……一緒に来てくれないんだ
「もう~! なんなの、このギルドは!?」
外へ出るなり、樹がプンスカ声を上げる。
3人は歩きながらも、その雰囲気は戸惑いばかりであった。
事前情報でギルドがキツいということはつかんでいただろうが、まさかこんなにもブラック体質であったとは、思わなかっただろう。
冒険者という特殊な仕事なのに、世にあるブラック企業と似た流れである。誰しも好き好んでああいったところに入るわけではないし、ああいった企業や社畜が無くならないのにも、きちんと原因と理由がある。
(じゃあ、この業界の原因はなんだという話だな……)
人手不足という話は聞いたことがあるが、そこまで深刻なものなのか。
これでは冒険というよりは、社畜による労働になってしまう。
「すっごく感じ悪い、あの人っ!」
なおも怒った様子で、樹がぷく~と頬をふくらます。
白井は肩を落とした様子で「すごく怖かった……」と言って、乾が軽くその頭をぽんぽん撫でていた。やっぱり付き合っているのか、と青宮はその距離感を見て思った。
「青宮、クエストを受けてしまったけど……本当にやるのかい?」
乾が問いかけてくる。それに関しては勝算があるので、あまり問題視していない。
「ヘヴィゴーレムの狩りは、俺はソロで30分ペースだ。俺1人と、乾達3人で分断してやれば、7時間くらいで終わると思うぞ」
乾が驚きの表情を浮かべる。白井はえっ、と声を上げる。
「アレをソロで30分……本当?」
「まあ、うん」
「わたしと京也、あと3人の5人パーティーでやっと、30分だったよ……?」
するとなぜか、樹が得意げな表情になった。
「ふふふ、青宮くんはすごいからね~……って、あれ? 3人?」
「ああ。俺は1人で足りるだろ。それに、召喚スキルで実質2人分の火力になるだろう樹がいれば、乾達の負担はそこまで大きくならないはずだ」
瞬間、樹の表情をみるみる内に機嫌の悪そうなものとなっていった。
「……一緒に来てくれないんだ」
震えている小さな声で、つぶやく。寂しげな声音であった。
しかしその声は聞こえず。けれど落ち込んでいるようには見えたので、青宮は首を傾げた。
「ダメか?」
「べつに。いいんじゃないの? 効率いいもんねっ」
樹がぷいっ、とそっぽを向く。あれなんで、と青宮は少し慌てた。
「ところで……ギルドマスターになるという宣言は、本気かい?」
乾の問いかけに、青宮は樹の様子を気にしつつ、うなずく。
「あ、ああ。ギルドについて調べていく内に、なってやろうと思ってな。あんな無能が上にいるんじゃ、なにも良くはならないだろ?」
「それはそうだけど……出来るのかい? ギルドマスターよりも実績を残さないといけない」
「ああ、出来る。関 京也についても調べてある……少し無茶な道ではあるけど、不可能ではない」
あくまでも強気な青宮に、乾はそれ以上言わなかった。
彼は青宮がソロでセイバーゴーレムを撃破したことを知っている。たしかに彼ならば……という気持ちが湧いたのだ。
「ただ、まずはギルドマスター昇格の承認を、ギルドメンバーの過半数から賛成を得なくちゃいけない。みんなの信用を得ることが、俺のスタートだ」
乾はふっ、と微笑んだ。
「ま、僕は1票入れるよ」
「いいのか?」
「あんなのがギルドマスターなんて、嫌だよ。引きずり降ろしてくれるのに、期待している」
すると白井の方も「わ、わたしも賛成です」と言ってくれた。
どうやらあのギルドマスターの印象は、かなり悪いようだ。
ただ、樹は絶賛ご機嫌ナナメなので、なにも言ってくれない。
(あとは……あの先輩達5人か)
ギルドマスターがゴミとはいえ、入ってきたばかりの青宮を信頼して同意してくれるとは思えない。
なにか信頼されるようなことをしないといけないな、と考えた。
(さて……まずは、自分達のノルマをクリアしないとな)
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