第四階層、スピード攻略を目指す
18時にノルマは達成された。
さて、定時退社……といきたいところだが、青宮は第四階層へと1人向かった。ツインセイバーゴーレムの撃破により、第三階層はクリアしたことになる。
アーツファイトを好むギルドマスターからの挑発。
実力主義の探索者業界。
この終わった世界で生き残るため、少しでも強くなる必要があると考えた。
「さて、と……うおっ」
ワープポイントを使い、移動する。
到着した第四階層は――赤かった。
赤みがかった平原が果てしなく広がり、空の色も夕焼けのように赤い。
視界の奥には大きく盛り上がった丘があり、枯れた灰色の木々がまばらに生えている。
肌をピリピリと焼くような、独特の熱さがあった。
「炎属性のモンスターが多く出てくる第四階層、か」
さらに、このダンジョンの特徴は熱さだけではない。
ステータス画面を開くと、右下にはカウントダウンが始まっていた。60分をスタートして、どんどん数字が減っている。
「たった1時間のタイムリミットで、強い”魔力負荷”がかかる……か」
第四階層の空気、魔力には毒素が含まれており、一定時間吸い込み続けると、強いスリップダメージが入るようになるのだ。
つまりこの階層は、スピード攻略が命となる。
その代わりに中間チェックポイントとなる、ワープポイントが多いものの……スリップダメージはかなり強力なものならしく、1時間以上潜り続けることは危険だ。
∞ウェポンを片手に、青宮は駆けた。
「だいぶステータスも上がって来たからな。ちょうどいい、どんどん先にいかせてもらうぞ」
☆
平原を駆ける。
やがてカチャカチャ、という足音を立てる生き物遭遇した。
「ゴポポポポ」
空気がくぐもったような鳴き声。
赤黒いボディの、巨大なカニ――ブレイズクラブであった。
全長は2メートルほどで、左右から伸びるハサミが体よりも大きい。
8本の足を器用に動かしながら、こちらへ接近してきた。
見かけによらず、かなり早い。
赤い砂埃を立てながら、走る青宮へ一気に詰め寄る。
その鋭いハサミを開き、青宮を捉えようとする。
だが――閉じたハサミは、虚しく空を切った。
「ゴポポ……?」
ブレイズクラブは戸惑い、はっとした。
青宮はすでに――次の行動へと、移っている。
「――ベルセルク、起動。悪いな、もうお前レベルじゃ苦戦しないんだ。流し作業にさせてもらうぞ」
すれ違いざまであった。
ブレイズクラブの胴体へ、斬撃を刻む。
赤い砂が、衝撃で舞う。
青い炎に包まれた青宮が、背後に立った。
目にも止まらぬ速さ。
俊敏に差のあるブレイズクラブは、なにが起きたのかさえわからなかった。
そして――どさ、とブレイズクラブは倒れた。
レベルアップによるステータス上昇、∞ウェポンの成長、ベルセルクのレベル上昇。
度重なる強化により、両者の間にはあっとうてきな実力差があった。
「よし、次だ。まだいけるよな」
時刻は20時。
∞ウェポンはもう慣れたと返事をするかのように、ダークブルーの宝石をピカピカと光らせた。
……そうしてブレイズクラブを倒しつつ、時間がヤバくなったらダンジョンを一度出て、カウントダウンをリセット。
そうして進むこと、さらに2時間。22時。
あっという間に40体を討伐したところで、青宮はこの日の狩りを切り上げたのであった。




