本でいう公務員のようなもの。

 給料も多かったのにクビになり突然の無職に……。あわれだと思うが僕も被害者だし口を出すことはしなかった。


 牢から出してもらった僕はこのまま帰っていいそうだ。あの変態職員によるピンチから一転、王都に帰れるのだからオリバー様々である。

 ただし条件があるそうで……まぁ、当然ですよね……。


 明日、アルステム国の軍で蜘蛛討伐に向かうとの事。条件とはそれに僕も参加するというものだった。

 軍からの出兵は少ないが、冒険者達の参加もあるのでそちらにがんばってもらうようだ。

 国からの緊急依頼に参加すればかなりのギルドポイントと報酬をもらえるため参加者はかなりの数になるだろう。


 我先にと抜け駆けして突撃してくれても結構、ただしあの蜘蛛の大群を抜け駆けして戦いに挑んでただで済むはずがない……。


 それに僕が見た、他とはあきらかに大きさが違う蜘蛛……。

 僕の()でやっと見えるくらいの距離だったので、誰も見ていないだろう。





 ――王都に戻る馬車の中。


「オリバーさん、ありがとうございました」


 改めて礼を言う僕に、優しい目をして頭を撫でてくる。まるでお父さんみたいだ。

 オリバー騎士団長が父親だったら素敵だろう。でも英雄三剣の子供となれぱ周りの期待や妬みがすごそうだ。


「しかし、なにかされる前で本当によかったな。初めての相手が男じゃ、ハルがかわいそうだしな」


 ニヤニヤした顔で、冗談言うラルクさんに同意するソマリさん。


「まったくです! 可愛いハル様に手を出していたら顔にグーじゃなく、彼の()()を剣で切り刻んでいましたよ!」


 想像してしまった男性達は、股間がキュウウウっと、締め付けられる思いだ。


「そういえば、ハル様に貸した私の短剣ってどこにありますか?」


「えっ?」


「ハル様が捕まったあと荷物を探したんですが……あ、でも! ハル様個人の鞄は開けてないですよ!?」


 僕は蜘蛛を触れるようになり、ソマリに短剣を借りて……大剣を右手に、左手に短剣を持ち……たしかに短剣を持ち戦っていた……あ? ああああああっ!


 思い出した! ラルクに向かっていった蜘蛛に投げてしまった。


 あまりの蜘蛛の多さと、ラルクの危機に無我夢中での行為だ。

 しかし、理由はどうあれ、あの時手放してしまったのは確かである。


「実は――――」


 短剣の行方を聞いたソマリは「それは……仕方ないですね……」と、言ってくれているが、耳と尻尾は下に垂れ下がり、とても残念そうにしている。


 弁償もしないといけない。


「本当にすみませんでした! 必ず弁償します! い、今は持ち合わせがありませんが必ず買ってお返しします!」


 僕の言葉にピクリと反応を示す獣耳。


「ハル様、あの短剣は父が使っていたものなので全然気にすることありませんよ!」


 ……それ……超きにするううう!


 なんでそんな大事なものを僕に貸したのか……。こんなことなら借りなければよかった。

 いや、借りていたから右手と左手に武器を持ち、縦横無尽に倒しまくれたのだ。それに短剣を持っていたから、ラルクを助けれたのだ。


 ソマリは気にしなくていいと言ったが、ラグドールが愛娘に渡す剣が安物のはずがない。ああ……どれ程の短剣だったのか……。


 明日の蜘蛛討伐の際、探せそうなら探してみようかな……。


「あの、ハルさま? 買ってくれるのは短剣ではなく、指輪とかでもいいですよ?」


 …………ソマリはやっぱりソマリだった。


 しかし、ラグドールの短剣か……手入れがされていてとてもお古という感じではなかった。


 うわあああ! ラグドールに会うのがこわいっ!


 ガウルは蜘蛛討伐が終わってから出してあげよう。場所はわかってる。見張りもたぶん一人か二人だろう。

 監視職員には少し眠っておいてもらって、その間に檻を力ずくで広げて出してあげよう。


 言葉が通じなければ助けようなどと思わなかっただろう。話を聞いているうちに助けたくなってしまった。僕にはそれを可能にするだけの力がある。

 それゆえに助けたくなった。ただそれだけである。


「オリバーさん。僕と同じ檻の中にいたガウルですけど、これからどうなるんですか?」


「んー? あー、新種族の獣か。あいつの担当は、俺達騎士団じゃないからな。デモンの野郎が仕切っているはずだ」


 デモンという人物の名前を出したとたん、眉間にシワを寄せた。いつも優しく温厚なオリバー騎士団長にも、嫌いな人はいたようだ。


「ただ、言葉の解読も進んでいないみたいでな、あの獣が非協力的らしく、思った成果があがっていないそうだ。このまま収穫がなければ殺処分だろうな」


「そんなっ! わざわざ殺すことないんじゃっ!?」


 大声を出した僕に全員が驚いていた。

 しまった……殺すと聞いてつい……。


「パンを分けてもらった獣に情がわいたのかい?」


「は……はい……」


「ふむ……」


 うっ……オリバー騎士団長が黙って僕を見ている。見透かされそうでこわいっ! 


「ハル様はやさしいのです!」

 僕を抱き寄せるソマリさん。


「おい、ハルが困ってるぞ」

 ラルクの言うとおり、僕は困ってる……胸が頬に当たって……。


「ふっふっふっ、この照れているハル様は格別に可愛いくないですかっ!?」


 こういうことに耐性のない僕はいいオモチャのようだ。大人の女性ってこわいです……。


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