表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

レッドシープ

 次のターゲットは「レッドシープ」と呼ばれる赤い羊だ。基本的なビジュアルは地球にいる羊とあまり大差ないものの、毛の部分が血のように真っ赤なのが特徴である。頭には2対の角が、鬼のように真っ直ぐ伸びていて、体当たりされた時はこの角に注意しなければならない。

 斧をアイテムボックスへ収納し、俊敏ステータスをフル活用してダンジョン内を移動している時。ふと、木陰で休んでいる2人組の冒険者が視界へ映った。その2人組は若い男女のカップルで、仲良く休憩しつつ、くっついてイチャイチャしていた。

 とても幸せそうである。

 だけど、青宮はとってもイラついた。


「よーし! なんか気合入ってきたぞー! 赤い羊いっぱいぶっ〇すぞー!」


 アイテムボックスから∞ウェポンを取り出し、振り回しながら進んでいく。たしかにレベル上げというのは言いかえると、いっぱいぶっ殺〇ぞ! なのだが、いっぱい狩るぞ、とかそういうマイルドな言い方をしない辺りに、彼の内なる怒りが込められていた。

 狂人じみた行動に、カップルはぎょっとしたが、やがてその視線は振り回されている斧へと映った。初心者エリアなのに、なんだか強そうな武器を持っているぞ、といった感じである。

 そんなことがありながら進むと、やがて草をもしゃもしゃ食べるレッドシープと遭遇した。


「……ちょうどいい。タイマンでどこまでやれるか、検証だ」


 近づく。レッドシープがこちらへ気がつき、唸り声を共に正面を向き――勢いよく、突撃してきた。

 青宮は引きつけてから、左へ飛び、すれ違いざまに斧をレッドシープの足めがけて振るう。だが、レッドシープはその場でピョンとジャンプし、斧を回避した。


「っ!?」


 身軽な動きに、思わず驚く。

 レッドシープは着地と同時に、すぐさまこちらへ角を突き出す。

 斧を横払いで振ると、レッドシープの顔面へ命中。ザシュッ、と深い切れ込みが羊の顔に入るも、レッドシープは怯まずに、そのまま真っ直ぐ突撃してきた。


「なっ、こいつ……!」


 ズドン、と。

 レッドシープが懐へ入り込んで、青宮の腹に角を突き出した。ステータスの防御力の加護により、角の刺さりは浅かったが、レッドシープが強烈な力でもってそのまま前へ突き進み、角をグリグリと押し込むのでどんどん体の奥へと入っていった。


「っ、いってえっての、この、このぉ!!!」


 振り払うことが出来ないパワー。

 代わりに、斧を背中目がけて振り下ろし、レッドシープにダメージを与える。だが、中々決定打にならない。そしてレッドシープが怯まないので、時間が経てば経つほど、角が奥へと押し込まれていく。

 ぐしゅり、ぐしゅり、と。硬い感触がどんどん内臓を圧迫し、貫いていく。

 血が地面へと垂れ、確実に命と体力がこぼれ落ちているのを感じる。


「クソ、ヤバい……! 離せっての!」


 斧で斬った時の手応えはある。レッドシープも流血している。だが、このモンスターはかなりの根性がある。負けじと、青宮の命を全力で狩りに来ている。

 だが、青宮も負けない。

 こんなところで死ぬわけにはいかない。


「俺は残業200時間でも、死なない男なんだよ! クソ羊如きで、死ねるか!!! おらぁぁぁぁっ!!!」


 斧が青く光る。

 最後の振り下ろしは、渾身の一撃であった。ずどおおおおおんっ! と重い一撃が赤いモコモコ毛の背中へ降りかかり、大量の流血と共にレッドシープはどさりと倒れた。

 青宮は血の流れるお腹を抑えながら、アイテムボックスから回復アイテムを取り出す。


 HP 50/284


 スライムの時ほどではないが、今回も中々に危なかった。


「っ、ちくしょう、思った以上にパワーがあったし、スピードもあったな」


 だが、システム音がかすかな希望を告げた。


『――青宮 翼のLVが5へ上がりましたHP+60 MP+20 攻撃+16 防御+10 魔力+16 精神+10 俊敏+9』


「……来たか、LV5。あいつらと狩っていた時は1日1UPペースだったけど、早くも2上昇か」


 時間はまだ、3時前だ。

 昼休憩1分で、根詰めてやっているだけはある。


「多少は強くなったなら、次はいけるだろ。そうだな……今日の、ここからの目標は」


 青宮はにやり、と笑みを浮かべた。


「レッドシープ、100体。気合で達成だ」


 ソロでの狩りだというのに、彼は夜中まで狩りをする気満々のノルマを、設定したのであった。

 先ほどの戦闘も、危険であった。

 だが、だからこそやる価値がある。リスクがあればレベルが上がる。もしかすると、∞ウェポンも強くなるかもしれない。


「さあ、やってやるよ」


 そしてここから――地獄の羊狩りが、幕を開ける。

 安易に決めた「100体」という数字が、牙を向くとは知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ