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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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ダンジョンブレイク

 朝。11歳の少女は飼っている柴犬、タローを公園で散歩させていた。

 リードを片手に、ふと、ポケットに突っ込んだスマホを取り出して操作する。

 歩きスマホだ。

 友達とのメッセージなどを確認していると――スマホが、ヴウウウ!!! と、震動と共に大きな警報音が鳴った。


「わっ!? な、なに? ダンジョンブレイク警報……?」


 街中のスピーカーからも同じ警報が流れ、空気が一変する。

 その爆音に驚いたタローは、ビクリと跳ね、次の瞬間――。


「あっ!」


 少女の手からリードがすり抜けた。

 タローはパニックになり、全力で駆け出す。


「まって! まってよ、タロー!」


 少女はタローを追いかけ、走り出す。

 しかし柴犬の全力疾走に追いつけず、やがてその姿を見失った。





 モンスターが徐々に外へ解き放たれる、未曾有の大災害“ダンジョンブレイク”は、日本では過去に2回観測されている。

 国内での死者・行方不明は1回目が90名。2回目が57名となった。

 しかしこれはかなり少ない方だ。

 海外でひどいものだと、死者が推定11000人を超えた例がある。

 よってこのダンジョンブレイクの前兆が現れた瞬間、国を挙げての対応が求められた。


「――みなさん、お疲れ様です。緊急事態です。今朝の報道や警報が鳴った通り、昨日7時55分にて、都内でダンジョンブレイクのフェーズ1が観測されました」


 15時にて、緊急のギルドマスター会議が開かれた。

 理事長が緊迫とした声で、現状把握のシェアに務める。

 ダンジョンブレイク、フェーズ1。

 この段階では、空間に“大きな歪み”が生じる。

 ダンジョンブレイクの厄介なところでは、この段階ではまだ、攻略などの対処が不可能なこと。

 中に入ることはできないのだ。

 よってフェーズ1の段階では、近隣住民の避難が勧告される。


「そして本日14時26分にて、ダンジョンブレイクフェーズ2へ移行。事態は前例と比べ、かなり早い進行となっています」


 フェーズ2は歪みから大質量の魔力が解き放たれ、周囲へ“結界”が張られる。

 そして“結界”の中に空間の歪みからモンスターが解き放たれるという流れだ。

 フェーズ3へ移行すると、モンスター達が外の環境に適応。

 “結界”が解除され、外部へ解き放たれる災厄となる。

 よってダンジョンブレイクは、フェーズ2の段階で対応を迫られる。

 結界の中へ侵入する手段はあり、それを使って中のモンスターを殲滅。

 そしてボスを撃破することによって、空間の歪みを消滅させることができる。

 例えるなら、フェーズ2は結界によって街中がダンジョンになるイメージだ。


「今回のフェーズ2の結界規模は約10キロメートル。現在、自衛隊と連携して防衛作戦の指令が決行されています」


 プロジェクターにてマップが表示され、作戦の内容が発表される。

 エリアを7つに分けて、自衛隊が保有する魔石稼働の大型飛空艇へ冒険者が乗り込み、隊員と共に潜入。

 そこから大規模なモンスター殲滅作戦へ移行するという段取りだ。


「我々職員もフェーズ2近くに臨時指令室を作り、みなさんの作戦をサポートします。また、各員へAI搭載の高性能ドローンを支給しますので、戦闘の映像を随時記録していこうと考えております」


 ふむ、と貞雄がうなずく。


「これはちょうどいい。今回の戦闘記録によるエビデンスが、総選挙の結果を左右する、ということですね」


「結果的に、影響はゼロとは言えないと思われます」


 理事長がそんなことを言う。

 青宮はため息をついた。

 どうしてこう、全てが運の悪い方向へと進むのだろうか。


(すごいタイミングで起きる偶然だよな……ダンジョンブレイクを操れる神が、四之宮派にはいるのか?)


 このダンジョンブレイクは、四之宮派の汚名返上をする良い機会だ。

 対して獅子山派は、ここでしっかりと活躍しなければ、力を示すことが出来ない。


「では、具体的な配置を発表します」


 おおよそだが、各エリアに2つのギルドが配属される形だ。

 エリア7にて、青宮率いる“スマイル・アドベンチャー”そしてもう1つが、風間 迅という三十代前半、金髪でチャラい男率いる“バズり☆シーカーズ”だ。彼らはティッ○トックで配信などを積極的に行っているギルドであった。

 幕章にて、モーダメを使用する退職者が現れた、あのギルドである。

 派閥は“中立”。ちょうど右隣りの席に座っていて、風間が影山へ声をかけた。


「いや~、有名人と組めるなんて光栄だ! あとで写真を撮ってくれるかな? さっそくフォロワーさんに、青宮 翼と同じエリアであることを○イートしないと! これはバズるぞ!」


「断ります」


 四之宮派が個性的かと思われたが、中立派も香ばしいようだ。


「……また、今回の作戦は契約書の通り、ギルドマスターには参加義務があります。ですがギルドメンバーに関しては、参加が自由となっております」


 理事長の話をまとめると、参加にあたってのメリットや条件はこうだ。


1、参加条件はLV30以上

2、報酬は1人につき日給10万円を最低保証

3、成果に応じて、追加報酬を検討する


 ブラックなので、報酬が少ないのはお約束である。

 そして検討するということは、検討しないということだ。


「なにか質問はありますか?」


 理事長の言葉に、ギルドマスター達は沈黙する。


「防衛作戦に失敗すれば、海外で確認されているような、何千……いえ、下手をすれば数万という人が死ぬ大災害となります。日本の命運がみなさんへ託されたと言っても、過言ではありません。どうか、よろしくお願いします」


 深く頭を下げた後、会議を締めくくった。


「――それでは、緊急のギルドマスター会議を終了します。みなさん、ご武運を祈ります」

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