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メンバーを選出する

 朝。気が重いが、事務所でアーツファイトを組まれたことを説明した。

 ボイスレコーダーで一部やり取りも公表する。

 メンバーから非難されることも、覚悟の上だ。

 隣に立つ姫咲が心配そうに青宮を見つめる。

 しかし説明が終わるなり、樹が一歩前へ出た。


「青宮くん。私をメンバーとして選出して」


「……なぜだ?」


 正直に言うと、樹は選出しないつもりであった。

 アーツファイトは公共の場で、見せ物として戦わせる場だ。

 このご時世だが、やはり倫理的に考えてしまう。

 樹のような女の子を、そういう場に出したくない。

 樹の枠は、乾で考えていた。

 しかも青宮の想定では――この枠は、敗北すると思っている。


「死神の件も、ギルドマスター昇格クエストの時も。みんな青宮くんの力で解決していった。だから今度こそ、私が青宮くんの力になりたいの」


 強い申し出を受けてしまう。


「それに……青宮くんは正しいことをしたから。それを過剰防衛だなんて言いがかりは、許せない!」


 考える。

 沈黙が事務所内を支配した。


「樹。やっぱり、俺は他の――」


「青宮くんっ」


 ずいいいっ、と顔を近づけられる。

 うっ、と青宮は息が詰まる。

 こうなると、強気には出られなかった。


「わ、わかった。でも、後の2人はもう決めたメンバーを発表するぞ」


 青宮は隅の方に立つ、新人の荒木をちらりと見た。


「荒木さん。申し訳ないですけど、出場をお願いしたいです。可能ですか」


 問いかけに、荒木はこくりとうなずいた。


「……了解した」


「助かります。最後は代表の俺が出る。メンバーはこれでいいな?」


 ギルドメンバー達がうなずく。


「アーツファイトの開催は5日後だ。小競り合いはまだ続く可能性はある。みんな引き続き、単独行動を避けるようにしてくれ」





「じゃあ、いってくるぜ」


「ええ。いってらっしゃい、私の悪魔」


 同じくらいの時刻。

 別荘の寝室から、艶めかしいバスローブ姿の四之宮が轟へしだれかかり、頬へキスをした。

 轟はだらしなく頬を緩めながら、部屋を出ていく。

 扉を閉じた後、四之宮はクスクスと微笑んだ。


「単純な()()ね。ただ利用されているだけなのに。そこが可愛いのだけれど」


 四之宮は寝室のソファへと腰かけ、ノートパソコンを開く。

 電源を入れ、動画を再生。

 そこには協会が速やかな編集によって公開された、漆黒魔龍しっこくまりゅうくみとスマイル・アドベンチャーの小競り合いが映し出されている。

 タイトルは“【冒険者協会公式】危険! 街中でギルド同士のバトル!【アーツファイト】”。

 草壁、越谷が乾と白井を攻撃した映像を映している。

 上手く撮るだけではなく、時折カメラマンが「うわっ!?」(※棒読み)とか言って手ブレを起こすことにより、焦っている“マジっぽさ”を演出していた。

 コメント欄は荒れに荒れている。


『ヤラセだろ。なんでカメラ都合よく回ってんだよ』


『今すぐこいつらまとめて逮捕しろ』


『冒険者は兵器! 兵器の所持は戦争・犯罪を生む! 戦争反対!!!』


『まーた冒険者制度廃止派が湧いているよ。今の時代、魔石なしじゃみんな生きていけないだろ……(呆れ)』


『てかこの2人は、いきなり攻撃されたってこと? ヤバくない?』


『本当、この業界終わっているな』


『四之宮会長がかわいそう。言うこと聞かないんだろうな』


『最後の斧の人かっこいい』


『わかる。強者感あるよな』


『ファンになりそう。私の好み』


『新人のギルドマスターならしい』


『どうでもいい。だってこれ、仕込みだし』


 しかし四之宮としては、荒れようが好評になろうが、どうでもいいことであった。

 話題になれば、それでいいのだ。

 注目されれば、金になる。

 アーツファイトは表向き、四之宮が関与していないことになっている。

 だが、実際のところは違う。

 そもそも四之宮の発案により、アーツファイトは作られたのだ。

 異能バトルで金儲けをする“ビジネス”として。


「ふふふ。素敵よ、青宮 翼。私、あなたを愛しているわ」


 最後の青宮の映像を見て、四之宮はうっとりと呟いた。

 しかしその瞳には、どことなく狂気と気味の悪さがある。


「あなたはもっともっと、強くなれる。期待しているわよ」





 別荘を出た後の轟は、不機嫌であった。

 朝の住宅街。

 ガラの悪い風貌で、腕を振りながら歩く彼は目立ち、すれ違うサラリーマン達が彼を避けるように歩き、出来るだけ目を合わせないようにした。


(クソが。あんなヤツのどこが良いっていうんだ)


 四之宮はここ最近、やたらと青宮の話をする。

 轟にはなんとなく伝わっていた。

 四之宮は青宮を気に入っており、期待しているのだ。

 それが轟にとっては、面白くなかった。

 ベッドに入る直前にも青宮の話をされた時には、思わず舌打ちが出た。

 故に轟には、青宮への闘争心が燃えている。

 ……四之宮がわざとそういう風に仕向けていると、知らずに。


「ぜってー殺してやるよ、青宮 翼……!」

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