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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第三章「ギルドマスター、青宮 翼」

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樹 小春VS越谷 女王 前編

 盛り上がる歓声を背に受けながら、青宮達はステージを降りた。

 見上げると、豪奢なVIPルームの奥――高い位置から四之宮がこちらを見下ろしている。

 目が合った瞬間、四之宮はゆっくりと微笑んだが、青宮は視線をそらした。


「あら、つれないわね」


 ソファに優雅に腰掛けたまま、四之宮は小さく呟く。


(あくまで、なびいてくれないのね。アーツファイトを、この私を壊す気でいる。でも――あなたは一つだけ勘違いしているわ)


 ふふ、と喉の奥で笑う。


「人間が作った箱庭なんて、壊してくれていいのよ。弱い人間だけでやっていけるのなら、ね」


 照明が落ち、会場が暗転する。

 直後、重低音のビートが鳴り響き、白いスポットライトが高速で会場を切り裂いた。

 観客席から歓声が爆ぜる。

 司会がマイクを掲げ、腹の底から響く声を放つ。


「それでは、まずは青コーナーッ! 漆黒魔竜ノ組エース、アーツファイトで4勝を上げている――《爆アゲ天使》! 越谷 女王ティアラ!!」


「いぇーい、どーもー!」


 越谷が歩きながら、カメラへ向けてギャルピース。

 配信画面では実況が声を弾ませる。


「漆黒魔竜ノ組の先陣は越谷選手! 実力も人気も高い選手ですが、獅子山さんの印象は?」


「んー……」


 獅子山は資料をめくりながら、ぎこちなく答える。


 越谷 女王ティアラ24歳 女

 LV36

 HP 2075

 MP 688

 攻撃 469

 防御 480

 魔力 505

 精神 500

 俊敏 563


 スキル ウィップLV5 アクセルLV4


「ムチはトリッキーですが、攻守に優れた武器です。スピードもあってアーツファイト向き。1つのギルドのエースに恥じない能力ですね」


 コメント欄が一斉に流れる。


『ギャル可愛い』


『ティアラちゃん推せる』


『対戦相手誰だろ』


『襲撃された2人のどっちかならヤバいな』


 司会が続けようとした、その時。


「では、続いて赤コーナー……え、欠員?」


 青宮がマイクで答える。


「1戦目は棄権でお願いします」


「え、は? 棄権? ちょ、確認します!」


 司会とスタッフが慌てふためき、会場がざわつく。

 進行が止まり、空気が乱れ始めたその瞬間――。


「――待った、まったあああああ!」


 樹の叫びが会場全体に響き渡った。

 だだだだ、と俊敏補正の乗った動きで、樹がステージへ跳び上がる。


「樹 小春です! 遅れました!」


 青宮は思わず目を見開いた。


「左腕……どうした?」


 樹の左腕は包帯でぐるぐる巻きだ。


「ケガ! でも、大丈夫だよ!」


 樹は痛みを隠すように、白い包帯の手をひらひら振る。

 司会が慌ててマイクを取った。


「お、お待たせしました! 赤コーナー、スマイル・アドベンチャーより――レアな召喚魔法を操る新人! 《(きら)めく召喚姫》! 樹 小春!!」


「ひ、姫……? えへへ、悪くないかも~」


(いや、絶対恥ずかしいだろ……)


 青宮が心の中でツッコむ。

 配信のコメント欄は一気に湧き上がった。


『可愛い』


『胸デカい』


『エロすぎる』


『お前らそればっか』


『実力はどうなんだろ?』


 獅子山が資料を見て、驚きの声を漏らす。


「彼女、先月はレベル20代だったはずですが……これは相当無茶をしましたね。今回の試合に、強い思いがあるのかもしれません」


 樹 小春 21歳 女

 LV35

 HP 2090

 MP 973

 攻撃 515

 防護 517

 魔力 548

 精神 522

 俊敏 520


 スキル 雷魔法LV5 召喚魔法LV4 回復魔法LV4


 司会が両者を見渡し、腕を広げる。


「それでは――両者、試合開始ッ! レディ……ファァァイト!!」


 ゴングが鳴り響き、樹と越谷が同時に武器を構えた。

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