突然の襲撃
青宮はそこから、2日連続で第四階層へと潜り込んだ。
そしてフレイムロブスターを討伐し、ひたすら己を鍛え上げていった。
連日の狩りは22時まで続いた。
社畜体質により、夜遅くまで戦うのはもはや習慣である。
そして第三階層へ戻り、ログを確認。
レベルはついに、20へと到達した。
『――青宮 翼のLVが20へ上がりましたHP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
∞ウェポン
HP+230→290
MP+120→140
攻撃+180→200
防御+120→140
魔力+120→180
精神力+120→140
俊敏120→140
∞ウェポンの成長も地道に積み上がってきている。
さらに新たなスキルも獲得して、“炎魔法LV5”を習得した。
すでに魔力が高いからか、いきなりLV5での獲得となったようだ。
試し撃ちをしてみたら、3メートルほどの青い炎の槍を放つ“フレイムランス”という攻撃魔法であった。
第四階層の敵は炎属性に耐性があるため、あまりダメージはないが、第三階層のスケルトンを一撃で撃破するほどの威力がある。
これでようやく、遠距離攻撃の手段を得ることができたというわけだ。
そして今まで伸びが良かったのに、死にステータスとなっていた魔力に意味が生まれた。
さらには斧術LVも5となり、より精密な斧の操作を可能とし、パワーも上がった。
(だけどギルドマスター基準で見れば、俺はまだ弱いからな。もっと強くならないと)
実力主義のこの世界は、足元をすくわれる。
そうならないために、少しでも早く、LVのアップを狙う。
☆
そうして特訓期間を経て――ギルドマスター会議の当日。
乾と白井のカップルは仲睦まじい様子で、いつも通り朝一緒にギルドまでの道を歩いていた。
しかし……駅を出た辺りから、2人は気配を感じていた。
人々の行き交う中――4人。
1人は、髪の赤いガラの悪そうな若い男。
1人は、へそだしスタイルの服を着た、ヘソピアスの光るギャルであった。
そしてその2人の後を追うように、カメラを持った男が2人いる。
目立つ。あまりにも目立つ4人組だ。
「……雄太、なにあれ?」
「カメラマンがいるからね……おそらく、ギルド同士の小競り合いとして、拡散する気なんだ」
「ど、どういうこと?」
「アーツファイトの経緯を作るんだよ。実際、試合の宣伝のために、そういう動画が協会から投稿されている。街中で仲の悪いギルド同士が、ケンカをするんだ」
「でも、私達にそんなことするつもりは……」
「向こうからしかけられたら、自衛をせざるをえないよ。青宮くんの言葉が、こんなにも早く的中するなんて……凜、カメラを起動していて。いざという時は僕が時間を稼ぐ」
「う、うん。無理しないでね」
朝。通学・通勤ラッシュの時間帯。駅の近くというだけあって、人がそれなりにいるのだが――動きは、突如として起きた。
「――なぁ、そこのバカップル! あーしらと一緒に遊ぼうよ!」
ギャルと思われる言葉と共に、しゅるるるるっ! と、黒いムチが乾めがけて飛ぶ。
乾は振り返り、アイテムボックスから盾を取り出した。
(ムチ!? これは武器なのか?)
盾でムチを受け止めると、ムチはヘビのようにしゅるしゅると盾に巻きついた。
ムチを持ったギャルが、ぎゃははは、と笑い声を上げる。
「お前、バカっしょ。それともウィップはマイナーだから、知らねーのか? こいつは捕まったら終わりなわけ。ガードは悪手だっての」
「っ、があああああっ!?」
ビリビリビリっ!!! と、ムチから電撃が流れる。
「っ、雄太!」
白井が弓を取り出し、魔力の矢でムチを撃つ。
ギャルはムチを引いた。
そして辺りは騒ぎとなる。
通行人の顔が青ざめた。
「うわああっ!?」
「な、なんだ!?」
「冒険者が暴れてるぞ!」
「逃げろ、逃げろ!」
逃げ惑う人々。
そんな中で、乾は立ち上がった。
乾へ目がけて、男が襲いかかる。
男はアイテムボックスから、2メートルには届きそうな太い大剣を取り出した。
「ひゃはははは! おらおら、男ぉ! 気合見せろやぁ!!!」
がああああんっ!!! と、乾は大剣を盾で受け止める。
しかし片腕では無理なパワーであった。
片手剣は取り出さず、両腕で男とせめぎ合う。
ぎぎぎぎぎ、と腕がきしむかのようであった。
「くっ、ううっ……!」
「ザコがよぉ。俺は少しも本気だしてねーぞ?」
男は大剣を振りぬく。
乾は地面を転げ回った。
白井が下がりながら、男へ目がけて弓を引く。
しかしすかさずその左手は、素早く振るわれたムチに巻かれた。
バリバリバリ! とスタンガンを突き付けられたような鋭い痛みが、全身を襲う。
「っ、いやああああっ!?」
白井の絶叫が辺りに響き渡る。
過剰な攻撃をするつもりはないのか、ギャルはムチを引いた。
しかしそれでもダメージは深刻で、白井は膝をつく。
かろうじて乾が立ち上がるも、戦力差は明らかであった。
「おい、こいつらよえーぞ」
大剣を持った男が言うと、ギャルは肩をすくめた。
「ま、レベル20代でイキっているやつらだし。こんなもんっしょ」
「20!? ひゃはははは、ザコがよぉ。せいぜい第三階層が限界か? 話にならねーぜ」
「こいつらはね。ただ、こいつらのリーダーがヤバい」
「本当かよ? この調子じゃ、俺でも殺せるザコだと思うぜ?」
ギャルが辺りを見渡す。
人々に逃げられて人気はなくなったが、通報した者は確実にいるだろう。
「アース、逃げるよ。サツが来るのはダルい」
「あぁ? へっ、もう終わりかよ。つまんね~」
2人とカメラマン達が、その場を去ろうとする。
しかしその進路には――1人の青年が、佇んでいた。
「逃がすと思うか? DQNども」
「っ!?」
ギャルは威圧的な雰囲気を感じて、息を飲んだ。
全身に鳥肌が立つ。
目の前に立ち塞がる青年は――ギルドマスター、青宮 翼だったからだ。
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