1-7「東とマヤ(東side)」
西と別れてからマヤちゃんを探したけれど、なぜだか一向に見つかる気配がない。
どこへ行っちゃったんだろう?
クラスの子に聞いてもみんな知らないっていうし。
マヤちゃんは、ホームルームや授業の時はちゃんと席にいるのだけど、それが終わると、話しかける間もなくどこかへ行ってしまう。
だから、この昼休みこそ、どうにか見つけだしたい。
いや、別に用事があるわけではないし、わざわざ見つけ出してまで何を話すのかと言われれば、何もないというのが本音なんだけど。
こんなに探しても見つからないというのは、相当なことだよね。
もうここまで来たら、見つけるしかないでしょう!と意気込んで、取り合えず校舎内をぶらぶら歩いているのだ。
こうやって見渡してみると、さすが歴史ある伝統校。
新品のきれいさはないけれど、年季の入った建物は人の温かみが感じられるし、設備も充実している。
前世の価値観で言えば、お貴族サマが通っていそうな雰囲気だ。
実際のところ、昔は貴族の子息のための学校だったようだけれど。
校舎を新しくするにあたって不要になったこの旧校舎を、初代校長先生が買い取って、一般生徒を募集したのがこの高校の始まりらしい。
ちなみに、もともとあった貴族のための学校は王都の方へ移転したが、時代の渦に呑まれて、なくなってしまったという。
そういえば、前世で俺が通った学校は残っているのだろうか?
・・・・・・さすがに無いか。もう、数百年も昔のことだ。
悠久の時が流れてしまう前に、1度くらい見ておくべきだったかな。
今更そんなことを考えたところで、後の祭りでしかないんだけどさ。
う~ん。あのまま毒殺されて死ぬのは絶対にイヤだったんだけど、だからと言って神になる必要はあったのかな?
今のところ、無駄な時間しか過ごしていないんだよね。
人生というのは、タイムリミットがあると分かっているからこそ頑張れるし、何かを成し遂げたいと思えるのかもしれない。
人間のころは、自分の成長に一喜一憂できていたのだけど、神になってからは、大抵のことを「ふ~ん。」だけで終わらせていた。
これは今、また人としての人生を歩めているからこそ感じられたことだ。
こうやって、どうでもいいようなことに真剣に取り組める機会を貰えたことに関してだけは、愛の神さまに感謝してもいいかもしれない。
「あ、あの!そっちは、入っちゃ、ダメです。」
声のした方を振り返ると、丸眼鏡に、少々くせっ毛気味の髪が特徴の女の子ーーーーーーマヤちゃんがいた。
「マヤちゃん!?」
「は、はい。マヤでひゅ! う、舌噛んじゃった・・・・・・。あの、えっと、そっちの裏庭には、今の時期は蛾がいるから、入るとかぶれちゃうかも、しれない、です。」
ぼーっと歩いていたせいで、いつの間にか裏庭の方まで来てしまっていたようだ。
そういえば、担任の先生からも、5月一杯までは極力裏庭に入らないように言われているんだった。
マヤちゃんが声をかけてくれなければ、このまま突っ込んで行ってしまっていたかもしれない。
危ない危ない。本当に助かった。
「そうだったね。うっかりしていたみたい。教えてくれてありがとう!」
「そ、そんなことは、ないです。」
「ううん。助かったよ!ありがとう。ところで、マヤちゃんはどうしてここに?」
マヤちゃんは顔を真っ赤にして、黙ってしまう。
薄々思っていたことだが、このマヤという人物は、かなりの照れ屋のようだ。
十分な間をおいてから、口を開く。
「え、えと、その。誰にも言わないでもらえますか?」
「いいよ。(たぶん)」
さすがに、こっそり薬やってました的なヤバい案件だったら、報告するかもしれない。
まあ、高校に次席合格したほど優秀なマヤちゃんのことだから、そんなことはありえないんだけどさ。
「実は・・・・・・。」




