久々の現場
面接が終わった午後。
青宮は、久々の現場へと足を踏み入れた。
第三階層――スケルトンランサー。
魔石300個が今日のノルマだ。
樹、乾、白井の三人と共に狩りを始めた瞬間、青宮の中で何かが弾けた。
「ふはははははッ! 現場最高ぉぉぉぉ! デスクワークとは、おさらばだぁぁぁぁっ!」
ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!
斧が振り下ろされるたび、骨の兵士が紙くずのように砕け散る。
湧いてくる敵を、青宮は笑いながら片っ端から葬っていった。
「青宮くん、ペースはやっ……」
「今までの僕達の頑張りとは……」
「あわわ、マスター、目が怖い……」
樹、乾、白井は改めて青宮の力を実感していた。
――そして、ハイペースのまま狩り続け、時刻は15時。
モンスター部屋を出て、四人は石壁に背を預けて休憩を取った。
水を飲んでいると、樹がそっと隣に座る。
「……青宮くん。姫咲さんとは、どういう知り合いなの?」
「え?」
やましいことなど何もないのに、青宮は思わず肩を跳ねさせた。
「受付でよく会う……ただそれだけだが」
「ふ~ん。……別にいいけど」
じと~~~~っとした視線。
青宮は、なぜか怖いと思ってしまった。
「……この後も、忙しくなりそうなの?」
樹は話題を変えたが、声のトーンはどこか沈んでいた。
「あ、ああ。4日後、ギルドマスターが集まる会議があるらしい」
「大丈夫かな……」
「なんだよ、その“大丈夫かな”って」
「青宮くん、“アーツファイト”って知ってる?」
「好きじゃないけど、知っているよ」
アーツファイト――探索者協会が3年前に始めた異能格闘スポーツ。
過激な演出、煽り、ケンカ。
動画で見たが、青宮はあの空気が嫌いだった。
「アーツファイトがどうした?」
その単語に反応して、乾と白井も近づいてきた。
乾が正面に座り、真剣な顔で言う。
「SNSで闘争者……轟 悪魔が、青宮くんを挑発してるんだよ」
「まあ、よくあるよな」
ため息がもれる。
こういった形でケンカを売り、トラブルへ発展して、試合が組まれる。
それがアーツファイトの常套手段だ。
「闘争者は常連だよ。動画じゃ会議中に殴りかかったりしてるし……血の気が多すぎる。だから僕たち、青宮くんが心配で」
「見たことはある。ああいう動画はな」
アーツファイトのコメント欄は、いつも荒れている。
『こんなやつらが日本のインフラ支えてるのか』
『強力な異能持ちが好戦的とか終わってる』
『協会は教育しろよ』
『売上50億だから、金儲けコンテンツだろ』
『頭の悪いDQNの集まり、それが探索者』
アーツファイトが始まってから、探索者のイメージは確実に悪化していた。
「闘争者に絡まれる可能性は考えてた。調べてもある。……売られたケンカは、買うしかないだろ」
三人が顔を見合わせる。
樹が、青宮に身を乗り出した。
「だ、ダメだよ。青宮くん、戦うつもりなの?」
「その時になったらな」
「危ないよ! だめっ!」
「協会は闘争者を罰しないどころか、試合を組んでる。むしろトラブルを望んでる節すらある」
「そ、それは……」
「それに、審判もヒーラーもいるアーツファイトは、ダンジョンより安全だ」
「それでも……!」
樹は、青宮の左手をぎゅっと両手で包んだ。
温かい。
その温度に、青宮の心臓が高鳴る。
「また……無茶をさせたくないよ……」
その声は震えていた。
白井が優しく続ける。
「マスター。私たちに出来ることがあったら、すぐ言ってね」
「あ、ああ。ありがとう。……樹も、心配かけて悪い」
樹は悲しそうに目を伏せた。
(……私がもっと強ければ。青宮くんを、守れるのに)




