ブラックに染まりつつある問題
冒険者協会の崩壊もあり、スマイル・アドベンチャーは休暇状態となっているのだが、それでも青宮、樹、乾、白井、姫咲の5人は毎朝ギルドへ集まっていた。
「みんなワークホリックだなぁ……まとまった休暇とれるの、今ぐらいだぞ? 休むことも仕事なのに」
青宮がそんなことを言うが、樹達はお前が言うなという視線を送る。
ちなみに、先輩達はシンプルに休暇を喜んでいた。
荒木は今時の男なので、静かに休みをとっている。
しかし冷静に考えれば、それが当たり前の反応だ。
人間は休むものである。
(まさかみんな、俺の影響を受けてブラック化しているのだろうか……それはいかんな……でも俺、レベルアップ辞められないんだよな。現場気持ち良いんだよな)
ワークホリック、もといダンジョンホリックであった。
と、ここで乾が口を開く。
「まあ、稼ぎが良いからつい来ちゃう、っていうのもあるけどね。ダンジョンに入れば入るほど、儲かるわけだから」
樹達がメインで活動している三階層の魔石は1個およそ1100円前後。
上限の50個まで獲得すると、手数料の20%を引いても日給44000円だ。
命がけの仕事ということを考えるとかなり安いが、日給44000円というのは月収80万円以上を狙えるレベルなので十分、高給といえるだろう。
ちなみに四階層は1個1300前後。
青宮が今いる五階層は、1500前後だ。
「明日が会議なんだよね?」
樹の言葉に、青宮がうなずく。
姫咲がバインダーで挟んだ書類を見ながら、説明をする。
「現在、行方不明の四之宮会長の後継者が、最優先となる議題になっています。候補として名乗りを上げているのが、ナンバー2の獅子山さん、そしてナンバー3の荒木 貞雄さんです」
「荒木……?」
偶然かな、と乾が首を傾げる。
姫咲がその疑問にすぐ答えた。
「私達のメンバーである、荒木さんの兄です」
「ナンバー3の弟さんだったんだ……」
白井が驚いた声を上げる。
青宮は肩をすくめた。
「ちなみに荒木 貞雄はバチバチに“四之宮派”だ。獅子山さん、かなり頑張らないといけないな」
「え……大丈夫なの? その……荒木さんもふくめて」
樹が真っ当な疑問を口にする。
うーん、と青宮は考える。
「血縁者が四之宮派だから同じって決めつけるのは、良くないと思うぞ」
「う……そ、そうだけど」
樹の疑いはもっともではある。
荒木は仲間になってから日が浅いし、自分のことを語るタイプではない。
それに加え、ギルドを転々としている不信要素まである。
そしてこの冒険者協会は、油断のできない世界。
危険はダンジョンとモンスターだけではないのだ。
警戒してしまうのは仕方ないだろう。
が、青宮は首を横に振った。
「まあ、この世界だから誰かを100%信用しろとは言わないけど。少なくとも、荒木さんが転々としてきた過去のギルドはどれも“中立”か“獅子山派”だ。あまり四ノ宮会長に気に入られていた痕跡は、見受けられないな」
(てか、会長からゴマ擦りを受けているは俺なんだよな)
青宮は諸々の状況を踏まえて、荒木のことはそこまで疑っていなかった。
ただ、なにか目的があるのだろうとは、思っている。
しかし経歴的に四之宮派ではないし、問題行動があるわけではない。
アーツファイトでも、クールに勝利を掴んできてくれた。
試合内容もかなり安心して見れるものだったし、彼を“即戦力”として見ていた。
「荒木さんの話を持ち出されると、なんともへこむけどね」
乾の言葉に、青宮は首を傾げた。
「へこむ?」
「なんでもないよ」
白井が乾を心配げに見る。
樹もちょっと面白くなさそうな表情をしていた。
曲がりなりにも、スマイル・アドベンチャーへ来た時から乾と白井は一緒だ。
出てきたばかりの荒木が、ギルドのエースポジションに収まりつつあるのが、樹達としては悔しいものであった。
「そういや、あんま調べてないんだけど。ナンバー1ってどんな人か、今なにしているか、誰か知っているか?」
青宮がふとした疑問を口にした。
会議に参加している奴らがどういう人か、ざっとは紹介された。
その中に、ナンバー1の存在はなかった。
「ナンバー1は現在、単身でアメリカへ行き、ダンジョンに潜っています」
姫咲が答えると、青宮は少しずっこけた。
「日本がこんな大変なことになっているのに、エースは海外にいるのか……」
「え、えっと、出張なのでちゃんとお仕事ですよ」
「どういうことだ?」
「ナンバー1が海外のダンジョンで活動することは、外交的な意味があるんです。同盟国同士、ダンジョンを共有することで、互いの友好関係を深めるんです」
「ああ、なるほど。冒険者協会って、そんなこともしているのか」
「そうですね。逆に、日本へアメリカの優秀な冒険者がやってくることもあります」
「いわゆる共同訓練みたいな感じか」
「はい。そうだと思います」
(一応、まともなことをしてんだな。毎回それやってくれよ)
わけのわからないアーツファイトだの魔石改革よりも、よほど日本と社会に貢献している。
おそらくだが、四之宮会長以前からやっていることだろう。
支持率を上げたことや、利益を爆上げさせたことはすごいが、やはり強化するべき方向性を間違えたのだろう。
(まあ、四之宮会長もイマイチ読めないんだけどな)
情報交換したところで、スマイル・アドベンチャーのメンバーはダンジョンへ向かった。
世の中がどんどん動いているが、彼らは冒険者。
やるべきことは単純明快。レベルを上げて、強くなることだ。




