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残酷な世界のいたずら。  作者: 紗厘
第三章 ~一難去って~
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掃除トラブル

 リアムは一人、掃除をしていた。

 廊下の掃除が終わり今は男の浴室を掃除していた。

 ブラシで床をこすり、布を使い鏡や壁を拭く。

 かなり広く、一人では大変だ。

 だが、リアムは一人何もしていない気がして頑張ろうとしていた。

 初めて来たときも部屋に閉じこもり、掃除も茜や時和に教えてもらっても足を引っ張ったり、昨日の夕飯も何もできなかった。

 どこか罪悪感を持っていた。

 誰から見てもリアムは頑張っているが、本人としては納得していないみたいだ。

 今、自分にできる事を探して掃除をすることを決めた。

 

 ブラシで床をこすっている時に足が滑り、腕や足をぶつけて青あざが出来る。

 そこまで痛みもなく、掃除を再開した。

 

 最後に床や壁の水滴を布でふき取る。

 一つ大きく深呼吸をして、浴槽を出る。


 この時間は、誰も入っていないはず。

 そう思って、女の浴槽も掃除しようと思った。


 誰もいないと思っても緊張している。

 意を決して入る。

 そこには誰もいない。


「よかった……」


 肩を落とし更衣室の奥にある入浴場に向かう。

 更衣室に一人分の服があったが、リアムは気付かなかった。


 入浴場のドアを開ける。

 湯気がドアから外へと逃げる。

 リアムは、何故こんなに湯気が出ているのか一瞬では理解が出来なかった。

 悩んでいると、目の前には茜が裸でお湯に浸かっていた。


「……」


「……」


 お互いに状況を把握できていない。

 リアムが先に状況を把握して、ゆっくり後ろを向いた。

 続いて茜も状況を把握した。

 茜は、顔を赤くさせ近くにあった桶をリアムに投げた。

 リアムは、走ってドアまで行って急いで閉める。

 間一髪桶はぶつからずに済んだ。

 リアムがドアにもたれて息を整えていると、


「どうしたの」


 と、声を掛けられる。

 目の前には時和が掃除道具を持って立っていた。

 リアムは時和にもびっくりして、振り返る。

 同じタイミングにドアも開く。

 そこにはタオル姿の茜が出てくる。

 運の悪いことに、リアムの目の高さが茜の胸の位置だった。

 茜がリアムの頬を抓ろうとする。

 リアムはやられる前に時和の後ろに隠れた。

 時和は今ある状況を察した。


「リアム隠れんじゃないわよ!て時和まで、二人ともいったん出て!」


 茜は顔を赤くして二人を押し出す。


「押さなくても出るよ」


 時和は笑いながら、リアムは時和に付いて入浴場を出た。

 

「リアムはなんでここに入っていたの?」


 早速、時和はリアムに聞いた。

 リアムは時和には事情を全部話した。

 なぜ女性の浴室の入ったのか。

 当番でもないのに、何故掃除をしているのか。

 話している時、リアムは必死だった。

 時和はその姿を見て、笑みを浮かべる。


「リアムはよく頑張ってると思うよ、責任感があることは大事だけどね」


 励ますように声を掛ける。

 時和は言葉をつなげた。


「リアムは茜と違って頑張り屋で僕としても助かるよ、ありがとう」


 リアムは時和の笑顔がまぶしく見えた。

 褒められることに慣れていないこともあり、頬を赤くしうつむいた。


「頑張る」


 一言そう答えた。

 

 時和はリアムのあざに気が付く。


「これどうしたの」


「さっき掃除していた時に滑って打った」


 リアムも強がりたかったが、時和には正直に言ってしまった。


「そっか、じゃあここの掃除終わったら僕の部屋においでよ、医務室でもいいけどこっちのほうが気楽でいいでしょ」


 リアムは無言でうなずいた。

 

 扉が開き、そこには茜がいる。

 その瞬間、リアムは時和に隠れる。


「何もしないから」


 リアムの反応に茜もついつい反応してしまった。


「それで?なんでリアムと時和が入ってきてたの」


「掃除するため?」


 時和が対応する。


「なんで『?』が付くの」


 茜は呆れ気味に返す。


「んー、なんとなく」


「なんとなくって……」


茜は時和の返答に完全に呆れた。


「もう分かった、でも時和は今日昼食の当番でしょ」


「町まで行ってパン買ってそれを食べてもらうようにしてる。ダイニングルームに置いてるからお腹減ったらそこからとってね、みたいな感じ」


「そっか」


 リアムが茜を見たり地面を見たりを繰り返していた。

その動きに茜も気づいていて、リアムから言葉がないので茜から声を掛ける。


「リアムどうしたのさっきから」


 突然呼ばれてリアムは驚く。

 そして、時和の前に出る。


「えっと……さっきはごめんなさい」


 リアムは小声でもちゃんと言えた。


「いいよ、今回だけ許してあげる」


 と、リアムの努力と勇気に免じて茜も笑顔で許してあげた。

 時和と、リアムが掃除道具を持つ。


「頑張ってね、私はパンをもらいに行くよ」


 と、茜はダイニングルームに向かって歩いて行った。

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