掃除トラブル
リアムは一人、掃除をしていた。
廊下の掃除が終わり今は男の浴室を掃除していた。
ブラシで床をこすり、布を使い鏡や壁を拭く。
かなり広く、一人では大変だ。
だが、リアムは一人何もしていない気がして頑張ろうとしていた。
初めて来たときも部屋に閉じこもり、掃除も茜や時和に教えてもらっても足を引っ張ったり、昨日の夕飯も何もできなかった。
どこか罪悪感を持っていた。
誰から見てもリアムは頑張っているが、本人としては納得していないみたいだ。
今、自分にできる事を探して掃除をすることを決めた。
ブラシで床をこすっている時に足が滑り、腕や足をぶつけて青あざが出来る。
そこまで痛みもなく、掃除を再開した。
最後に床や壁の水滴を布でふき取る。
一つ大きく深呼吸をして、浴槽を出る。
この時間は、誰も入っていないはず。
そう思って、女の浴槽も掃除しようと思った。
誰もいないと思っても緊張している。
意を決して入る。
そこには誰もいない。
「よかった……」
肩を落とし更衣室の奥にある入浴場に向かう。
更衣室に一人分の服があったが、リアムは気付かなかった。
入浴場のドアを開ける。
湯気がドアから外へと逃げる。
リアムは、何故こんなに湯気が出ているのか一瞬では理解が出来なかった。
悩んでいると、目の前には茜が裸でお湯に浸かっていた。
「……」
「……」
お互いに状況を把握できていない。
リアムが先に状況を把握して、ゆっくり後ろを向いた。
続いて茜も状況を把握した。
茜は、顔を赤くさせ近くにあった桶をリアムに投げた。
リアムは、走ってドアまで行って急いで閉める。
間一髪桶はぶつからずに済んだ。
リアムがドアにもたれて息を整えていると、
「どうしたの」
と、声を掛けられる。
目の前には時和が掃除道具を持って立っていた。
リアムは時和にもびっくりして、振り返る。
同じタイミングにドアも開く。
そこにはタオル姿の茜が出てくる。
運の悪いことに、リアムの目の高さが茜の胸の位置だった。
茜がリアムの頬を抓ろうとする。
リアムはやられる前に時和の後ろに隠れた。
時和は今ある状況を察した。
「リアム隠れんじゃないわよ!て時和まで、二人ともいったん出て!」
茜は顔を赤くして二人を押し出す。
「押さなくても出るよ」
時和は笑いながら、リアムは時和に付いて入浴場を出た。
「リアムはなんでここに入っていたの?」
早速、時和はリアムに聞いた。
リアムは時和には事情を全部話した。
なぜ女性の浴室の入ったのか。
当番でもないのに、何故掃除をしているのか。
話している時、リアムは必死だった。
時和はその姿を見て、笑みを浮かべる。
「リアムはよく頑張ってると思うよ、責任感があることは大事だけどね」
励ますように声を掛ける。
時和は言葉をつなげた。
「リアムは茜と違って頑張り屋で僕としても助かるよ、ありがとう」
リアムは時和の笑顔がまぶしく見えた。
褒められることに慣れていないこともあり、頬を赤くしうつむいた。
「頑張る」
一言そう答えた。
時和はリアムのあざに気が付く。
「これどうしたの」
「さっき掃除していた時に滑って打った」
リアムも強がりたかったが、時和には正直に言ってしまった。
「そっか、じゃあここの掃除終わったら僕の部屋においでよ、医務室でもいいけどこっちのほうが気楽でいいでしょ」
リアムは無言でうなずいた。
扉が開き、そこには茜がいる。
その瞬間、リアムは時和に隠れる。
「何もしないから」
リアムの反応に茜もついつい反応してしまった。
「それで?なんでリアムと時和が入ってきてたの」
「掃除するため?」
時和が対応する。
「なんで『?』が付くの」
茜は呆れ気味に返す。
「んー、なんとなく」
「なんとなくって……」
茜は時和の返答に完全に呆れた。
「もう分かった、でも時和は今日昼食の当番でしょ」
「町まで行ってパン買ってそれを食べてもらうようにしてる。ダイニングルームに置いてるからお腹減ったらそこからとってね、みたいな感じ」
「そっか」
リアムが茜を見たり地面を見たりを繰り返していた。
その動きに茜も気づいていて、リアムから言葉がないので茜から声を掛ける。
「リアムどうしたのさっきから」
突然呼ばれてリアムは驚く。
そして、時和の前に出る。
「えっと……さっきはごめんなさい」
リアムは小声でもちゃんと言えた。
「いいよ、今回だけ許してあげる」
と、リアムの努力と勇気に免じて茜も笑顔で許してあげた。
時和と、リアムが掃除道具を持つ。
「頑張ってね、私はパンをもらいに行くよ」
と、茜はダイニングルームに向かって歩いて行った。




