ヘヴィゴーレム、周回
「――サンダーボルトっっっ!!!」
樹が荒れた様子で声を上げ、雷魔法をヘヴィゴーレムへ放つ。青い光による、稲妻の一撃はその硬いボディを焼き、トドメの一撃となった。
コツも幾分かつかめてきて、出来るだけ同じ足・同じ個所を攻撃しまくれば、部位破壊が早くなる。片足が壊れれば、あとは楽だ。サンドバックと化したヘヴィゴーレムをボカスカ攻撃するだけである。
乾、白井との3人パーティーによるヘヴィゴーレム狩り。
おおよその平均タイムは30分といったところであった。
しかし単調な戦闘による疲弊は大きい。
10体目を狩ったところで休みを入れたようと、乾は提案した。時刻はもう15時。青宮がいない状態とはいえ、まだ半分もクリアしていない。残り20体目を、今日中。このノルマがいかに無茶なのかを、樹達は改めて実感した。
(私が1人で、はしゃいでいただけだったんだ……)
木陰で座り、休みながら、樹は1人悩む。
青宮とギルドが一緒になって、嬉しかったのだ。
協会の発表から、ずっとテンションが上がっていた。
だけど……実際は、青宮自らの判断によって別々にさせられてしまった。
「――青宮さんのことで、落ち込んでいる?」
白井が隣に座って、そんなことを聞いてくる。
お昼に休憩をした時、白井と乾が付き合っていることを聞いた。
将来的には結婚も考えていると、はっきり口に出せるほどの間柄。
つい、2人が羨ましいと。樹はそう考えてしまった。
「……うん。いっつも、距離を置かれちゃって」
「そうなの? あんまりそういう風には見えないから、きっと大丈夫だよ」
「そうかな……」
落ち込む樹を、白井がはげましていた。
話をしていく内に、樹はまだ約束を果たしていないことを思い出す。
あの後、色々あったのであやふやになったが。青宮は樹におごったまま、その借りを返していないのである。
「青宮さんのこと、好きなの?」
「えっ」
思いのほかストレートに問われて、樹は顔を赤くした。そして体操座りになり、足を両腕抱いて、顔を半分隠す。
吹きつけてきた穏やかな風が、ひんやりと頬に冷たく感じた。
「そ、そういうのじゃ、ない……」
か細い声は、ものすごく震えていたのであった。
☆
「これで、11体目だ!」
同時刻。青宮は叫びながら、∞ウェポンを振り下ろして、ヘヴィゴーレムを撃破した。
同じ敵を延々と、それも遅延行為バリバリのボス相手と戦いまくるのは精神的に苦行だ。
しかしその負の感情を発散するように、イライラを乗せて体を動かすと、案外楽しくなることを過去の経験から知っていた。
(シール貼り地獄の時も、そうやって色々考えながら乗り越えた。そもそもこれくらいの単純作業、まだぬるいもんだ)
持ち前の社畜魂により、試練を軽々と越えていく。
ヘヴィゴーレムの頑丈な体が消え、一個5500円の魔石が現れる。
それを回収しながら、パーティーでは定番の冒険用の小型端末を取り出す。スマートフォンのような見た目で、インターネットの繋がらない異空間におけるダンジョン内で、連絡をとりあったりできる優れものだ。
青宮は11個目の魔石回収をチャットで報告し、ふうと一息つく。
「さすがに休むか」
軽食をとる昼休憩はとったが、それ以外はぶっ通しだ。
木を背にして座り、ボスフロアである大きなくぼみを眺めた。数分すると再びヘヴィゴーレムがリスポーンする。
「……樹、なんか怒っていたような気がするんだが」
あんまり怒らせたり、不機嫌させたりすることはなかったので、戸惑っていた。
考えても原因はわからない。
(くそ……なんか、気になってしまうな。なんでなんだ)
油断すると、樹のことを考えてしまう。
「あれだ。声ぐらいはかけておくか」
そんなことを考えつつ、少しぼーっとしたあと……短い休憩を終えて、斜面を降りる。
ヘヴィゴーレムが、戦闘態勢をとった。
「定時に間に合わせてやる」
青宮が気合十分に斧を構えると、∞ウェポンもそれに答えるように、ダークブルーの宝石をチカチカと光らせたのであった。




