青宮 翼VS轟 悪魔 上
「手始めに、こいつで突き刺してやるよ!」
轟がアイテムボックスから剣を取り出す。
そしてその剣を天へ掲げると、青い魔法陣が飛び出した。
青宮は∞ウェポンを取り出し、ベルセルクを発動させ、左手を伸ばす。
両者は同時に、攻撃魔法を放った。
「――アイシクル・メテオ!」
「――フレイム・ランス!」
青宮は炎の槍を、轟が氷の隕石を放つ。
高い魔力の攻撃魔法同士がぶつかり合う。
ズドオオオオ!!! と、凄まじい爆発音がステージの中央に木霊した。
たったの一撃。
戦いの初手で、会場全体が揺れるかのような恐ろしい衝撃だ。
「っ、なんて威力……!」
ステージ外で乾が思わず、顔を腕で覆うほどの衝撃だった。
真っ直ぐにステージを見つめながら、荒木は言う。
「これがギルドマスター同士の戦いです。そして轟 悪魔……彼はアーツファイトで5勝を上げ、LVは52です」
轟 悪魔 LV52
HP 3630
MP 1280
攻撃 768
防御 770
魔力 772
精神 770
俊敏 700
スキル 剣術LV6 アブソリュート・ゼロ EX 氷魔法LV6
「ご、52……!」
白井が息を飲む。
青宮のLVは24。
本来であれば、先ほどの一撃で沈められてもおかしくない差だ。
「恐ろしいのが、ギルドマスター内ではこれでも中堅ということです。轟はこれほどのLVを持ちながら、5敗もしている。強者揃いの世界なんです」
乾と白井が言葉を失う。
先輩達は、ひえええ、と身震いするばかりであった。
「今のを相殺か。やるじゃねぇか!」
轟はにやりと笑い、剣を持って前へ飛び出した。
「――早い!」
乾が驚く。
轟は会場の人間の目で負えないほどの速さで、前へ駆けた。
青宮はちらりと、足元へ目をやった。
ステージの床から、両足の足首まで氷づけにされている。
一歩たりとも、動かすことは出来なかった。
(この距離で、こんなことまで出来るのか)
青宮は関心する。
「ああっと、青宮選手動けない! 轟選手、いきなり得意の氷魔法で相手の動きを封じました!」
「青宮選手が立ち止まっている間に、轟選手の魔力が足元に集まり、氷となって塊になりました。アイシクル・メテオは囮なんです。ですが……らしくないですね」
「と、いいますと?」
「これは轟選手が初手としてよく使う手段です。私の印象では、青宮選手はデータを調べてから動く、入念な性格だと思っていたのですが……まさかなんの対策もしないとは、驚きです」
「おっと、これは青宮選手、致命的なミスか!?」
『終わったか?』
『炎魔法の威力は高そうだけどな』
『まあ、それだけで終わりかもね』
『轟の氷魔法は初見殺し。そしてこのパターンは詰み』
『死ね、死ね、彼氏さぁん!!! ざまぁ!!!』
『や~い。翼、負けてやんの』
観客席も盛り上がりを見せる。
歓声の中、轟が正面から剣を振るう。
「おらぁ! 死ねや、クソガキ!」
ガキィン! ギィン! と重々しい金属音が鳴り響く。
斧と剣がぶつかり合い、その衝撃だけで、一撃が強力であることがわかる。
観戦している側の鼓膜が、強く揺れた。
加えて、斧の筋も剣の筋も、ほとんど目で追えないほど速い。
轟の圧倒的な猛攻。
それをなんとか防御する青宮。
ぱっと見はそう見える凄まじい攻防だ。
しかし……轟は不機嫌そうな表情で、後ろへ下がる。
「てめぇ……なんのつもりだ?」
「なにがだ?」
「両手を使いやがれ。なに片手で斧振ってやがる、舐めてんのか?」
ふっ、と青宮は鼻で笑う。
「お前が本気じゃないからな。俺も手を抜かせてもらう」
「はっ! 頑張ってんなぁ、クソガキ! だが、てめぇなんか本気を出すまでもねぇんだよ!」
轟はジャンプし、青宮の背後へと立つ。
「これで終わりだぁ!」
剣を思いっきり振り下ろす。
だが――青宮は右腕一本で斧を後ろへ回し、その一閃を軽々と受け止めた。
「んなっ……!?」
「俺はマトモな試合をする気なんてないんだよ」
そのまま斧を振りぬく。
衝撃が襲いかかり、轟は後ろへ吹っ飛んだ。
勢いを殺しながら床へ両足で着地する。
青宮の体に宿る青い炎が、足元の氷を溶かした。
動けるようになった青宮が轟へ振り向く。
「轟 悪魔。俺はお前のプライド・誇りを全て打ち砕くために、ここへ来た」
青宮は挑発するように、青い斧の切っ先を向けた。
「力の差を見せてやる。さっさと本気を出せ、かませ犬」




