青宮 翼 VS 関 京也
音有 互角です。52話「2人の美女からお守りを貰う」にて、「クエスト達成記録のためのドローンも飛ばしておく」というセリフを乾に追加しました。
54話にて、関が「記録用ドローンも戦闘で壊れたで通るだろ」と発言しているのは、乾達がドローンを飛ばしていたからです。
今後とも、本作をよろしくお願いします。
青い炎をまとった斧と、雷をまとった槍がぶつかり合う。
重々しい金属音と共に、2つの魔力が接触することによる破砕音も響く。
「ちっ、バカみてぇな力だ!」
腕をしびらせながら、関が下がった。
斧の一撃一撃が重々しいのだ。
青宮が肩で息をしながら斧を構える。
関はふん、と鼻を鳴らした。
「さすがの君も、体がまだ痛いんだねぇ。さっきの戦闘よりも、明らかに動きが悪い」
「だったらなんだ?」
関に貫かれた胸や、体中がまだ痛む。
リザレクト・ポーションと樹の回復魔法で幾分か回復したが、まだ万全の状態ではなかった。
「青宮くん! やっぱり私が戦った方が」
乾を回復魔法で手当てをしている樹が叫ぶ。
青宮は首を横に振った。
「大丈夫だ。乾の手当に集中していてくれ」
「っ!」
樹が唇をかむ。なにも出来ない自分が悔しいのだ。
先ほどの乾達の戦闘を見て、ついていけないのはわかっていた。
白井も後ろでポーションを使い、回復する。
彼女の攻撃もほとんど、関に通用していなかった。
戦いは青宮に委ねるしかない。
(私はいつも、青宮くんの役に立てない……!)
「気をつけて……! ケガもしないで!」
樹の声に、ひひひ、と関が笑みを浮かべる。
「青宮くぅん、頼もしいねぇ」
「上司は頼もしくないけどな」
青宮は関へ向けて駆ける。
関は青宮から逃げるようにして、槍で斧をさばき、ひたすら守りを固めていた。
がきんっ! がきんっ! と何度か攻防を繰り広げられた果てに、関は大きく後ろへ飛んで下がる。
押せている。だが、体の痛みが彼の動きを鈍らせている。トドメに繋がらない。
「……協会のデータだと“雷帝”は全ステータス30%上昇バフだとあった。だけどこの感じ、そんなに強くなってないだろ。逃げてばかりだ」
「そらそうだろ。お前と違って若くねーし、現場も出てねーんだ。10%しか上がんねー見かけ倒しになった。年はとりたかねーな」
「無能上司がよ」
「まあけど、“あれ”は使えるけどな」
「っ!?」
バチバチバチっ!!! と激しく弾ける音と共に、槍の先端に雷が集まる。
これまで下がり、守りに徹していた関――だが、それが一変してこちらへ向けて突っ込んでくる。
「“雷帝”時に発動できるスキル――サンダーランスか!」
「よく知っているねぇ。こいつをどうにか出来るかなぁ、青宮くぅん」
まだ武器のリーチ外。
約5メートル。しかしそれで十分であった。
勢いよく前へ槍を突き出した瞬間、まばゆい光と共に雷が放たれる。
すさまじいスピードだ。青宮は∞ウェポンを前へかざしガードするも、全身に電撃が走る。
「ぐ、がぁ!」
「こいつをくらえばしばらく麻痺状態だ。ダメージに疲労、麻痺……さすがのスピード自慢のお前も、これで大人しくなるだろ」
優位に立ったと考えた関は、間合いを詰めて槍を突き出す。
経験のある槍筋は鋭く、速く、無駄のない動きであった。
青宮は槍筋に斧刃を当てて、攻撃を防御する。
防戦一方。
一見すると関が優位。
だが、彼には――違和感があった。
槍が少しも命中する気配がない。
ガードする斧を、突破出来る気が少しもしない。
武術のはるか上を行く――熟練の相手をしているかのよう。
「この程度のしびれで抑えられると思ったか?」
「っ!?」
青宮が鋭く、∞ウェポンを上へ振り上げる。
ばちんっ! と関の槍が上へ弾かれた。
手は離さなかったが――そこに大きな隙が生まれる。
「てめぇ……!」
「少しは現場の痛みを――知りやがれ!」
「ぐぼぉ!?」
重い斧の一撃が、関の胸を斬った。
開かれた部分から大量の血が流れ、関はその場にひざまずく。
「なんて威力だ……! ぐ、がぁぁぁぁ」
関の首筋へ斧を当てる。
彼は恐る恐る――見上げた。
そこには冷徹な表情で見下ろす、青宮の顔がある。
だが、関は……にやりと笑った。
「ギルドマスターは楽だぜぇ。適当に書類書いて、下に仕事振るだけで、金が貰える」
「そうか。残念だったな、今日限りで解任だ」
「……妙な奴だぜ。気づいてんだろ」
「最後に説得か?」
「ちげーよ、この業界のことだ。夢も欠片もねぇ。あんのはクソな実態だけ。それなのに、なにをそんな必死になる? その優秀さを、なぜこんなとこで使う? 大人しくホワイト企業にでも就職した方が幸せだぜ」
「……」
思い返す。
鑑定して、ユニークスキルで才能があるかもと言われ、嬉しかったこと。
ブラック企業を抜け出して、充実した毎日を送りたいこと。
自分はなにか、特別な人間になれるかもと……そんな夢を抱いたこと。
しかしそんな甘い現実は、なかった。
ファンタジーな冒険者業界は、ブラック体質。
しかもどうもワケありだ。
だけど全てがクソなわけじゃない。
樹と出会えたこと。
振られた元彼女を見返してやったこと。
受付のほんわかお姉さんが可愛いこと。
∞ウェポンと共に強くなれたこと。
ソロ撃破などの成果を残せたこと。
「転職も魅力的だが。まあ、まずは3年ってとこじゃないか? それに、良いこともたくさんあったからな」
「はっ。そりゃよかったな」
関は槍を手放し、両手を上げた。
「降参だ……それとも、俺を殺すか」
「そんなもったいないことするかよ。命令がある」
「……なんだ。ギルドマスター」
「ギルドマスター降格の原因解明及び是正案、反省文を書け」
「しつけーな。いいだろ、んなもん。どうせ読まねーだろ」
「社訓を忘れたか?」
「……クソが。マジかよ」
関は顔を引きつらせつつ、言った。
「はい、できます!」
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