本音と偽り
倉庫を出たら、そこにはミランがいた。
「やりすぎじゃない?」
「どこから見ていた」
「見てない、聞いていた」
上げ足にしか聞こえないがスルーした。
「拷問は、殺しもしなければ生かしもしない物だ。まだぬるい方だよ」
お互いに、無愛想に会話をする。
「ねぇ、なんでこんな事するの?」
ミランは今の状況に耐えられず早速本題に入った。
「こんな事?拷問の事か、自分のためだ」
「自分のためって何」
「自分のためだ」
湊はそれ以上語ろうとはしなかった。
それでもミランは諦めなかった。
「どうしたら教えてくれるの」
「何をしても教えない」
湊はそのまま屋敷へ戻ろうとした。
その時ミランは浩正との会話を思い出していた。
『八年間の出来事を守りたかったのではないですか』
そして、ミランは質問を変えた。
「湊にとってここはどんなところ」
「……」
ミランの言葉に湊は足を止めた。
背中を向き合いミランはまた問いを投げる。
「湊にとってここは好き?」
「……」
湊は、ミランの問いに黙り込んだ。
「湊にとって――」
「俺にとって……俺にとってここは、生きる事を許してくれた場所だ」
ミランは、黙って聞いていた。
「何年も人を殺して、殺して、殺して。その時ケインが俺にもう人を殺さなくていいと言ってくれた。俺の唯一つの癒しがある居場所だ……いや、居場所だった」
なぜ過去形なのか、ミランは解っていた。
幸せで平和だった日常は崩れ、今湊自身が人を苦しめている。
湊が一番好きで大切だった場所が無くなる。
ミランは振り返り、湊を後ろから抱きしめた。
「大丈夫、湊の大好きな場所はまた元通りになる。完全じゃなくたとしても幸せを感じる場所にする。私が約束をしよう」
「そんなの無理だ」
「いつだって支えてあげる。いつだって側にいてあげる」
「所詮約束だ」
「その所詮約束を信じてみないか?」
「……」
だんだんミランは力が入る。
怖い、信じてほしい、といろいろな感情が混ざって力が入る。
「私を信じてはくれないか」
「……」
静かな時間が流れていく。
ミランの声は震えていた。
湊は、頷いた。
「分かった、信じてみる。でも今やっている事をやめる気はない、聞きたいことがたくさんあるから」
「……うん」
ミランは湊から離れる。
湊は振り向くことなく、屋敷へ戻る。
帰り道、湊は小声で
、
「……ごめん」
と、呟いた。




