0-3「マリー王女side」
王女と東の英雄が婚約してからおよそ3か月。結婚式まで残り3週間。
王女は大変気が立っていた。
(ああ!私は西の英雄さまと結婚したかったのに!!お父様のバカッ。)
王女は自室のベッドを、勢いに任せて蹴り上げる。
「うっ」
運悪く、ベッドの足に当たってしまったようだ。
とても痛かったが、大人が3人寝ても余りあるほど大きいベットを蹴ったところで、物音が鳴るはずもなく、誰も様子を見に来る気配はない。
だからと言って、わざわざ使用人を呼ぶのも何だか癪なので、王女は一人で痛みに悶えた。
(どうにかして、東の英雄との結婚を回避出来ないかしら。)
実は、王女の初恋は、西の英雄だった。
2人の出会いは、王女がまだ8歳だったとき。
彼は、伯爵家の次男として王女の前に現れた。
そのときの彼は、すでに顔が整っていたのだが、一目ぼれではない。
王女はその性格から、使用人や貴族の間で、愚痴という名の悪口が飛び交っていた。
王女は聞かないふりを続けていたが、少し気がめいってしまっていたのは、事実である。
そんなある日、それを否定してくれたのが彼だった。
彼としてはただ、勤務中に王族の陰口を言う使用人の態度が目についただけで、王女をかばう気は全くなかったのだが、それでも王女は心が救われたのだ。
社交界に出られるようになってからは、彼と接する機会も増え、だんだんと、彼の誠実さに引かれていった。
王女が西の英雄に引かれていることは、誰の目にも明らかだったし、国王もそれを分かってくれているはずだった。
しかし、国王は娘の幸せよりも、東の国を篭絡することの方が大事だったようだ。
父親に裏切られた王女は、自分から行動することにした。
(そうだわ!東の英雄が行方不明になってしまえばいいのよ!!)
普段は、我儘は言えども、頭は回る方なのだが、その時は結婚までの猶予がないことで焦っていたのだろう。
王女は相談先を間違えてしまったようだ。
その相談相手に言ったのはたった一言。
「東の英雄を私の前から消しなさい。」




