1-6「回想(西side)」
『へえ。お前にそんな大層なあだ名がついていたとは。世の中分からないものだな。』
そう言って、隣のヤツの方を向く。
ヤツは魔物の肉にかぶりついているのだが、中々噛み切れないらしく、先ほどからずっと口にくわえたまま・・・・・・何といえばいいのだろうか。ハムハムしている?
そもそも、魔物の肉には筋があり、クセもあるので食用には適していないのだ。
怪物退治の旅に出て、自給自足の野宿をする羽目にならなければ、一生食すことはなかったであろう代物である。
『ふぉおふぁな(そうかな)?』
『おい。口にくわえまま喋るな。』
『ん゛ん、俺、顔は母さん似らしいからねえ。母さん、昔は娼館の人気ナンバーワンだったらしくて。俺も一時期そこで働かせて貰ってたんだけど、なぜか人気が出ちゃったんだよね。裏方だったのに。そん時ついたあだ名だから派手なんだよ。』
『お前、顔だけは良いからな。』
『だけってねえ!この間、魔物の攻撃からあんたを守ったのが誰か、忘れちゃったわけ?』
『あれくらい、オレだけでもどうにかなったが?』
もう一口、魔物の肉を食べる。
独特な獣の臭いがして、やはり食べられたものではない。
いつもは食用として、うさぎや鳥を捕るのだが、なんせ魔物の急増に伴い、動物の数が減ってしまっているのだ。
「腹が減っては戦ができぬ」らしいからな。
実際、食事も睡眠もままならない状態で魔物と遭遇した時は、死にかけた。
魔物だろうが何だろうが、食えるものは食っておくに越したことはない。
これは旅に出てから得た教訓だ。
それまでは、衣食住に困ることとは無縁だったから。
最近になって先人の教えのありがたみに気が付くようになった。
『はいはい、そういうことにしておきますよ~。』
『オレは寝る。見張りを交代するときは起こしてくれ。』
『えっ、ちょっとーーーーーー。』
◇◇◆◇◇
「エータくん?どうしたの、ぼーっとしちゃって。」
「あ?モルか。いや、すまない。それで何の話だっけ?」
「イータちゃんてかわいいよねって話だよ。ホントに大丈夫?保健室行く?」
「いや、結構だ。」
「それならいいけど。・・・・・・そうだ!せっかく同じ班になったんだし、親睦を深めようということで。放課後、一緒にクラブ見学行かない?」
「構わないが、どこか行きたい所はあるのか?」
「まずはやっぱり、剣術クラブかな。有名だし。だけど、魔導工学クラブも捨てがたい・・・・・。」
「おーい。みんな席に着いて。ホームルーム始めるわよー。」
ガラガラと扉を開けて、担任の先生が入ってくる。
そのため、話はいったん中止となった。




