表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘やかされた妹に姉は限界だった。  作者: 鈴木べにこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/13

8.姉の愛は

 乾いた風が、砂塵を巻き上げる。


 空はどこまでも白く濁り、陽は焼けつくように肌を刺す。


 ――そこは、かつて公爵令嬢として何不自由なく暮らしていたミレーにとって、あまりにも過酷すぎる場所だった。


 


「・・・は、ぁ・・・っ。」


 


 荒れた呼吸。


 ひび割れた唇。


 かつて絹のように手入れされていた髪は、今や埃と汗で絡まり、見る影もない。


 


「遅いぞ!」


 


 怒号が飛ぶ。


 振り向く間もなく、背に鞭が打ち込まれた。


 


「きゃあっ!」


 


 鋭い痛みが走り、ミレーはその場に崩れ落ちた。


 


「立て!ここは遊び場じゃねぇ!」


 


 監督役の男は容赦がない。


 周囲では同じように働かされている者たちが、ちらりとこちらを見るが、すぐに視線を逸らす。


 誰も助けない。


 いや、助ける理由などない。


 


「(どうして・・・どうしてこんな・・・っ!)」


 


 涙が滲む。


 ここは、罪人が送られる辺境の強制労働地。


 貴族も平民も関係ない。


 ただ「罪を犯した者」として扱われる場所。



「(あと20年・・・こんな場所に・・・?)」



 ミレーは未だに、現実を受け入れきれていなかった。

 


「立てって言ってんだろ!」


 


 監督役の男から再び鞭が振り上げられる。



「や、やめっ!」


 

 反射的に身を縮めた、その瞬間。


 

「やめろ!!」


 

 別の声が割って入った。


 荒々しく息を切らしながら駆け寄ってきたのは、アレックスだった。



「そのくらいにしてやれ!そいつはっ!」


「はぁ?」



 監督役の男は鼻で笑う。



「そいつは何だ?元貴族様か?」



 嘲るような視線。


 

「ここじゃ関係ねぇんだよ!!」



 次の瞬間。


 バシッ、と鈍い音が響いた。



「ぐっ・・・!」


 

 打たれたのは、アレックスの方だった。



「余計な口出しする奴は、同罪だ」



 容赦のない一撃。


 アレックスは膝をつき、歯を食いしばる。



「・・・っ!」



 ミレーはその光景を呆然と見ていた。


 アレックスが助けてくれた。

  

 でもーー



「(・・・・・こんな形は望んでない。)」



 助けてくれたのに嬉しくなかった。


 かつて自分を甘やかし、求めてきた男が、泥にまみれて打たれている。


 それが、こんなにも惨めに見えるなんて。



「立て。」



 冷たい声。


 ミレーは震えながら立ち上がる。


 足がうまく動かない。


 それでも、動かないと――また打たれる。


 


 作業は、日が沈むまで続いた。


 重い石を運び、土を掘り、ただひたすらに働かされる。




 休憩はほとんどない。


 水もわずか。


 


 その夜。


 与えられるのは粗末なパンと、薄いスープ。


 かつて口にしていた豪華な食事とは比べるまでもない。


 

「・・・こんなの、食べられないっ!」


 

 思わず漏らした言葉に、周囲の視線が突き刺さる。


 

「食べないなら寄越せ。」



 次の瞬間、手元のパンが反対側の席に座る男に奪われた。


 

「なっ!!?」



 抗議しようと口を開いた瞬間、周囲の冷たい目に、言葉が詰まる。



「ここじゃな、食わねぇ奴が悪いんだ!」


 

 吐き捨てるように言われる。


 誰も味方はいない。


 それが、現実だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ