幕章「新入冒険者をTikT〇kで躍らせるギルド」
高卒で冒険者になり、男友達二人と毎日夢中でダンジョンに潜った。
その努力が実り、ついに協会から正式契約。
今日からギルドへ加入だ。
(これって、スカウトみたいなもんだよなぁ。不安もあるけど……楽しみだ)
佐藤は胸を弾ませながら、仲間と共にギルド事務所へ向かった。
そこには、同じタイミングで加入する女の子が二人。
しかも同い年で、普通に可愛い。
(最高の配属先じゃん……!)
男三人は小声で盛り上がる。
「おい、どっちが好みだよ」
「胸デケー子」
「じゃあ俺あの背高い子」
「お前彼女いるだろ!」
「いいだろ別に!」
浮かれていた。ものすごく楽しかった。
この時までは。
☆
「――はーい、新入冒険者のみんな、はじめまして〜。ギルドマスターで〜す」
三十代前半、金髪でチャラい男が現れる。
「これからよろしくね! まだ小さなギルドだけど、みんなの若いパワーで大きくしていこう! 大丈夫、君たちなら上を目指せるさ!」
明るく前向きな挨拶。
良い上司に恵まれた――そう思った直後だ。
「さっそくだけど、これからTikT〇k撮るからね。音楽に合わせてダンス踊る動画だよ。レッスンするから、がんばっていこう!」
「……は?」
佐藤は耳を疑った。
だがギルドマスターは本気だった。
事務所に音楽を流し、ダンスを教え始める。
しかも隊列はこうだ。
前列:女の子二人
後列:男三人
中央:ギルドマスター(ノリノリ)
(なんだこれ……?)
「はい、もっと笑顔ね、笑顔! 本番は外で撮影するから! ほら、佐藤くん! もっと腕を動かして!」
「は、はい……」
(そ、外で撮影するだって!? デジタルタトゥーを刻まれて、人生詰むのでは……い、いや、大丈夫か? こんなマイナーなギルドの動画なんて、そうバズらないだろ……た、多分)
さらに女の子たちはミニスカートに着替えさせられ、露出多めの衣装に。
準備が進み、時刻は15時。
撮影場所は――事務所前の歩行者通路。
つまり、公道。ものすごく視線を集める。
「じゃあいくよー! さん、はいっ!!」
公衆の面前で、六人がキレキレのダンスを披露する地獄が始まった。
通行人は冷たい視線。
舌打ち。
ヒソヒソ話。
悪い意味で、とんでもなく目立っていた。
(死ぬ……恥ずかしすぎて死ぬ……)
間違いない。今まで生きてきた中で、1番恥ずかしい時間であった。
「お疲れー! これはバズるよ! いいねっ!」
ギルドマスターは女の子二人をベタ褒め。
女の子たちはなぜか嬉しそうであった。
「ありがとうございます〜!」
「緊張した〜!」
男仲間二人も、洗脳され始めたのか、がんばって輪に入っていく。
「楽しかったですよ!」
「二人とも超かわいかったですよ!」
なんてことを、言っている。
しかし佐藤は1人……これはヤバい、と考えていた。
というか、限界を迎えている。
(こんなギルド、もうムリ……)
☆
後日。「第三期生、新入冒険者! 通ります!」という動画が公開された。
再生数――200万超え。
コメント――1000件以上。
とんでもなく、バズっていた。
『まだこういう会社あんのか』
『デジタルタトゥー刻まれてて草』
『顔出しは地獄』
『公道でやるなよ邪魔』
『女どもキレッキレで闇深い』
『めっちゃミニスカートなのも闇深い』
『親泣くぞこれ』
当然、炎上している。
佐藤は逃げるようにして、退職代行サービスを使ったという。




