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引き継ぎ? そんなものはない。

 昇格クエスト達成により、青宮は正式に“スマイル・アドベンチャー”のギルドマスターとなった。

 ケガを負った乾、白井、青宮だが後遺症もなく、無事に即日復帰だ。

 関 京也はギルドメンバーへ降格となったのだが……引き継ぎなどを一切しないまま、姿をくらました。

 携帯へ鬼電したところへ、事務所へ電話がかかる。

 ギルドマスターの席に座りながら、その電話をとった。


「おはようございます。株式会社モーダメです。関 京也さんの退職の旨を伝えるため、お電話させていただきました」


(逃げやがったな、あいつ)


 最後の最後で、嫌がらせをしてやろうと思い、逃げたのだろう。

 樹達はダンジョンへ出てしまったので、事務所には青宮1人。

 上座の黒い革の椅子座りながら、はあ、とため息をついた。

 そもそも彼は、青宮達を殺そうとした男だ。

 樹達はクエスト達成の証拠確保のため、ドローンを飛ばしていた。

 その映像に関の殺人未遂行為がバッチリ映っている。


(まあ、正式に刑罰を受けてもらうとするか)


 関の件の対応は、警察と協会に委任するべきだろう。


「それにしても。ムダな書類と業務が多すぎる。誰も見直してないのか?」


 クエストの内容確認。今後のスケジュール。予算。手続き。報告書……などなど。

 会長“四之宮 京子”の広報活動についての確認サイン・感想の記入という書類を見た時には、破いて捨ててやろうかと思った。


「こういうことやっているから、仕事が終わらないんだろ……」


 典型的なブラック企業体質で、初日から嫌気がさした。

 引き継ぎがナシなのも悪質で、放っておいている締め切りの書類などの対応も迫られている。

 そして忙しくなった青宮は、現場へ出られないというわけだ。

 しかも落ち着く見込みが立たない。


「これは、人を雇ったほうが良さそうだな」


 求人の段取りをとるため、青宮は協会の支部へと向かった。





 受付にて、事務員のほんわかお姉さんに、求人についての相談をした。

 するとお姉さんは少し考えこんだ様子で黙り込む。


「どうしたんですか?」


「え? あ、い、いえ。あの。これって、書類や事務作業の代行をする人材がほしい、ということですよね?」


「そうですね。ムダなことばっかり、協会は要求してくるので」


 はっきりとした物言い。

 だが、ほんわかお姉さんは真剣な表情を浮かべたままだ。


(どんな人が来るのか、ってとこだよな)


 ブラック企業時代。人事部でもないのに、面接だのと新たな人材雇用への対応をしたことがある。

 人を見る目は培ったつもりだが、100%を見抜くのは難しい。

 これも面倒だなと、正直思っている。

 青宮はとにかく、現場へ出たいのだ。

 信頼の出来る人間がすぐに来れば、とても助かるのが現状である。


「青宮さん」


「はい」


 ほんわかお姉さんは、きりっとした眼差しのまま、青宮の方へ顔を向けた。


「このお仕事、私が引き受けてもいいですか?」

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