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第四十一話 ハルを迎えに鉱山へ


◆ラルク

ハルが酔っぱらいに絡まれているところを助けた、世話焼きのカッコいい金髪剣士さん。


◆ソマリ

獣人で耳と尻尾があり、可愛い顔立ちで獣人達のアイドル的存在。華奢で中性的な顔立ちのハルに一目惚れしてしまった。


◆オリバー騎士団長

アルステム国、王都騎士団長を任されている。長剣と大盾を使いこなす。ハルの人間離れした身体能力をみて、国にとって害があるかないかを見極めるための監視を引き受けた。


 

 ハルと、ガウルの朝食を持ってきた一人の監視員。

 昨日の晩から監視を続けている先輩監視員と、監視を交代するために来た新米監視員。


 しかしドアを開けると見張りをしているはずの先輩監視員は床で寝ていた。見張りをしないで睡眠とは……と、一瞬呆れたが、なにやら様子がおかしい。

 寝るにしてもこんな床で、しかも掛け布団もない。近くには道具置きの棚が倒れている。どうやら気絶しているようだ。


「先輩! どうしたんですか!? しっかりしてください!」


 床に倒れている先輩を揺さぶり起こした。

 すぐに意識を取り戻したため、ほっと胸を撫で下ろした。


「う……ん? あ……」


 まだ頭がボーッとしている様子で周りを見渡す先輩監視員。はっと、何かを思い出したかのように覚醒し、語りだした。


「牢に入っている少年が、ガウルと会話をしていたのを報告しようとして……えと……そこから頭に衝撃が……」


 後頭部を押さえる先輩監視員をみて、後輩監視員は棚に指を指す。

「棚が倒れてきた頭をぶつけたんですかね?」


「えっ……」


 頭をさすりながら棚を見下ろす先輩監視員。


「ガウルみたいな新種族と話せる子供がいるわけないですよ。王宮の偉い人や、王都の研究者達でさえ解読できないのに……それにどうして話してるってわかったんですか?」


「俺が建物に入ったらすごい風……というか振動みたいなのがきて穴の中で争っている感じだったんだよ! 少年が『ガウガウ』言って、ガウルと会話していたんだよ!」


「先輩……僕でも『ガウガウ』言うだけならできますよ……」


 穴の中のハルとガウルを見下ろす。


「観たところ怪我とかしてなさそうですよ? 二人とも近い距離で大人しく寝てますし、争っていたようには見えないんですが……もしかして先輩、頭打って変な夢みてたんじゃ……」


「ぐっ……」


 そう言われてはなんだが自信がなくなってきたし、本当に少年がガウルと会話できるかわからないのに報告していいものか……と、考え直した。


 とりあえず後輩に言われっぱなしもくやしいので、理不尽にも後輩の頭を叩いておいた先輩監視員だった。




 目を覚めして大人しくしているハルは、穴の上にいる監視員達の会話を聞いていた。

 後から来た監視員が都合のいい解釈をしてくれたようだ。食事を持ってきた監視員が僕に話しかけてきた。


「おい、少年。お前ガウルと会話できるか? もしできるなら刑期が免除(めんじょ)されるかもしれないぞ?」


 刑期免除はうれしいけど、そのあとが面倒そうだし、どうしてガウルの語源が話せるのか説明できない。

 ガウルに僕の正体を大雑把だが明かしたのは、ガウルと会話できる人がいないため、そのことが誰かに伝わることがないと考えたからだ。


 声を真似ていただけと伝えると、今度は争っていたか? と聞かれたが、もちろん争っていないと言っておいた。僕はガウルがパンを分けてくれたこと、優しくしてくれていることを伝えた。


「ガウルにそんな一面があるとは……」


 この国の人達にはガウルは狂暴で危険な存在みたいだ。ガウルは捕まるときに、数人の兵を重症に負わせている。だから仕方がないのかもしれない。

 お互い言葉が通じないため、お互い警戒する。武器を持ったアルステム兵に囲まれ、自分を捕まえようとするのだから抵抗するのは当然だろう。




 監視員は朝食二人分を置いて上に登っていった。パン二つと干し肉と果物ひとつに水。孤児院の時とそれほど変わらない食事のため、僕にとっては十分と思える量だが、労働をする大人にはすこし少ないのかもしれない。

 そういえば僕は鉱山労働をするのだろうか? 特別な牢に入れられてるし……。

 そんなことを思いながら黙ってパンにかじりついていた。





 ラルク、ソマリ、オリバーの三人は馬車に乗りこみハルのいる鉱山へ向かっていた。

 ソワソワしているソマリを見てラルクは、


「おい、嬢ちゃん。便所に行きたいならそう言えよ? 我慢はよくないぜ」


「ちっ! 違いますぅ! 一刻も早くハル様を触りたいだけです!」


「あんた……痴女だったのか……。ハルもついに大人になったか……」


 真っ赤な顔で反論したソマリの言葉を、いやらしい方で受け取ったラルクは、馬車の外を遠い目で眺めていた。


()()していません! 私はただ、ハル様のスベスベお肌をプニプニしたり、スリスリしたりしたいだけですぅ!」


「「「()()って……」」」


 全員の視線がソマリに向くと、ソマリはさらに真っ赤な顔になり、ボフッっと、湯気があがるようだった。



 三人を乗せた馬車が鉱山に着くと、鉱山労働者達はもちろん、職員も驚きを隠せなかった。


 王族が使うような豪華な馬車ではないが、立派な造りをしており一目で偉い人物か上級貴族だろうと想像がつくからだ。

 そんな人物が事前連絡もなく来るということも職員を驚かせた要因である。


 急いで職員数人が門の前に並んだ。そしてそのうちの一人が御者に、この馬車に乗っている人物を聞くと、慌ててマグロ監視官を呼びに走っていった。


 馬車の前で整列をして、中から降りてくる人物を出迎えている職員達には誰が乗っているのか聞こえなかったが、慌ててマグロ監理官を呼びに走っていった職員の様子から相当な人物が乗っているのだろうと推測をし、ピシッと背筋を伸ばし降りてくるのを待った。


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