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追加残業、いけます!

 斧を持った青宮が駆ける。2体のレッドシープと遭遇した。


「先手、必勝!!!」


 全力で駆けた勢いのまま、斧を振り下ろす。

 反応の遅れたレッドシープは、左半身に重い一撃を加えられた。


「メェェェェ!?」


 不意打ちだったこともあり、大きな悲鳴を上がる。

 もう一体の方が、すぐさま青宮めがけて体当たりをしてきた。

 青宮は斧を両手で持ち、前へかざして攻撃をガードする。額に柄が当たり、ぐぐぐぐ、とお互いに押し合う形となった。

 両足を使い、踏ん張る。先ほどはパワー負けしたが、今は五分五分といったところ。両足と下半身を震わせながら、なんとか耐える。

 そして一方を相手していると、当然、片方が攻撃してくる。

 ケガを負ったレッドシープが突進してきた。


「……今だ!」


 ギリギリまで引きつけた後で、下がる。

 すると競り合っていた方のレッドシープがバランスを崩し、突進してきたレッドシープと激突した。

 がつんっ!!! と、強烈な勢いで頭と頭をぶつける。

 2体が怯んだところへ、すかさず接近。先にケガを負っている方へ、斧を一閃した。重い振り下ろしは、レッドシープの頭を潰し、絶命させる。


「2匹目! そして……」


 その勢いのまま、斧を振り上げる。レッドシープが回避しようと動くも、間に合わず頭ぐしゃり、と斬られた。レッドシープは数歩後ろへ下がった後、ばたり、と血を流しながら倒れた。


「3匹目! 次!」


 休みも入れず、勢いでドンドン進んでいく。

 レッドシープが3体いる時はさすがに危険なので、それは避ける。効率は下がるが、身を守るためだ。

 2体までの場合は、積極的に攻撃をしかける。

 4匹、5匹、6匹と……草原を駆け、集中的にレッドシープを狩りまくった。

 18時。入場してから9時間が経過。

 レッドシープ狩りはおよそ3時間以上が経ったことになる。

 このくらいになると、レッドシープの動きもわかってきて、倒すのに安定感が増していった。

 だが……ぶっ通しで、大量のレッドシープを倒している状態。

 それに一歩間違えれば、命をもっていかれるくらいには、力関係に余裕はない。そもそもレッドシープは、スライムの次に強力なモンスター。青宮のレベル帯は、本来ならばパーティーでやっと安定する相手なのだ。ソロでの狩りは邪道な道である。

 無茶をしていることにより、青宮の体にはかなりの疲労がたまっていた。

 さすがに一息つこうと思い、木陰を背に寄りかかり、アイテムボックスからバナナを取り出し食べた。

 暗くなり始めた夜空を見上げつつ、あっという間に食事を終える。夕食は最低限で軽く済ませ次へ行く。これも習慣であった。


「18時か。定時からが本番だ。いくぞ」


 再びターゲットを求め、草原を駆けた。

 青宮は気がつかなかったが、斧が青く何度か光る。まだやるの? と、抗議しているかのようだった。





 さらに3時間、レッドシープを狩り続ける。1匹との格闘戦の末、ラストの一閃。


「60匹目!!!」


 ずどんっ! と、60匹目のレッドシープを撃破。システム音が彼へ告げた。


『――青宮 翼のLVが6へ上がりましたHP+68 MP+23 攻撃+19 防御+13 魔力+19 精神+13 俊敏+12』


 さらにレベルが上昇した。今日だけでLV3→6。中々の成果である。

 しかも前回、前々回と比べると上昇値も少し伸びている。ピンチを潜り抜け、無茶な追い込みで狩りをしているため、体が鍛えられたのかもしれない。

 心なしか、∞ウェポンが軽く感じる。


「じゃあ、あと40匹頑張るか」


 ためらいもなく続行、もとい残業を決意し、狩場を走る。

 ダンジョンへ入場してから、12時間。本来ならば、泊まりこみなんてする必要が、基本的にはないダンジョンに、こんな長時間潜り込む冒険者は少ない。協会のデータベースを参考にすると、やはり8時間が平均だ。長く滞在しても9時間である。

 いよいよ斧、∞ウェポンが何度か光って抗議していたが、青宮は気がつかない。まるで部下の様子の変化に気がつかない上司である。

 そしてレッドシープを狩りまくり、時刻は1時。

 ダンジョンへ入場して16時間が経過した。


「これで、100匹目!」


 強い一振りで、羊の頭をぶった斬り、撃破。

 ついに、レッドシープ100匹討伐を達成した。

 だからなにか貰える、というわけではないが青宮はガッツポーズをとった。

 疲れと筋肉痛により、その腕はプルプルと少しだけ震えていた。


「よし! ノルマ達成! ん? なんだ、なんでピカピカ光っている?」


 斧がペンライトのように青くピカピカしているので、青宮は首を傾げた。

 なんだか抗議をしているかのように見えるのだが、青宮はポンポン、と右手で軽く柄の部分を叩いた。


「相棒も喜んでたりしてな。まあ、お疲れさん。よくやったよ」


 斧は違う、偉そうに言うな、と怒ったかのように、強めな青い光を放つ。青宮は首を傾げた。


「……? まあ、いいか」


 予定より早いが帰ろう。そう思った瞬間である。

 雷が落ちたかのような、大きな音共に目の前で紫色に光る魔法陣が広がった。


「っ! なんだ!?」


 青宮が身構える。

 彼は事前の調べをおろそかにした。ダンジョンには特定の条件のクリアや、小さな確率で召喚されるレアモンスターがいる。

 そこまでは知っていたが、その先――レッドシープ100体連続討伐という条件で出現するレアモンスターがいることを、知らなかった。

 よってこれは、彼にとっては完全なる想定外。

 光が消滅と共に――レッドシープより大きく、さらに濃い赤い色の羊が現れた。全長は2メートルほど。デカさもあって、どっしりとしたオーラと迫力を感じとれた。

 クリムゾンシープ。

 レッドシープの上位互換となる、レアモンスターだ。


「追加残業か――上等! やってやるさ!」


 気合を入れる青宮とは対照的に、∞ウェポンはため息をつくように、弱々しい光を放った。

本作の閲覧ありがとうございます。


もしここまでの内容がよろしければ、★★★★★評価・ブックマークをいただけると、とても助かります!


何卒、よろしくお願いします!

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