先輩達に頭を下げられる
「「「「「……」」」」」
降りる沈黙。
青宮は説明を続けた。
「冒険者業界は“実力主義”。ギルドマスターは原則、そのギルド内のナンバー1が立つべき、という考えです。ギルドメンバーからの過半数の同意を得られれば、俺が昇格クエストを受けられます。なので……投票の方をお願いしたいんです」
ここからは説得になるか、と青宮は予測。
失敗した場合のリスクがある。
昇格クエストが発生するということは、メンバーが同意したということだ。
関の機嫌が大きく損なうことは間違いない。
彼に飼いならされた彼らが、青宮に託すかどうか。
そう思ったが……。
「――ぜひ、よろしく頼むよ!」
パーティーリーダーがそう言うと、あとの4人も頭を下げてきた。青宮は「え?」と声を上げる。
「あんなクソ上司、とっととクビにさせちゃえ! はははは、そうなったら最高だ! どうせ仕事はなにもしてないだろうし!」
「いや、降格してもメンバーとして残りますよ……?」
「くくく、それならそれで仕返しし放題だろ? 君の噂は聞いてる。こんな化け物みたいに強い新人が関より下なわけない! 勝ったな、がはは!」
残りの4人も「やっちゃえ、やっちゃえ!」「賛成だ~!」「革命だ~!」「地獄の日々から抜け出せる!」といった感じで、はしゃいでいる。
「じゃあ、よろしく頼んだよ! 青宮くん!」
パーティーリーダーが再び頭を下げ、先輩たちは上機嫌な様子でテレポートポイントへ向かう。
(結果オーライ……だけど俺の調べでは、ギリギリの戦いになると思うんだが。まあ、いいか)
樹がふふふ、と笑みを浮かべた。
「良かったね、青宮くん」
「ああ。受付に行って、申請をする。みんなも、アプリで通知が来るはずだから、同意を押してくれ」
青宮の言葉に、3人が頷いた。
☆
協会支部へ戻る。受付の若い男性へギルド昇格申請を申し込み、渡された書類などを書いて提出する。
いつもの夜勤で会う、男の職員であった。
「たった3日で“スマイル・アドベンチャー”のリーダーを狙うとは……あなたはいつも、行動が早いですね」
「どうも」
「……ここだけの話ですが。関 京也の評判は悪いです。職員への態度がひどく、現場にも1年以上出ていない。名ばかりのギルドリーダーですよ。期待の新星であるあなたなら、きっと上手くいきます」
「ありがとうございます」
申請が受理される。あとはアプリの通知に、メンバーが同意するだけだ。
スピード感をもってやりたいので、青宮はメッセージをみんなに送り、出来れば今日中に同意してほしいことを伝えた。
自動ドアを潜り、支部を出る。
星空を見上げ、ふう、と息を吐いた。
「さて、こっからだ。まあ、多分……”クソノルマ”が来るんだけどな」
青宮のその予感は、当たることになる。
ブラック企業におけるノルマとは――達成のできない目標設定にするのが、定番なのだから。




