フェミ旅団&ノヴァ・フロンティア
同時刻。樹と白井は猪塚率いる“フェミ旅団”と合同ダンジョン攻略に参加していた。
フェミ旅団の4人が樹と白井を迎え入れたのだが、やはり4人共女性である。
しかも樹と白井の年齢を考慮してか、若いメンバーばかりであった。
制限時間のある第四層を舞台にしていたので、当初は緊張感のある狩りをしていた。
しかしそれが終わり、17時頃に第三層へ戻ると――。
「あはは、なにそれ~。ウケる~!」
休憩するのに適した、モンスターがいないエリアとはいえ――床に座り、女子達が雑談に花を咲かせていた。
最近見た可愛いコスメだとか。流行のファッションだとか。かっこいいアイドルだとか。
そんな、いかにも“女子”な会話をしている。
参加メンバーなので、樹と白井も相槌を打って、なんとなく愛想笑いを浮かべているが、内心で同じことを思っていた。
((女子大のノリだなぁ……))
アーツファイトの件もあって、ここ最近ずっと張り詰めていたので、久々の感覚ではあった。
20代前半の女性ばかりなので、こうなるのは自然といえば自然だが、樹も白井も陽キャというわけではないのか、人見知りを発動していた。
そしてこっそりと、話をする。
「ねえ、白井さん。なんだかこれって、フェミニストって感じじゃないよね……?」
「私も、それを思ってた……」
樹の言葉に、白井が同意する。
年相応の女の子だが、“女性冒険者の進出”という気合が入っているようには思えない。
少し気になったので、樹は聞いてみた。
「ねえ、みんなって、ギルドマスターみたいに女性冒険者がもっと前へ出られるように、とか。そういう考えでここに入ったの?」
んー、と4人共首を傾げる。
「べつにー」
「なんとなく~」
「てか、勝手にここへふられただけ~」
「オバ……リーダーが勝手にフェミフェミ言っているだけ~」
「てか、あの人って○イフェミだよねー! 可愛いアニメとかVチューバ―に噛みつくのムカつく~!」
「それな~」
「老害だよね~」
「あー! 言っちゃったー!」
なんて、キャッキャッして盛り上がる。
「そんなことより、そちらさんのリーダーって、かっこいいよね~」
「えぇっ」
樹が変な声を上げる。
女子達はずい、と身を乗り上げた。
「青宮 翼って、フリーなのー?」
「樹さん絶対狙っているでしょ~」
「試合後に映ってた人も、青宮さん狙い?」
「でも、わかる~! あんなかっこよくて頼もしい人いたら、惚れちゃう~!」
(え、えぇ~~~……?)
SNSで女子人気があることは知っていたが、まさかここまでだとは思わなかった。
樹が内心で、面白くない感情が芽生える。
そしてその感情を煽るかのように、女子達がさらに言った。
「アーツファイトで有名になると、色んな女が寄るからね~」
「そうそう!」
「有名になるとね~。モテちゃうからね~」
うっ、と樹は声を上げる。
有名=女が寄る、はたしかにあらゆる業界で言えることだ。
実は漆黒魔竜ノ組のギルドマスター、轟 悪魔もアーツファイトで有名になってから、色んな女が寄り、女癖が悪かったという。
あんなガラの悪い男ですらモテるのだから、知名度と金というのは、異性をメロつかせる重要な要素のようだ。
(でも青宮くん、どんなにモテても距離を置かれちゃうんだよね……)
元彼女とひどい別れ方をしたのは、樹も話には聞いた。
だけど……こんなにも多くの女性に好かれたら、さすがにそれは変わってくるのではないだろうか。
言葉数が少なくなる樹に、関係がなにも進んでいないことを察した女子達が、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
「こうなったら、私がお持ち帰りしちゃおうかな~」
「青宮くんって、おっぱい大きいの好きかな~?」
「いけないんだ~! 横取りしようとしてる~!」
「え~? ちょっと遊ぼうとしてるだけだよ~!」
「――っ!?!?!? だだだ、ダメだよ、そんなの!」
勝手に盛り上がる女子達へ向けて、樹は思わず叫んだ。
白井は苦笑いを浮かべて、その様子を眺めていた。
☆
獅子山率いる“ノヴァ・フロンティア”の合同ダンジョン攻略に参加したのは、先輩達のリーダーと乾の2人だ。
場所は第三階層。
獅子山は戦闘に参加せず、男女半々メンバーの4人に戦いを任せていた。
乾と先輩達のリーダーも前衛で、なんとか貢献をする。
そしてその感想は――共通していた。
((ホワイトだなぁ……))
休憩時間が多く、戦闘は効率重視。
獅子山が後ろから見ているだけではなく、その都度戦闘の反省点などを口出ししているのが、特徴的だ。
やや適正より上振れている、高レベルの良い火力要因がいるので、戦闘時間は長引かない……など、工夫が多い。
絶対に時間内に終わらせる、というホワイト企業魂がそこにあった。
ダンジョン内で休憩していると、獅子山が2人へ声をかける。
「さて。今日はどうだったかな?」
「勉強になりましたよ。効率重視なんですね」
「そうだな。今回君達が参加したのは、ノルマ達成用のパーティーだ」
「えっ。目的別で分けているんですか?」
「ああ。レベル上げや、先に進みたい冒険者……目的別で、チームを組めるようにしている。人材もそういった取り方をする」
(人が多いんだなぁ……)
休みを多くとるようにしている、短い時間で最大の成果を出す効率化、明確な分業。
乾は……思った。
(獅子山さん……なんというか、普通だ!)
イカれたヤツばっかりだったので、乾は感動してしまった。
ホワイト……つまり、これが世間の“普通”だ。
青宮 翼は悪い人間ではないが、根は完全にブラック社員である。
獅子山のような人間が、これからの冒険者業界には必要なのだろうと、乾は思った。
「青宮に言っておきます」
「ん? なにをだ?」
「ブラックな働き方はほどほどにしなさいって」
「……まぁ、なんとなくだが。そういう雰囲気は、感じていたよ」




