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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第二章「そのギルド、ブラックである」
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ありがとう……優秀なんだね……。

 第三階層へ降り立ち、青宮は端末を操作してフロア専用のチャットチャンネルを開いた。

 作られていない可能性もあったが、幸い“スマイル・アドベンチャー”の名前が表示されている。


(よかった……これで合流できる)


 メッセージを送り、五人の先輩達と合流した。

 全員、目が完全に死んでいた。

 堅い石床に座り込む者、石壁に背を預けて動かない者。

 その光景は、前の会社で見慣れた終電間際の社員達と似ていた。


「本当に……自分達のノルマを達成したのか?」


 パーティーリーダーの若い男が、信じられないという顔で問いかける。

 青宮は静かにうなずいた。


「手伝わせてください」


「それは構わないが……」


「魔石300ですよね。今、いくつですか」


「……160だ」


 時刻はもう18時。

 タイムリミットは最大6時間。

 1時間で30個。かなり厳しい数字だ。

 手伝いにこなければ、達成は不可能だっただろう。


「俺と樹で八十個獲ってきます。先輩達は六十個をお願いします」


 残業続きで疲れ切っている彼らに、生産性は期待できない。

 だからこそ、青宮と樹が動くしかなかった。


「行こう、樹」


「うん!」


 短い言葉を交わし、二人は駆け出した。

 第三階層の冷たい空気を切り裂きながら、先輩達の姿が遠ざかっていく。

 しばらく進むと、フレイムバッド四体が現れた。


「四体か……」


「炎の攻撃に気をつけないとね」


「そうだな」


 青宮が∞ウェポンを握った瞬間、空気がわずかに震えた。

 そのまま前へ飛び出し、群れの中心へ突っ込む。

 牙を向けてきた一体を、一閃。

 返す動きで横へなぎ払い、二体目も即座に沈む。

 ばたり、と二体のフレイムバッドが地面に落ちた。

 残り二体が炎を吐こうとしたが、樹の雷が一体を痺れさせ、召喚されたヴァルキリアがもう一体を押さえ込む。


「助かる!」


 雷で怯んだ個体を斧で斬り伏せ、最後の一体はヴァルキリアが仕留めた。


「さて。すぐに次へ行かないとな」


「……」


「どうした?」


「え? な、なんでもないよ。はりきっていこーっ! 目標80!」


「? あ、ああ」


 樹は笑って誤魔化したが、青宮にはその一瞬の沈黙が気になった。

 樹の胸中には、複雑な感情が渦巻いていた。

 ステータス。戦闘の動き。

 目の前で見せつけられると、どうしても差を感じてしまう。


(……このままじゃ、青宮くんの隣にふさわしい人になれない)


 そんな思いを抱えながら、樹は青宮の背中を追った。



 21時を過ぎた頃、ようやく先輩達と合流し、300個のノルマを達成した。

 最初は信じられないという顔をしていたリーダーの男も、魔石を渡すと表情が一変した。


「ありがとう……優秀なんだね……今日は、帰れそうだ」


「そ、そうですか」


 5人は“帰れる”と分かった瞬間、ここ一番のキビキビした動きでワープポイントへ向かっていった。

 その背中を見送りながら、青宮はため息をつく。


「これは、まだギルドリーダー昇格の話どころじゃなさそうだな」


「ね。声は死んでたけど、急に動きが元気になった」


「早く帰りたかったんだろうな」


 青宮は腕を組み、考え込む。


「社畜だから、現状打破まで思考が回らない気持ちはわかるが……先送りにすればするほど、戦いは不利になる」


「そうなの?」


「ノルマをクリアし続ければ、ノルマは上がり続ける。そうなったら、俺も元通りになって……ギルドリーダーになろうという気力が奪われるかもしれない」


「私は、そんな青宮くん想像つかないけどね。いつもギラギラしてるよ」


「そうか? まあ、今日は俺達も帰るとするか」


「……うん。じゃあ約束、守ってもらおうかな?」


「約束? ああ、次おごるって言ったやつか?」


「そうそう。覚えててくれたんだね~」


「まあな」


 樹は一歩近づき、にこっと笑った。


「デートだよ、デート。えへへ、いこっ」


「お、おう」


 明るい笑顔に、青宮は思わず胸を高鳴らせた。

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