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第百話 水の神ハル

 

 リアム騎士団長の鎧に付着している水滴が、ツルツルと下に落ちていく。

 朝もやがかかり、もうすぐ朝日が昇るという時間だが僕らは王都へ向けて進んでいた。


 そんな中、木々の隙間からついに王都の外壁が目に入ってきた。


「王都だ!」


 僕は懐かしくなって、つい声を漏らした。



 王都の外門の手前まで来たときに、ゴーン……ゴーン……ゴーン、と三回、鐘の音が聞こえた。

 朝日が昇ると王都各所に設置されている鐘がなる。


 久しぶりの王都に胸が踊った。

 実は王都に来ようと思えば来る機会はあったのだ。家の果樹園の果物の納入先に王都もあった。

 無理言って父達についていけば王都へ行くことはできただろう。


 だけどそれをしなかったのは、ソマリと会うのは成人になってからという思いが強かったからだ。

 王都へ来てしまうと、ソマリに会ってしまうかもしれない。偶然会わなくても僕が会いたくなってしまうかもしれない。

 僕は成人して、一人前の男になってから会おうと決めていた。


 だが、そんな思いとは裏腹に王都へ来てしまった僕なのだが、ウキウキしている自分が情けなく思った。



 白の鎧を着たリアム騎士団長が御者をしているため、門番はすぐに国王の馬車と気がつき門番総出で出迎えられた。


 いくら国王だからといっても素通りではない。誰が王都に入ったのか記録する必要があるからだ。

 王都から出たときより人数が増えていることに気がついた門番。


 門番は僕にタグプレートの提出を求めた。


 タグプレートは皆が持っている。冒険者だけではない。いわゆる身分証となる物なので、五歳~八歳くらいで親が子供のタグプレートを作るのだ。


 銅のタグプレートを提出し、門番が僕の名前と生年月日を記入していく。

「ハルカ……ですね。男……ですか」


 そこでオリバーが余計なことを言ったのだ。


「この御方は水の神ハル様だ」


「「えっ?」」

 タグプレートを確認しに来ていた二人の門番が、間抜けな声と顔を僕に向けた。

 普通の人なら冗談だろうと流すところだが、オリバーはこのアルステム国の国王である。

 それに、オリバーと水の神ハルとは関わりがあったのは皆が知っていることだ。


 そのためオリバーの言葉は真実と受け取られるのだった。


「そ、そういえば石像と似ている……こっ! これは水の神ハル様と知らずに失礼しました!」


 そう言った門番は数歩下がり深々と頭を下げた。

 えっ? 石像がなに? 門番が僕のタグプレートを持ったままだと気がつき、慌てて返しに来た。


「た、タグプレートでございます……」


 そんな門番とのやり取りをみたオリバーに口元を手で押さえて後ろを向いていた。


 ――――絶対笑っている! 僕で遊ばないでほしい!


 ラグドールに関しては口を押さえるどころか大口開けてゲラゲラ笑っていた。


「なるほど! それで、三剣の皆様でお迎えに行っていたわけですね!」


 国王が王都から出発して数日、門番達の間で国王は何処へ行ったのだろう? という話で盛り上がっていたそうだ。


 国王オリバー、ヨハン、ラグドール、リアム騎士団長が揃って王都外へ行くことなど一度もなかったのに、一体どこに行くのだろう? と…………。


「隣国をたった四人で攻め落としに行ったに違いない!」

「王都周辺の全野盗を掃除しにいったのさ!」

「王妃様とケンカして王都から出ていったのかも……」

 などの冗談めいた発言が飛んでいたらしい。


 しかしこの四人ならその冗談も実現できるかもしれない。小さな砦規模なら落としてしまいそうだ。


 …………あれ? 門番が気になることを言っていたけど、門番とのやり取りと、ラグドールのバカ笑いで忘れてしまった……。


 王都へ寄ったのは、一泊して一息つくためかと思ったがそうではないらしい。

 なにやら見せたいものがあるとのことだ。

 一体なんだろうか?


 王都に入る際、リアム騎士団長は鎧を脱いでいた。国王も馬車の中とはいえ一緒にいるので、目立たないようにするためらしい。


 そしてやってきたのはヨハン刀術道場の近くの広場だ。

 ヨハン道場に行くのかな? と思ったのだが、どうやら違うらしい。


 オリバーはマントを外し馬車から降りた。


「さぉ、ハル君おいで」


 僕はオリバーに促されるままついていった。

 そして僕の目の前にとんでもないモノがあった。


「なんじゃこりゃああああ!」


 僕は周りの目など忘れて叫んでしまった。それもそのはず、僕の前には噴水があり、その中央には僕の石像が立っていた。


「どうだい?」


「どうだいって……なんですかこれ!?」


「何って水の神ハルの石像だが?」


 僕ってことはわかります!


「あのデモンの起こした禁忌の後、みんなの意見も聞いた上で石像の設置が決定したのだよ。なんと言ってもアルステム国の英雄だからな」


 そういってウインクするオリバーだが、どこか嬉しそうなのは、きっと僕を驚かすのが成功してためだろう。






五月から毎日更新してきましたが、次話最終話となるため勝手ながら一日休みをいただきます。

土曜日アップ予定なので是非読みに来てくださいね♪

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