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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第三章「ギルドマスター、青宮 翼」

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荒木 良治VS草壁 森羅万象

 審判により、判定が下される。


「――勝者、スマイル・アドベンチャー“樹 小春”!!!」


 おおおおおお、と観客席が沸き上がる。

 越谷はアーツファイトで3勝している選手だ。

 新人にして初参加の樹が勝利するのは、番狂わせである。

 コメント欄も湧いていた。

 ただどちらかというと、ビジュアルの方に反応している。


『わざわざ自分で勝者って言うの可愛い』


『てか、スタイル良すぎてたまらん』


『顔も良いしね』


『揺れているの最高、むほほほ』


『ケツも良い感じ』


『コメント欄エロジジィしかいない件』


『でも、ビジュは大事よ。人気出る』


『あのアホギャルもそんな感じだしな。でも俺は、樹ちゃんのが好み』


『写真集はよ』


 しかし樹はフラついているので、救助班によって越谷と共に運ばれる。

 担架へ青宮は駆け寄った。


「樹」


「青宮くん! えへへ、私、勝ったよ!」


「ああ……まったく、無茶しやがって」


 司会が声を張り上げ、進行する。


「さあ、初戦はスマイル・アドベンチャーの勝利! 興奮冷めやらぬまま、次へ移りましょう!」


 対面から、草壁がステージ上へ上がる。


「青コーナー、漆黒魔竜ノ組! アーツファイトではまだ白星を上げておらず、今回で初勝利となるか!? “路上の処刑人”! 草壁 森羅万象!」


「対戦相手の陰キャくん殺しまーす」


 カメラに向けて、草壁は中指を立てる。


「赤コーナー、スマイル・アドベンチャー! アーツファイト初出場! “沈黙の短剣”! 荒木 良治!」


「……どうも」


 荒木は静かにステージへ上がる。


「獅子山さん、第二戦目のカードはいかがでしょうか?」


「あー……まあ、資料を見るまでもないかなぁ」


「は?」


「勝負にならないと思いますよ。荒木と当たった草壁選手は、お気の毒だ」


 興奮した歓声の中、試合が開始される。

 草壁はにやりと笑いながら大剣を取り出し、スキルを発動。

 赤い魔力をまといながら、猛スピードで駆けた。


「ひゃははははは! ぶっ殺してやるぜ、チー牛野郎!」


 獅子山の苦言とは裏腹に、力強いスピードだ。

 さらに棒立ちの荒木へ向けて振り下ろされる大剣のパワーは、凄まじい。

 食らえばひとたまりもない。

 襲撃時、青宮は軽くあしらっていたが、十分に優秀なパワーファイターであった。

 しかし――その瞬間。

 荒木の姿は、前触れもなく消えた。


「……は?」


 ぶんっ! と大剣の一閃はむなしく虚空を斬る。

 草壁はキョロキョロと辺りを見渡した。

 その出来事はあっという間であった。

 姿を消した荒木は、すれ違いざまにダガーを一閃。


「がっ、はっ!? なに、が……?」


 しかしその一振りも早すぎて、映像では草壁がいきなり倒れたかのように見えた。

 そして荒木は再び、前触れなくダガーを持った姿で、倒れた草壁の背後に現れた。


「……」


 無言。

 会場もなにが起きたかわからず、あまりに静かな試合に言葉を失った。


「しょ、勝者、荒木 良治!」


 シーン、と会場は静まり返る。

 そして草壁がしれっと、救助隊によって担架で運ばれた。

 実況の男が混乱する。


「え、えっと、これは一体なにが……?」


「荒木は“ステルス”というスキルを持っていましてね。姿を消すことが出来る。それに加えて、あいつは足音や気配を極限まで小さくするという特殊な武道の心得があります。草壁選手は、なにが起きたわからないまま、倒された……というところでしょうね。そもそも、荒木と草壁選手じゃ実力がかけ離れている。仮にステルスなしでも、草壁選手は勝てないでしょうね」


「は、はぁ……なる、ほど」


 実況が話を広げづらそうに言う。

 内心でつまんねぇ試合すんなよ、と彼は思っているようだ。


『奇襲特化って感じか』


『大会映えしない選手だな』


『地味すぎ』


『塩試合やめろ』


『でも、荒木選手も結構かっこいいな~』


『女さん、趣味悪くね』


『冒険者とかいう野蛮人好むとか、頭空っぽなんだろうな』


『荒木の場合は陰キャじゃね。雰囲気的に』


『教室の隅っこにいるよね、こういうの』


『イキリ陰キャがなんか言ってるな。トラウマでもよみがえった?』


『チーズ牛丼でも食ってろ』


『てか、漆黒魔竜ノ組もう2敗じゃん』


『ざっこ』


『はい、負け』


『息巻いて戦い挑んでこれかよ』


『逆に血祭にされてて草』


『口だけだよな、こいつら』


『スマイル・アドベンチャー、1人も死んでないじゃん』


『あー、つまんね。飽きてきた』


 派手で気合の入った美女2人と違い、色々と盛り下がる試合となった。

 荒木はステージを降りる。


「……勝ちました、リーダー」


「お疲れ様です。観客クソ萎えてて、俺的には面白いです」


「そうですか。これが自分の戦い方なので……ステルスを使わないのは、相手に失礼だと思いました」


 司会が慌ててマイクを手に取った。


「で、では、次の最終試合へと移ります! ギルドとしては漆黒魔竜ノ組の敗北ですが、最終カードは代表同士の戦い! この戦いこそが、ギルドの名誉をかけた真のバトルと言えるでしょう!」


 因縁のある対決というだけあって、会場が再び熱を吹き返す。


「青コーナー、漆黒魔竜ノ組! その凶悪ぶりは、業界でも屈指の恐怖と暴力をバラ撒く! この男を待っていた! 刮目(かつもく)せよ“極道の絶対的王者” 轟 悪魔!!!」


 青宮は思わず、ずっこけそうになった。


「今更だけど、なんつーリングネームだよ。闘争者アウトシーカーじゃないのか。てか、極道っていいのか……本物に怒られるぞ……」


 ステージに上がった轟は、上半身裸であった。

 その肌には、竜の入れ墨が彫られている。硬く厚い筋肉もついているため、迫力があった。


「ステージの上を血だらけにしてやるぜ! ひゃははははは!!!」


『ヤバすぎだろコイツ』


『勉強の大切さを学ぶ配信』


『冒険者協会は反社! 反社! 反社!』


『彼氏さぁんをぶっ殺してくれ!』


 有島も見ているようだ。


「続いては、赤コーナーのスマイル・アドベンチャー! 流星のごとく現れた期待の新星! その強さは早くも女性人気を高めているようです! “斧使いの王子様”青宮 翼!」


「ダッッッッッセ……」


 青宮は引きつった表情で、ステージへ上がる。


『さて、実力は本物か』


『本命のカードが来たな』


『楽しみ! これを待ってた!』


『轟は強い! こんなガキに負けない! 殺せ!!!』


『やっぱり青宮様かっこいい~♥』


『翼、負けてもやり直してなんかあげないからね』


 元カノも見ているようだ。


「さあ! 熱きリーダー対決の幕が上がります! レディ……ファァァイト!!!」

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