発進
ギルドへと戻り、対象者となるメンバーへメッセージを送る。
12時のギルドへ集合したのは樹、乾、白井、荒木の4人だ。
先輩達は不参加となり、職員である姫咲はここへ残ることとなる。
「ダンジョンブレイクは海外の件もふくめ、死者0というケースがない。だから、みんなには改めて聞く。本当に参加でいいんだな?」
一同はそれでも揺るがず、樹がこくりとうなずいた。
「青宮くんを1人でいかせられないからね!」
「ありがとう。助かるよ」
青宮がギルドマスター会議で聞いた作戦内容を伝え、最後にみんなへ言う。
「追加報酬のことは意識せず、生存を最優先して動いてくれ。ダンジョンブレイクは敵のレベルがどこまでいくかわからない。危険を感じたらすぐに下がるんだ」
ダンジョン攻略に慣れている冒険者ですら、毎回死者が出る。
ダンジョンブレイクはそれほどまでの災害だ。
緊迫とした雰囲気がメンバー間へ駆けめぐった。
「……リーダー。協会へのアピールはいいのですか?」
荒木が質問をしてくる。
今回の戦いが後継者争いに影響を及ぼすことを、指摘してきたのだろう。
樹達も青宮の意見を待つ。
青宮は首を縦に振った。
「協会のいざこざよりも、生存優先だ。それに、貢献度に関してはおそらく、ボスの撃破でほぼ決まってくる。戦場の状況によるが、作戦では原則、ボス撃破はギルドマスターが担当する予定だ」
「えっ。そんな……」
樹がショックを受ける。
このメンバーの中で、参加資格があるのは青宮のみということだ。
「どっち道俺は新人だから、参加メンバーになる確率は低いだろう。だから俺達は、自分達で出来るところを、出来る範囲でがんばろう」
((((絶対に選ばれると思うけど……))))
樹達の誰もが思ったが、あえて突っ込まなかった。
☆
ギルドを出て、協会が提供した大型送迎車に乗り、最寄りの空港へと移動。
空港は急遽全便が中断となり、自衛隊が保有する飛空艇が7台発着場に停まっている。
魔石を使った最新鋭の“魔道兵器”はRPGで出てくるような、近未来的な見た目であった。
灰色の金属版による重厚感のあるフォルム。翼はなく、SF映画に出て来そうな、幾重もの機構が織りなす、巨大な大砲が浮かんでいるような、メカニカルなシルエット。
船体の後部には、魔力を噴出するための推進筒が取り付けられている。
無骨な銀色の金属壁。白いライトが規則正しく並び、油と魔力の混じった熱気が流れ出てくる。
すでにアサルトライフルの見た目をした、対モンスター用の魔道銃を装備した隊員や、先着の冒険者たちが乗り込んでいた。
「おい! お前ら、所属は?」
銃を持った自衛隊の隊員が荒々しい声を上げる。
青宮がライセンスカードを見せた。
「スマイル・アドベンチャーです」
「ちっ、どいつもこいつもふざけた名前にしやがって。お前らは7番だ! 早く乗れ! 走れ! モタモタするな!」
隊員はロクにカードも確認せず、怒鳴り散らしてきた。
青宮達は言われるがまま走る。
樹はむうう、と声を上げた。
「嫌な感じ……」
「歓迎されてないのかもな」
「なんで? まさか、手柄とかじゃないよね?」
「俺の予測はシンプルに、イメージが悪くて、気に入らない説だ」
「え?」
「俺達はリークされた組織の人間だ。そんな胡散臭いやつらに、背中を預けようとは思えないのかもしれない」
「……」
樹はなにも言い返せなくなった。
「俺達が悪いわけじゃないが。組織が社会を裏切るっていうのは、そういうことだ。この防衛作戦で成果を残して、社会的信頼を回復したいところだな」
格納庫に入ると、スピーカーから厳粛な声が響く。
『――7番隊、参加メンバーの確認を完了した。ハッチを閉じる』
ガガガガガ、と金属が軋む音。
扉が、上から下へと降りて閉じていく。
外光が遮断され、格納庫は白いライトだけの世界へ。
艦内には100人以上の自衛隊の隊員がいて、これから大規模な戦闘が始まることを意識させられる。
続いて、凄まじいエンジン音が船体を震わせた。
6台の飛空艇が次々と離陸し、最後に青宮たちの乗る7番艇が浮上する。
『7番隊、これより発進する!』
重力が一瞬だけ身体を押しつけ、すぐにふわりと浮く感覚に変わる。
艦長の声がスピーカーから響いた。
『私は艦長の猿渡大佐だ。直接挨拶できず申し訳ない。スマイル・アドベンチャー、バズり☆シーカーズの参加に感謝する。あなた方を必ずポイント7へ送り届けよう』
緊急事態ゆえ、上官と顔を合わせる余裕もない。
軍事機密の塊である艦内に、冒険者が入れるのは格納庫までだ。
と、その瞬間。
「よーし、発進記念に1枚撮っとくか!」
風間がスマホを取り出し、自撮りを始めようとした。
「おい貴様! 艦内で携帯を出すな!」
当然、隊員が怒鳴りつける。
「え~、ダメなの?」
「当たり前だ! ここは最新鋭の魔道兵器だぞ! まったく、これだから冒険者は信用ならん!!!」
風間はぽかんとした顔で固まる。
(アホすぎる……同業者なのが恥ずかしい……)
青宮は本気で頭を抱えた。




