元社畜のレベル上げ
「誤差の範囲の成長だが……まあ、伸びるってことがわかっただけ、良しとするか」
全ステータスが+1上がっただけなので、実感はないだろうが、小さな前進だ。
「ベルセルクは、武器の特殊効果みたいだけど……なんだこりゃ」
スキル説明を開くが、メニューには文字化けのような表示になる。
ベルセルク LV?
???
ただ状況的には、1つ身に覚えがある。
(斧が青く光った時、たしかに動きが良くなったような気がする)
そしてもう1つ、気になること。
(被ダメが思ったより高くなったのも、違和感がある。それも関係しているのだろうか)
考えるも、説明が表示されないものは分析しようがない。
ただ起きた現象から照らし合わせると、封印されている感じではない気がした。効果は出ているが、その詳細がわからないだけ。
(まあ、考えても仕方ないか。というかいちいち説明ないの、気になるな。研修もしないまま仕事を振る、前の会社かよ)
とことん不親切なユニークスキルだとは思うが……少なくとも、成長するということだけはわかった。
ならば、強くなるというノルマ達成に向けて進むだけ。
社畜時代は、クリア不可能なノルマというものがあった。
その時にどうしたか。答えは意外と簡単だ。
クリアするまで、やり続ければいいのである。
「まずは……最弱モンスターのスライムを、簡単に狩れるようにならないと」
青宮による、ブラックなレベル上げが始動した。
彼は1人、決意を固めるように口にする。
「強くなるまで、帰れません」
☆
次に挑んだのは、2体のスライムだ。
1体を相手にしつつ、もう1体の相手の動きに注意して戦う。
レベルが上がったのと、4体を1人で挑んだこともあり、上手く回避しながら2体を撃破。
休みなくダンジョン内を動き回り、スライム狩りを繰り返した。
やがて4体グループのスライムとの戦闘になったが、ずっと同じ相手をしていたからか、動きに慣れた。スライムの動きは単調で、わかりやすい。複数体に襲われても慌てず、斧でガードしつつ丁寧に戦うことで、少ない被ダメで撃破することが出来た。
そんな感じで、午後の1時までほぼぶっ通しで戦い続けた。
昼休憩は1分のみ。アイテムボックスから取り出した、ゼリー飲料での栄養補給だけだ。
社畜時代の昼休みと同じルーティンである。
休みという休みを徹底的に削り、気合で労働時間を作る。それに応じての給料は出ない。仕事の成果=給料。それが社畜魂だ。ただし仕事の成果というのは、正当なる評価はしないものとする。
「案外、すぐにスライム狩りは簡単になったな。さて。∞ウェポンはどうなった……?」
エンドレスなスライム狩りの後、一息つきつつメニューで確認。
∞ウェポン
HP+3 MP+3 攻撃+9 防御+3 魔力+3 精神力+3 俊敏+3
全体的に2上がり、攻撃力は3上がった。
またしても誤差レベルではあるが、ちゃんと成長はしている。希望はゼロじゃない。
ただ、気になることがあった。
「俺のレベルは4のままか」
たしかに戦っていて、ピンチを感じる場面はなかった。
経験値はかなり少ないのかもしれない。
スライムの動きに慣れたのだ。
まだステータスが大きく上昇したわけではないので、怖いが……もう1ランク、難易度を上げる時だと考えた。
リスクはある。ましてやソロなのだ。
自由な身ではあるが、なにかあったらフォローしてくれる人はいない状態。
だが、普通のやり方で強くなれるほど、今はやさしい状況ではない。
心を鬼にする必要があった。
「よし、行くか……それにしても、あれ以降、斧は光っていないな」
見た目だけはいっちょ前な斧をちらりと見た後、移動を開始した。
不親切で気まぐれな相棒は、相変わらずその性能がよくわからないままだ。
「……」
ふと、あることを思った。
こういう特別な武器は、喋る……というのが、青宮のイメージにあった。
なので、変人じみているが――己の武器へ、声をかけてみる。
「これからよろしくな、相棒」
不親切な力だが、希望であることには変わりない。なので、フレンドリーにあいさつする。
もちろん、返事は期待していない。
だが――斧は返事をするかのように、ほんのりと青く光った。
「おお?」
喋りはしないが、なにか意志があるのかもしれない。
前に見かけ倒しとか言ってしまった気がするが、大丈夫だろうか。
「まあ、大丈夫か……」
気を取り直し、青宮は狩りを再開した。




