幕章「寝取り男と元彼女、アーツファイトに気づく」
「へへへ、最高だぜ」
夜。キャバクラで豪快に遊んだ有島は、ほろ酔いかつルンルン気分で、帰り道を歩く。
金がなかった……というのは、もう過去の話。
有島は今、懐が温まっていた。
青宮への慰謝料をなんとか支払った後。
派遣会社に紹介された、評判の悪い現場の夜勤をやっていた。
派遣会社からまだ信用を得ていない彼は、嫌われている現場を露骨に回されていて、年下から怒鳴られるクソな日々を送る。
そんな時、逆転を狙って手を染めたのだ。
違法賭博というものに。
そこからの有島は、神がかっているレベルでツイていた。
連戦連勝。
金は膨らみ、キャバクラで遊べるほど余裕ができた。
「さて。次の賭けはアーツファイトならしいが……」
自宅のマンションに帰り、スマホで情報を調べる。
運営が次に賭けの対象としたのは、アーツファイトの試合であった。
アーツファイトには興味はないが、どんな対戦カードかは軽く調べておこうと考える。
そして――その情報を調べた時に、有島はにやりとした。
「彼氏さぁんか。よくもオレを訴えてくれたよなぁ……!」
怒りの声を上げる。
襲撃の動画や、対戦相手がSNSに上げている動画を見る。
轟 悪魔は動画で、青宮を挑発していた。
カメラに向かって中指を立て、好戦的な笑みを浮かべている。
『――アーツファイトだと思うなよ、クソガキ。たっぷり教育してやるから、覚悟しとけ』
有島は笑い声を上げた。
「これはツイてるぜ! 全額、轟 悪魔に賭けてやる! 彼氏さぁんが死んで、俺が金持ちだ! ひゃはははははははは! ざまぁみろ!!!」
☆
青宮と別れ、冒険者を辞めてから、泉は無職となった。
実家で部屋にこもり、お気楽なニート生活を楽しんでいる。
ポテチにハマり、その体は短期間でブクブクと太り始めていた。
この日もダラダラと椅子に座り、パソコンで動画を漁る。
そんな時――偶然、アーツファイトの関連動画を見た。
最初は目を疑ったが、間違いない。
青宮の試合が決まり、そのライブ放送が間近に迫っている。
相手の轟 悪魔はいかにもアウトローという感じで、強そうだ。
「へぇ……もしも負けて、冒険者ダメになっても。付き合ってなんて、あげないんだから」
泉はそう言いながら、ライブ放送で青宮の負け姿を見てやろうと、そう考えた。




