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第三十九話 迫り来る獣王


 獣人とは違った種族であることは明白であり、アルステム国にとって、見たこともない種族であり捕獲後さまざまな調査や研究を(おこな)った。


 ガウルの見た目はライオンそのものだが二足歩行をする。衣類は下のみ着用していて、物を持ったりもできる。

 肌は獣人みたいに人肌ではなく、獣そのものということと、力が以上に強いことから、獣王という種族名をつけた。


 その研究を指揮しているのがデモン・スティーンである。

 医学、生物、植物、などにも詳しく、大陸の地理にも精通しているデモン・スティーンだったが、この生物は見たことがなかった。


 アルステム国の周りにらこのような生物の情報はない。もちろん大陸全部を調べ尽くしたわけではないのだから、未確認生物や知らない種族がいても不思議ではない。


 船の発展が進んでいないため近くの島以外は行けていない。そのため、このガウルが海を渡ってきたのか、遥か遠くから陸地で来たのか、どの方向から来たのか、知りたいことは沢山あった。


 本来なら話す意思がない者には、拷問をして無理やり吐かせるのだが、相手との語源の違いがあることから拷問するだけ無駄になるため、そのようなことはしなかった。


 しかし、麻酔や麻痺を使い動けなくして、血を抜いたり、皮の一部を剥いだりして身体を調べたり、牢の中に獣などを入れてどうなるのか、どのような力があるのかを調べ、様々な研究をした。


 わかっている事はガウルはとんでもない怪力だ。ハルと同様、手錠を壊し、足枷の鎖を引きちぎったのだ。そして牢から逃げ出そうとしたが強固に造られていた牢を壊すことができず、逃げ出すことができなかった。

 だが、もし牢を壊せたとしても、はしごもなく建物二階分の高さがある穴を登ることはできない。


 研究も一通り終わり、話の通じないガウルは用無しとなり、処分してしまおうという意見もでたが、デモンが許さなかった。

 ガウルにはまだ使()()()があるというので、その時がくるまで牢に入れて生かしてあるのだ。




 建物を出たマグロ監理官や職員達。


「監理官、本当にガウルと同じ牢でよかったのですか?」


「あの小僧が死んでも事故ということにしておけばいいだろう」


「いえ……確かにガウルはすごいんですが……あの少年もなにかありそうなので……万が一ガウルとぶつかって、ガウルを殺してしまったらデモン・スティーン様からどんな処分を受けるか……」


「…………」


 ハルの得たいの知れない力を目の前で見せられたので、そのように言われて不安になってしまったマグロ監理官。

 国から新種族の管理を任されているマグロは、ガウルを傷つけてはならない。


 心配になったマグロ監理官は職員を一人、交代でハルとガウルの監視をさせることにした。

 そしてマグロ監理官に指示された職員の一人は、足早にハルのいる建物に向かっていった。





 僕の肩を力強く掴むガウル。

『なぜお前はオレと話せる!?』


 僕の肩がギチギチと悲鳴をあげている。

『ガウル……痛いです』


『ガウル? オレのことか?』


『違うんですか?』


 掴んでいた肩をパッと離したため、僕は一歩後ずさった。見た目通りの怪力のようだ。


『オレに名前などない。そんなことはどうでもいい。ほかの奴はオレと話せなかったのに、なぜお前はオレと話せる?』


 ガウルという名前はアルステムの研究員が、識別するために勝手につけた名前のようだ。ガウル自体に名前はないようだ。不便じゃないのかな?


『どんな方法で話しかけてきているのかわからないが、オレを油断させるために、お前みたいな子供を送り込んできたか。オレは何も話すつもりはない』


『まってください! 僕は罪人としてきたんです! 聞き出すなんてとんでもない!』


『罪人? そのように言えばオレが油断すると思ったか? なぜ険しい山をいくつも越えて、新しい大陸を求めて来たのか聞き出すつもりだな?』


『『…………ん?』』


 話すつもりはないと言いつつ、ボロボロと勝手に内情を白状してしまうガウル。


『クッ! うまいこと話を誘導して、オレから情報を聞き出すとは……! ただ子供ではないな!』


『いやいや、そちらが勝手に話したんですけどお!?』


『しかし、残念だったな! もう、これ以上なにも話さん! オレが部族長ということも、食物が育ちにくい土地のため、新天地を探しに来たなどと、絶対言うものか! …………あれ?』


 ……絶対隠し事できないタイプのようだ。


『お……おのれ! 奇妙な術を使うやつめ!』


『ちょっ……まって! 僕なにも言ってないし魔法や魔術も使っていない!』


『色々と聞かれてしまった、お前は危険なようだ。始末する』


 勝手にペラペラと話してしまった残念な口が、とんでもないことを言っているではないか!

 僕を掴もうと手を伸ばしてきたため、後ろに飛び退き、距離をとった。


『落ち着いてください! 事情があってこの大陸に来たのなら、その事情を話せばきっとこの国の人達が力を貸してくれますから!』


『ハッ! 助ける!? オレの身体をいじくり回したあげく、閉じ込めたままにしておくやつらが!? それに、どこの国や部族も領地を広げるために他部族を殺すではないか! この国には争いはないのか!?』


『争いはあります……でも! みんながみんな、そんな人ばかりではありません!』


 ゆっくり歩いてくるガウルに、僕は牢の角に追いやられてしまった。


『お前と話していると色々と話してしまいそうだ。悪いがお前には死んでもらう』


 そう言ってガウルは太い腕を振り上げ、まるで杭を打つように重い握り(こぶし)を振り下ろした。


 ドンっと強い衝撃音が周りに響きわたり、ガウルは眼を見開いて僕を見つめていた。


『バカな!』


 ガウルの振り下ろした握り拳を華奢な腕で受け止めていた。


 僕の拳の三個分くらいあるガウルの大きな拳は、何度も僕の頭上に振り下ろした。その度に重い打撃音が響くが、ビクともしない僕をみて焦りを見せ始めた。


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