開戦
「――特にそこにいる貴様! コイツが一番気に入らん!」
風間へ注意した隊員が、その勢いのままに青宮のところへ。
隊員はまだ20代前半ぐらいの男だ。
「“斧使いの王子様”なんて気持ちの悪い名前を名乗りやがって! 女の人気を集めて、楽して金を儲けるような奴が防衛を背負うだなんて、日本は終わっている!」
「いや、それは運営が勝手に決めたリングネームなんだけど」
「こっちは毎日キツい訓練して、本気で国を守ろうとしているんだ! なぜ貴様らのような奴が同じ戦場に立てる!?」
早口と大声でまくしたてる隊員を、めんどくさいと思った。
と、ここで30代前半ぐらいの他の男の隊員が、興奮した隊員をなんとかなだめながら下げた。
彼は興奮した隊員を遠ざけ、他の隊員に引き渡した後、青宮のところへ来て頭を下げる。
「ウチの隊員がすいませんでした。真面目というか、頭の硬いやつでな……本当にすまない」
「それはいいのですが……自衛隊は不満がある、という印象になったな。ここへ来る時も、感じの悪い隊員がいた。お互い、別行動でも良かったかもな」
青宮が皮肉をぶつける。
自衛隊は立派な勤めをしていると考えているが、ここまで敵意を向けられるとなると、話は変わってきた。
こちらとしても馴れ合うつもりがなくなってくる。
ただ、風間のような奴がいることも事実なので、そこは頭が痛いが。
「……そうだな。同じように、冒険者を嫌悪している隊員がいることは、否定しない」
「なら、敵でもなければ、味方でもない。好きにやらせてもらうぞ」
「不快にさせたことは詫びる。これからお互いに命を懸け合うのだ。どうか、よろしく頼む」
隊員は右手を差し出してくる。
あまり良い気分ではないが、無碍には出来ない。
青宮は握手に応じた。
「でも、意志は統一できていないようなので、信用はしないですよ」
「うむ。それで十分だ」
隊員が戻っていく。
やり取りを聞いていた他の隊員が「なんだその態度は! ふざけんな!」と怒鳴り声を上げたが、他の隊員になだめられる。
おそらくだが、そもそも冒険者協会と自衛隊の仲はあまり良くないのだろう。
リーク騒動が原因だと思ったが、根強い険悪さを感じた。
「なんでこう、社会っていうのはこうなるんだろうね……」
乾が悲しそうに呟く。
青宮は肩をすくめた。
そしてスピーカーから、艦内に艦長の声が響く。
『まもなく結界の突入フェーズへ移行する。一同、巨大モニターへ注目してくれ』
格納庫の壁、その上部に設置された巨大モニターに映像が映る。
そこには、都市の中にドス黒い、ドーム状の巨大な結界が張られていた。
飛空艇の先端に、大量の魔石によって作られた、金色の魔力による“槍”が形成。
これから結界を破り、中へ突入することとなる。
そして結界は破壊されてもすぐ自動回復する性質だ。
飛空艇がどんどん結界へ近づいていく。
『総員、衝撃に備えろ!』
ズドォォォォォ!!! という大きな音と共に、魔力をまとった飛空艇が結界へ突撃。
艦内が大きく、ドスンと揺れた。
結界が前進を阻むように、飛空艇を一時的に止める。
しかし光の魔力が結界を貫き、飛空艇は結界の中へと侵入。
モニターに映った映像に、ざわめきが生じた。
「な、なんだこの量は……!?」
「これがダンジョンブレイク……!」
多くの者が震えあがる。
都市の中は、モンスターに溢れていた。
狼、ヘビ、空を飛ぶワイバーンなど、多種にわたる。
艦内は緊迫とした空気に包まれた。
「いよいよ始まるね」
樹の言葉に、青宮はうなずいた。
「みんな死ぬなよ」
メンバー全員へ告げる。みんなはこくりとうなずいた。
『まもなく、ポイント7へ到着! 一同、戦闘準備!』
飛空艇はポイント7へ到着。広い一本道の道路の中に着地し、ハッチを開いた。
「総員、出撃!」
自衛隊の隊員が声を上げ、ステータス補正のある動きで素早く外へ飛び出していく。
青宮達もハッチから出た。
「「「グオォォォォォ!!!」」」
大量のモンスター達が、威嚇するかのように、地面をも揺るがすような咆哮を一斉に上げる。
青宮はアイテムボックスからドローンを飛ばしつつ、耳につけたイヤホンマイクで、本部へ告げた。
「スマイル・アドベンチャー、ポイント7へ到着。作戦行動を開始します」
『――了解です。スマイル・アドベンチャー、戦闘開始の確認をしました。どうかご無事で』
男性オペレーターの声を聴きつつ、外へ出た青宮達は武器を構える。
青宮はベルセルクを発動させ、青い炎を身に纏いながら、宣言した。
「よし。いくぞ!」




