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第二十三話 第四支部ギルドマスター

 

 指導料金ついては会ったときに聞いてみよう。

 そ、そうだ、入門の手続きもしてないし、門下生じゃないからお金払わなくていいよね!


 ポジティブに考えてみた……。


 それにソマリの父、ギルドマスターの紹介だったし、多分指導料免除であろうと思うんだけど……やはりはっきり聞いておかないと落ち着かない。


 外泊の報告を済ませたリアムさんが戻ってきた。外に行くということでオリバー騎士団長の大盾も持ってきたようだ。

 剣だけは当たり前のように、休みの日でも腰に刺しているため、持ってくる必要はない。



 さてと、外泊ついでにこなせる依頼を探すために、ボードに張り付く面々。

 このメンバーならどんな討伐でもいけそうだ。

 いや……目的は討伐じゃなかった。


 モモに冒険者とはどれだけ大変か、そしてどれだけ危険か教えるはずが、大所帯になってしまい、キケンの『キ』の文字もなさそうだが、いかに大変かをわかってもらえればいいか。


「そういえば、オリバー騎士団長のギルドランクって……」


「勿論、金だよ」


 僕の質問にさらっと答えてくれて、胸元から金のタグプレートを見せてくれた。


 おお……初めて見た。


 しかし僕はこれといって、金ランクとかに憧れとかはないが、すごいと思うだけである。コングは金のタグプレートに魅入っているようだ。

 きっと『いつかおいらも!』と、思っていることだろう。


「金ランクになるまでに、どのくらいかかるんですかね?」


「ハル様、私がお答えしますよ」


 ソマリの説明ではこういうことだ。


 一番下の銅ランクから鉄ランクになるには、成人となる十五歳以上であることと、規定のギルドポイントが必要。

 そして、鉄ランクから銀ランクになるための、ギルドポイントを貯めるには、四年くらいはかかる。

 さらに銀ランクから金ランクになるためのギルドポイントは、依頼の内容や受ける頻度(ひんど)にもよるが、およそ五年、つまり二十五歳くらいにならないと、金にはなれないと言うことだ。


 また金ランクになるには違反行為が一度でもあってはいけないし、なにより剣か魔法がかなりの使い手じゃないと試験に合格できない。

 そして金ランクになった人は、貴族などから声がかかり、専属護衛として雇われたり、剣術や魔術師の先生として独立する者もいる。

 そのため金ランクになっても冒険者を続ける者は、約半数だという。



「そうだな、ソマリ君の剣術の腕なら、ポイントさえあれば金ランクになれるだろう」


 ソマリの剣技を絶賛するオリバー騎士団長。

 ソマリは『当然です!』と言わんばかりのドヤ顔をしてみせている。


「この嬢ちゃん、そんなに強いのか……」


 ラルクとコングは、驚いているようだ。僕もソマリの双剣のスピードはすごいと思う。

 そういえばオリバー騎士団長が昔話をしてくれたとき、ラグドールは双剣って言っていた。


 僕と打ち合った時は剣一本だった。僕の剣選びの時は、軽く打ち合ったということか……ということは、ラグドールが双剣だったらと思うとゾッとする。


 もっと強くなっておかないと殺されてしまいそうだ。


 しかし、こういった考えが平然と出来るようになってきたというのは、この世界に馴染んできたのだろうか。

 それとも気が弱かった僕も少しは強くなれたのかな? 度胸が付いたというべきか。




 そんな話をしているとカウンターの中から、体格のいい四角顔の職員が挨拶にきた。


「ようこそ、王都アルステム冒険者ギルド第四支部へ。私はギルドマスターのガメットです」


 なんでわざわざギルドマスターが直々に挨拶に? 


「オリバーさん、お久しぶりです。ギルドに来るなんて珍しいですね」


「仕事でたまにしか来ないからな。今日は付き添いで来てるんだ」


 なるほどオリバー騎士団長がいたからか。ギルドマスターのガメットはリアムにも挨拶をする。

「よう、リアム、おまえは仕事なのか?」


「ガメットさん、お久しぶりです。今日は護衛……のような仕事です」


 はっきりしない答えに首をかしげるガメット。


「オリバーさんからお聞きした、魔物化した虎の件から今日までの短期間で、うちのギルドだけで二件の魔物の報告があります」


「そうか……他のギルドからも魔物に遭遇したという報告は受けている。冒険者や商人達にはできるだけ団体での移動をするように伝えておいてくれ」


 それを聞いていたラルクとシルビアが驚きの声をあげた。


「おいおい、魔物がそんなに!?」


「そうなんです。今までこんなに出現したことなどなかったのに……森深くならわかりますが、王都付近でこれだけとなると前例がないですね。

 うちのギルドも張り紙や、外の依頼を受けた者には直接警告はしていますが……」


「私達騎士団は、魔術師団と編成を組み、討伐隊を出している。他に門番には、王都から出る者に魔物のことを伝え、出来るだけ大勢や団体での行動を(うなが)している。

 どうしても急いでいる商人や、金銭的に厳しい冒険者などは少人数で行動をしているようだが……」



 僕達と魔物化した虎を倒した後、城に戻ったオリバー騎士団長は各ギルドに連絡をして、王宮側でもすぐ対策をしていたようだ。しかしどこに出現するかわからないような魔物に対して討伐隊も苦労することだろう。


 話しを聞いているとどうやら各獣や生物の魔物化が報告されているようだ。


「――そういうことだから、君達もギルド依頼で外に行く気なら、強い人と一緒に大勢で行ってくれよな」


 そう言って僕とモモの頭をなでるガメット。


「まぁ、ハル君がいるから安心だな」


 騎士団長が子供に頼るのはどうかと思いますが……。


「ですね! ハル様は魔物化した虎も一撃でしたからね! ちょちょいですよ!」


「誰です? そのハル様って人は?」


 不思議そうにするガメット。当然ラルクの方を見ている。この人がハルって人かなと思っているんだろう。

 うん、一番冒険者っぽくて強そう。と、いうか、あとはみんな子供か女の子だし……。

 そしてソマリが僕の腕にしがみつく。


「ハル様です!」


「はははっ、こんな小さくて可愛い子が虎を倒せる訳ないじゃないか」


 オリバー騎士団長も僕の肩に手を置き「ハル君だ」とにこやかな笑顔だ。


「……え? 魔物化の虎を一撃?」


 リアムも黙って頷く。


 困惑しているのは、ガメットだけではなく、ラルク達もだった。


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