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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第三章「ギルドマスター、青宮 翼」

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幕章「スマイル・アドベンチャー、それぞれの苦悩」

「――どうでした?」


「んん?」


 夜。事務所を出るなり、声をかけられた。

 壁に背を預け、腕を組む若い男――荒木 良治だ。

 獅子山はおう、と声を上げる。


「来ていたのか。お疲れさん」


「勧誘は成功しましたか?」


「いいや。むしろ、俺は試されている。頼られてもいないし、信頼もされていないようだ」


「頼りないのは、事実ですからね。ナンバー2のわりには、リーダーとしての強さにかけます」


「全く、今どきの子は年上を尊敬しないと聞くが、本当だな。それとも、もう若いもんに任せるべきかい?」


 荒木は無表情に、けれどはっきりと頷いた。


「あなたの時代は終わると思います」


「……ほう。あのぶっきらぼうなお前さんが、青宮 翼を気に入ったかい」


「少なくとも、あなたの下にいるよりは、将来に希望がもてる」


「今日は厄日だな。大人になると、怒られることは少ないはずなんだが」


「怒ってはいないです。ただ、事実を言っただけです」


「散々だな……やれやれ。こんな現状を作ったのは、謝るが。上だって色々あるんだ、勘弁してくれよ」


「ですが今こそ、重い腰を上げる時だと思いますよ。力は弱いですが、四之宮会長の後をやれるのはあなたしかいないので」


 言うだけ言って、荒木は背を向けて歩き出す。


(――青宮 翼のギルドなら。あの女の言いなりでは終わらない)


 その姿を見送りながら、獅子山はガリガリと頭をかいた。


「全く、好き放題言いやがって。手厳しいなぁ……そういや、あいつのことも青宮へ話すべきだったかね」


 荒木が最初に所属したギルドは、獅子山のギルドであった。

 しかし荒木は――たった半年で、異動した。

 メンバーと摩擦があったわけでも、リーダーの獅子山と摩擦があったわけでもない。

 だが……獅子山には、めぼしがついていた。


「荒木 良治。あいつは、四之宮を憎む――復讐者だ」


 獅子山は経験で学んでいた。

 強い復讐心のために力を求める、荒木のような人間は――危険で、不安定であることを。


「お前さんはどう思っているか知らないが。荒木を信用しない方がいいぞ、青宮」





「雄太、もう止めた方が……」


 夜の10時。

 場所は第三階層。

 足が震えはじめた乾を見て、白井がそう声をかける。


「……凛は、帰ってもいいんだよ。僕が勝手にやっていることだから」


 白井は首を横に振った。


「雄太いるなら、私も残る」


「ありがとう」


 乾は笑った。


「僕も男だからさ……色々と、思うところがあるんだ」


 襲撃された、チンピラ共に負けたこと。

 青宮に助けられたこと。

 そして……アーツファイトのメンバーには、選ばれなかったこと。

 もちろん。新人の荒木 良治はレベルが高いベテランだから、仕方のないことだ。

 だが一連の出来事は、様々な感情を生んだ。

 怖かったこと。

 自分の弱さを感じたこと。

 そして、なによりも。


「悔しいんだ……!」


 自分は冒険者として、弱い。

 そう確信した。

 それに。一緒に戦っているから、わかる。

 己の実力は樹よりも下だということ。

 そのことが悔しい。

 白井と共に、冒険者としてそれなりに頑張ってきたつもりだった。

 冒険者の本能として、力を求める心もある。

 だけど……そのことごとくを、打ち砕かれた。

 男としてのプライドは、踏みにじられた。


「僕はザコだ。だから……」


 乾は片手剣と盾を、強く握りしめる。

 その手はプルプルと、震えた。


「少しでも、強くなる」





 第三階層。モンスター部屋にて、樹は1人レベル上げをしていた。

 3体の骨が床から湧き、樹の背後に迫る。

 瞬間――樹は振り返り、杖を天へかかげる。

 杖の先端から、雷が迸り――3体のスケルトンランサーを一撃で撃破した。

 樹の表情には、疲労がにじんでいた。


「……まだ、やれるよ」


 樹がアーツファイトのメンバーとして名乗りを上げた時。

 青宮の表情を見てわかった。

 あれは樹が負けると思っている表情だ。

 樹は青宮の力になれないことが、嫌だった。


(守られるだけなんて、嫌だ)


 それに――協会のデータできちんと調べた。

 たしかに今の段階では、漆黒魔竜ノ組のメンバーの方がレベルは上。

 だが、今から本気になってレベル上げをすれば――追いつけない差じゃない。

 青宮のように、ソロで追い込めば。

 ペースを上げれば、いけるはずであった。


「絶対に、負けないから」


 時刻は23時を回っている。

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